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コラム:一生ケンメイ!(3)件名と件名のつながり―言葉の地図の作り方

NDL書誌情報ニュースレター

NDL書誌情報ニュースレター2018年1号(通号44号)

【はじめに】

「件名」にまつわるトピックをご紹介するコラムの第3回です。今回は、件名と件名のつながりについて、NDLSH(国立国会図書館件名標目表)を例に紹介します。ちょっとややこしい話になりますが、この世界にはまるとなかなかおもしろいので、どうぞお付き合いください。

【「階層関係」と「関連関係」】

ひとくちに説明するのは難しいので、順を追っていきます。最初に図1をご覧ください。


図1 Web NDL Authorities 「果実酒」の詳細情報画面(一部)

図1は、Web NDL Authoritiesの、件名「果実酒」の詳細情報(の一部)です[1]。今回のテーマである「件名と件名のつながり」が表れているのは、オレンジ色の枠内。上位語、下位語、関連語という項目に、何やら「果実酒」と関係のありそうな言葉が並んでいます。これらも件名です。まずは、項目名の意味からおおまかにご説明すると、次のようになります[2]

  • (1)上位語(broader term)
    より広い意味を持つ件名。「○○は△△の一種である」または「○○は△△の一部である」といえる時、△△に当たるもの。(例:「タルト」は「洋菓子」の一種である→「洋菓子」は「タルト」の上位語)
  • (2)下位語(narrower term)
    より限定された意味を持つ件名。「××は○○の一種である」または「××は○○の一部である」といえる時、××に当たるもの。(例:「夫婦」は「家族」の一部である→「夫婦」は「家族」の下位語)
  • (3)関連語(related term)
    その件名から連想される件名。

つまるところ、「果実酒」は「酒」の一種なので、「酒」は「果実酒」の上位語です。ワインは果実酒の一種なので、「ワイン」は「果実酒」の下位語です。そして、果実酒の原料である「果実」や、果実酒を蒸留して作られる「ブランデー」は、「果実酒」の関連語となるのです。なんとも、おいしそうな並びですね。図にすると、こんな感じです(図2)。


図2 「果実酒」の上位語・下位語・関連語

このタテの関係(上位語、下位語)を「階層関係」、ヨコの関係(関連語)を「関連関係」と呼びます[3]。ただし、関連語は、連想できれば何でもよいというわけではありません。たとえば、図3のように、2回以上連想したものを直接つなげてはいけません。

ビール、麦芽、大麦と連想して、ビールと大麦を直接つなげてはいけません。
図3 2回以上の連想

また、主観的な連想もダメです。(芸術は爆発だ!=主観的な感じ方)

芸術と爆発をつなげてはいけません。
図4 主観的な連想

【ちょっとだけ、クイズです】

件名の「階層関係」と「関連関係」について、おわかりいただけましたか?それでは、ここで一つクイズです。図5の空欄には、どんな件名が入るでしょうか。


図5 「チーズ」の上位語

あれれ、チーズの上位語が二つありますね。両方思いつきますか?正解は、「乳製品」と「発酵食品」です。「ふふん、カンタンすぎるわ。」という方には、もう一つクイズです。ほかに、同じように「乳製品」と「発酵食品」の二つの上位語を持つ件名は何でしょう?正解は、ヨーグルトです(図6)。


図6 「乳製品」と「発酵食品」の二つを上位語に持つ件名

図6のように、ある件名の上位語や下位語は、1語だけとは限りません。広範な概念ほど結び付く語は多くなり、たとえば「哲学」という件名の上位語、下位語、関連語は、「人文科学」や「構造主義」など、あわせて36語にのぼります[4]

【広がる網目】

なんだか細かい話が続きましたが、実はこの「階層関係」と「関連関係」によって、とてもスケールの大きな件名の世界が作られているのです。

下の図7をご覧ください。これは、「果実酒」の上位語「酒」を中心に、階層・関連関係でつながる件名を展開したものです。


図7 「酒」とつながる件名

「酒」の上位語、下位語、関連語それぞれにまた上位語、下位語、関連語があって、それらにもまたさらに…。こうして、件名と件名のつながりは飲料のカテゴリーにとどまらず、租税や食品、農作物にまで伸びていきます。スペースの都合上、件名のつながりの全体をここに載せることはできませんが、点線の先にどのような件名があるか、考えてみるとワクワクしませんか?こうして、NDLSHに収録される約20,000件[5]もの件名は、その多くが網の目のように相互につながっているのです。

Web NDL Authoritiesの「酒」の詳細画面で「グラフィカル表示」をクリックすると、図8のようにこの網の目をたどって行くことができます。個々の件名をクリックすると、そのグラフィカル表示へと飛びます。なかなか楽しいので、よろしければ試してみてください。


図8 「酒」のグラフィカル表示

【言葉の地図を作る】

こうして、個々の件名が「階層関係」と「関連関係」によってつながっているからこそ、私たちは、いま検索している語がどのような意味を持つのか、より正確に理解することができます。それは、たとえばある建物の前に立った時、間近に見るだけでは、それが都市全体の中でどのような役割を果たしているのか知ることができないのと似ています。道路や建物の配置を示す地図を見て、都市全体の成り立ちを理解して初めて、個々の建物の意義を知ることができるように、件名も、他の件名との関係が理解できてこそ、その先の検索へとつなげていくことができます[6]。そのための、いわば言葉の地図を作る作業が、件名の関係性の構築なのです…というのは、ちょっとかっこつけすぎでしょうか。

【どこまでも続くメンテナンス】

「階層関係」と「関連関係」を検討して、個々の件名をいったん網目の中に組み込んでしまったら、それでもう安心!…とはなりません。なぜならば、日々、新しい件名は生まれますし、また、そもそも言葉は時にその意味を変えていくこともあるため、それに対応して、常に件名同士の関係は見直されなければならないからです。

件名新設や件名付与作業の際には、言葉の意味や図書の主題をしっかりと把握するために、参考図書類を頻繁に使用します。下の写真(図9)は、筆者が目録作業を行っている事務室にある、使用頻度の高い参考図書を集めた棚ですが、これはほんの一部にすぎません。さらに、これらを参照した上でもなお、情報が不足している場合は、専門室[7]まで足を運んで調べることも。このようなメンテナンスを日頃から行うことで、街が発展すれば地図も変わっていくように、言葉の地図が時代を反映したものになっていきます。


図9 たくさんの参考図書類(ほんの一部)

【おわりに】

日々変化していく件名たちをどのように関係づけているのか、大まかながら説明させていただきましたが、いかがだったでしょうか。興味を持たれた方は、ぜひ、お好きな件名を一つ選んで、「階層関係」や「関連関係」をどんどんたどっていってみてください。どこまでも広がっていく言葉の地図に、きっとワクワクすると思います[8]

大久保 玲
(おおくぼ れい 国内資料課)

[1] Web NDL Authoritiesについては、本誌2014年1号(通号28号)のコラムで詳しく紹介しています。
国立国会図書館収集・書誌調整課書誌調整係. コラム:書誌データ利活用(3) ―Web NDL Authorities(国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス).
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_8436034_po_2014_1.pdf?contentNo=1#page=12, (参照 2018-01-26).

[2] 当館における「上位語」、「下位語」、「関連語」の詳細な決定方法は、以下をご覧ください。 “普通件名「をも見よ」参照(上位語・下位語・関連語)”. 国立国会図書館件名作業指針 2017年7月. 国立国会図書館収集書誌部, 2017, (p. 48-59). http://www.ndl.go.jp/jp/data/subj_manual1707.pdf, (参照 2018-01-29).
また、NDLSHにおけるこのような仕組みは、シソーラスで一般的に使われている方式を準用したものです。
国立国会図書館. “書誌データ作成ツール:分類・件名(NDLC、NDLSHなど)”. http://www.ndl.go.jp/jp/data/catstandards/classification_subject/ndlsh.html, (参照 2018-01-25).

[3] 『図書館情報学用語辞典 第4版』で以下のように定義されています。
階層関係:シソーラスにおけるディスクリプタ間関係の一種.クラスとメンバー,全体と部分といった関係で,類種関係,全体部分関係,例示関係の三つが含まれる.(後略)
関連関係:シソーラスにおけるディスクリプタ間関係の一種.二つのディスクリプタが表す概念が,階層的でない関連性を持ち,シソーラス中でそれを表示することが索引作成者,検索者に有益な情報をもたらすと思われる場合に結ばれる関係.関連関係は,「ラバ」と「ロバ」のようにディスクリプタが同一のカテゴリーに属する場合と,「植物」と「植物学」あるいは「温度」と「温度計」のように異なるカテゴリーに属する場合の2種類に分けられる.(後略)
日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編. 図書館情報学用語辞典. 第4版, 丸善出版, 2013.

[4] 2018年1月25日時点。

[5] NDLSHのうち、細目付きのものを除いた件数(2018年2月現在)。ただし、一部の細目付き地名件名は含みます。
なお、細目については、本誌2016年1号(通号36号)のコラムで詳しく紹介しています。
境野由美子. コラム:一生ケンメイ! (1)主題細目「復興」「被災者支援」. http://www.ndl.go.jp/jp/data/bib_newsletter/2016_1/article_05.html, (参照 2018-02-20).

[6] Web NDL Authoritiesでは、詳細画面から国立国会図書館サーチを通じて、その件名が付与されている書誌データを検索することができます。ただし、検索できるのは、当館所蔵資料に限ります。

[7] 科学技術・経済情報室、人文総合情報室、地図室など、各分野・媒体ごとに特色ある資料を集めた、当館内にある資料室のこと。

[8] 当館が作成する典拠データおよびWeb NDL Authoritiesの役割の一つである「つなげる」については、以下の記事および本誌2015年1号(通号32号)のコラムで詳しく紹介しています。
木下竜馬. What's 書誌調整ふたたび 第4回 典拠は大切―Web NDL Authorities を使ってみよう!―(後編). 国立国会図書館月報. 2016.1, (657), p.14-16. http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_9578225_po_geppo1601.pdf?contentNo=1&alternativeNo=#page=16, (参照 2018-01-29).
柴田洋子. コラム:書誌データ利活用(6)―Web NDL Authorities解読講座 その1―ウェブでつながる典拠データ. http://www.ndl.go.jp/jp/data/bib_newsletter/2015_1/article_04.html, (参照 2018-01-25).


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NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)

ISSN 1882-0468/ISSN-L 1882-0468
2018年1号(通号44号) 2018年3月27日発行

編集 国立国会図書館収集書誌部
発行 国立国会図書館

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