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世界図書館・情報会議(第83回IFLA大会)とVIAF評議会会議参加報告

NDL書誌情報ニュースレター

NDL書誌情報ニュースレター2017年4号(通号43号)

【はじめに】

2017年8月19日から25日にかけて、「世界図書館・情報会議(WLIC)-第83回国際図書館連盟(IFLA)大会」が、ポーランドの都市ヴロツワフで開催されました。ヴロツワフは、ドイツとチェコの国境に近いポーランド西部に位置する都市です。2016年には、欧州文化都市に指定され、各種の文化芸術事業が開催されています。会場となった百周年記念会館は、ライプツィヒの戦いから1世紀を記念して建てられたもので、世界遺産に登録されています。国立国会図書館(NDL)からは、羽入佐和子館長を団長とする代表団7名が参加しました。筆者はその一人として、書誌分科会常任委員会に常任委員として出席し、関連する分科会やセッションにも参加しました。また、同じヴロツワフ市内で開催されたバーチャル国際典拠ファイル(VIAF)評議会会議にも出席しました。以下に概要を報告します。

IFLA会場の百周年記念会館

1. 世界図書館・情報会議(WLIC)-IFLA第83回年次大会[1]

(1) 書誌分科会常任委員会への出席

IFLAには、44の分科会があります(2017年10月現在)。各分科会の常任委員会では、WLIC期間中に2回の会議が行われます。書誌分科会では8月19日と23日に開催されました。今年は2年ごとの改選期にあたり、常任委員の半数と連絡委員が入れ替わると同時に、役員も選挙により交代しました。委員長には、現委員長のMiriam Nauri氏(スウェーデン王立図書館)が、引き続き選出されました。

・全国書誌の「コモンプラクティス」
 2009年に全国書誌に係るガイドライン[2]が刊行され、その改訂版が“Best Practice for National Bibliographic Agencies in a Digital Age”、通称「ベストプラクティス」です。書誌分科会では、ベストプラクティスをウェブサイトで公開しながら、改訂作業を継続してきました。今回、名称をコモンプラクティスへと変更することを全会一致で決定しました。その理由は、全国書誌の在り方は各国の制度や状況によって違いがあるのが当然であり、こうあるべきというベストプラクティス、つまり最良事例を決定するのではなく、なるべく多くの事例を網羅した文書を作成することが重要と判断したからです。その結果、コモンプラクティスは、IFLAが図書館や情報サービスの質向上のために策定する一連の標準類である「IFLAスタンダード」[3]とは別扱いとすることになりました。
 コモンプラクティスは2018年夏を目途に最終版をウェブサイトに掲載し、IFLAの各分科会やほかのコミュニティのレビューを経た後、正式公開する想定です[4]。最終版の完成に向け、未着手の2章(Organisation)と6章(Service delivery)を中心にアップデートを図るため、筆者も編集作業のメンバーに加わることになりました。2章は納本制度、出版者との関係(CIP等)、データのオープン化等について、6章はAPIやLinked Data等提供手段の多様化について、記述を厚くする想定です。3章、4章、5章はすでに案が完成しています。

・全国書誌登録簿の拡充
 書誌分科会のウェブサイトで公開している“National Bibliographic Register”(「全国書誌登録簿」)は、世界各国の全国書誌の現況を把握するのに便利なリストで、全国書誌作成機関から提供された情報を取りまとめたものです。現時点で登録されている情報を分析したところ、新しい目録規則RDA(Resource Description and Access)による影響や、書誌データのオープン化等の動向、APIによる提供などの技術面での新しい動きなど、各国の最新情報を十分に反映できていない項目があるだけでなく、項目自体に整理が必要な箇所が見つかりました。各国の全国書誌作成機関へ送付する質問用紙の項目を精査したうえで、あらためて各国の情報のアップデートを依頼する予定です。

(2) その他の書誌関連分科会の動向

目録分科会主題分析・アクセス分科会の常任委員会にもオブザーバとして参加しました。書誌分科会と同様に委員の交代と役員の選挙が行われました。目録分科会は現委員長のMiriam Björkhem氏(スウェーデン王立図書館)が引き続き委員長として承認され、主題分析・アクセス分科会は新たにJohn C. DeSantis氏(米国ダートマス大学図書館)が委員長に就任しました。

(3) IFLA-LRM(Library Reference Model)のお披露目

今大会の目玉の一つは、数年にわたり整理統合作業が進められ、8月18日についに承認されたIFLA-LRMに関する報告でした。IFLA-LRMは、実体-関連モデルの枠組みによる高次の概念参照モデルです。このモデルは、1998年に公開された概念モデルFRBR(書誌レコードの機能要件)と、その後に作成・公開されたFRAD(典拠データの機能要件)、FRSAD(主題典拠データの機能要件)の三つの整合性を図りながら統合されたものです。これは、Linked Dataとしての書誌データの使用が促進されるように設計されています。

このIFLA-LRMの動向については、多くの関係者が注目していたため、“IFLA Metadata Report”セッションと標準委員会オープン・セッションで完成版のお披露目がありました。
 “IFLA Metadata Report”セッションは、書誌/目録/主題分析・アクセスの三分科会が合同で開催したセッションです。この三分科会は、合同で“IFLA Metadata Newsletter”を刊行(年2回刊)するなど、近年、連携を強化する取組みを進めています。今回のセッションは、各分科会の中核となるプロジェクトの進捗を共有することを目的に開催され、IFLA-LRMのお披露目の場となりました。IFLA-LRMの検討はFRBRレビューグループを母体とし、3名の統合編集グループを中心に進められてきました。報告者からは、今後想定されることとして、IFLA-LRMのための名前空間(Namespace)の公開と、FRBRoo3.0(またはLRMoo)[5]の策定作業等があげられました。なお、英米を中心に適用が広まっているRDAでも、2018年に向けIFLA-LRMに対応する意向が表明されています[6]

IFLA-LRM等のIFLAスタンダードの承認を担っているのが、標準委員会です。今大会では、「Linked Data環境におけるIFLAスタンダードの利用」をテーマとしたオープン・セッションを開催しました。IFLA-LRMの概要紹介を皮切りに、ラトビア国立図書館とオーストラリアの公立図書館コンソーシアムの事例報告がそれぞれ行われました。ラトビア国立図書館からは、Linked Dataによるデータ提供プロジェクトが進行中であり、その中で、セマンティックウェブを志向するIFLA-LRMのデータモデルが参照されていることが紹介されました。また、オーストラリアの公立図書館コンソーシアムからは、Linked Dataによる提供サービスが利用者へのサービス向上に与える影響について分析した結果が報告されました。

(4) 各国の国立図書館等の取組み

筆者は、国際的な動向に関する情報収集のため、上記のほかにも複数のオープン・セッションに参加しました。目録分科会のセッションテーマ“Sharing is caring”に代表されるように、各発表では“share”や“ecosystem”などの語がキーワードとなっており、境界を越えた共有や連携を志向する内容が多かったように感じました。以下、いくつかご紹介します。

・書誌分科会/主題分析・アクセス分科会オープン・セッション
 “Challenging Society and Naming Identity: Subject Access and Bibliography in a Multicultural World”のテーマのもと、4本の発表がありました。北欧3か国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド)とロシアによる共同プロジェクト“Sami bibliography”は、Sami(北方の先住民族、サーミ人)にかかる資料の書誌データを共有し、一つのインタフェースから提供するもので、2017年2月に公開されています。2015年に“Indigenous Matters”分科会が図書館サービス部会に新設されたこともあり、今回の報告のように、先住民コミュニティのインクルージョン(包含政策)をテーマとした議論が、近年活発に行われています。本報告は、各国の図書館システムや作成ルールの相違を超えたデータ連携を実現する方法の事例としても、多くの聴講者の興味を集めるものでした。

・主題分析・アクセス分科会/法律図書館分科会オープン・セッション
 “Optimizing Subject Access to Legal Resources: Solidarity in Divergence”のテーマのもと、4本の発表がありました。法律に関する統制語彙をEU加盟国のすべての言語によって維持管理し、オープンデータとして提供も行っている“EuroVoc”は、VIAFのような名称典拠ではなく、普通件名典拠データの共有・再利用を考える上でも参考となる事例の一つであると思いました。

・目録分科会オープン・セッション
 “Sharing is Caring”をテーマに、5本の発表が行われました。アイスランド国立図書館からは、国内の書誌データ・典拠データの構築手法と国際的な共有について報告がありました。2001年以降、アイスランドではコンソーシアムを形成し、国レベルで目録作成・維持管理システム“Gegnir”を使用しています。報告では、“Gegnir”におけるメタデータの共有と再利用の利点が紹介されました。人口33万人という規模によるところは大きいですが、アイスランドが参加する“SVUC(スカンジナビア・バーチャル総合目録)”における無償でのデータ共有・再利用の仕組みとあわせ、一つのユースケースとして興味深いものでした。
 ポーランド国立図書館からは、既存の名称および件名の典拠ファイルの再構築と、それらのデータ提供方法の多様化について報告がありました。FRBRモデルに従い、標準化した統制語彙を使用して、これまでの標目ベースから実体ベースで構造化されたデータへ移行することで、ファセット検索機能の改良やデータの相互運用性の向上を目指したものです。
 フランス国立図書館(BnF)からは、出版者や販売業者と連携したワークフローを構築し、国際標準名称識別子ISNI(ISO 27729:2012)を付与した典拠データを作成する実験プロジェクトの紹介がありました。これは、2015年のIFLA大会で報告された、電子納本制度の構築とメタデータ作成のプロジェクトをふまえ、出版者や販売業者と築いた連携体制や調整結果をさらに活用した事例と見られます。国立図書館と国内の図書館以外のコミュニティとの関係構築を目指した、非常に興味深い事例でした。

2.VIAF評議会会議

今年のVIAF評議会会議は、同じヴロツワフ市内にあるOssolinski National Instituteで、8月18日に開催されました。会議には、議長のRicardo Santos氏(スペイン国立図書館)、OCLCから幹部と担当者の2名、そして、米国、フランス、ドイツ、スウェーデン等各国のVIAF参加機関の担当者の合計18名が出席しました。次の議長にはMarta Cichoń氏(ポーランド国立図書館)が選ばれました。

会場の小人オソリネック像

(1) 現況報告

OCLCの報告によると、VIAFに典拠データを提供する各国参加機関は、ブラジル、エストニア、アイスランド、イラク、BIBSYS(ノルウェー)、そして日本のNIIの6機関が新たに加わり、2017年現在で50以上となりました。約6,200万件の典拠データ数を収録し、それらが約3,000万件のクラスター(機械的な同定による集合)を形成しています。NDLは週次でJAPAN/MARC(A)を送付していますが、VIAFの更新頻度も週次となった結果、データ更新のタイムラグが以前より小さくなってきました。
 VIAFは日本語を含む八つの言語のインタフェースを提供しています。VIAF収録データ件数の言語別のランキングを出したところ、(1)英語、(2)ドイツ語、(3)オランダ語、(4)アフリカーンス語、(5)ノルウェー語、(6)日本語、(7)チェコ語、(8)フランス語、(9)スペイン語、(10)クロアチア語の順で、日本語が6番目とのことでした。
 OCLCの技術担当者からは、典拠データのクラスター実態調査によって、重複が疑われる典拠データをリスト化し、各データ作成機関に提示したいと報告がありました。また、今後のプロジェクトの一環として、VIAFとWikidataとの連携方法の検討を進めたいとの提案があり、参加者からは異議は出ませんでした。

(2) 今後の展開等

昨年から引き続き、各国立図書館等が作成した各言語の典拠データを機械的に同定して提供するVIAFと、知的創作物に関連する広範囲の個人や団体を対象に識別子を付与するISNIとの、今後の連携の可能性や運営体制の構築、サービスの在り方について、議論が行われました。これはBnFと英国図書館(BL)による提議がきっかけです。BnFとBLはVIAF評議会会議メンバーである一方で、ISNI設立メンバーの一つCENL(欧州国立図書館長会議)の代表でもあります。かつ両機関はISNI品質管理チームとしての責任を負っている立場でもあります。
 VIAF、ISNIとも現在はOCLCが関わるサービスです。VIAFとISNI両事業の長期的な継続性と将来的なビジネスモデルの検討が必要であることは、各国で認識が共有されつつあります。しかし、VIAFがOCLCによって無償で提供されるサービスであるのに対し、国際規格であるISNIはメンバーの基金で維持管理されているため、VIAF参加機関からは経済的かつ人的負担の有無等につき懸念が示されています。
 OCLC幹部とBnFの担当者からは、2017年2月にロンドンで開催されたISNI-VIAFサミットの概要について報告が行われました。サミットでは、VIAFとISNIそれぞれのデータモデルやワークフロー等があらためて確認されました。また、国立図書館とそれ以外の図書館とのデータに対するニーズの違いや、あるべきデータモデル、短期・長期の経済的モデル(たとえばOCLCサービスのsubscriptionモデルや、OCLCがISNI登録機関となること)などさまざまな検討が行われたことが報告されました。最終的にはOCLCとVIAF、ISNIの経済的な持続可能性に集約されることがうかがわれます。
 今後の進め方については、次のとおり提案がありました。ワーキンググループを設置し、戦略的・技術的な面から具体的な方向性とロードマップをまとめ、VIAF評議会会議にフィードバックする。例年のISNI-VIAFサミットやVIAF評議会会議で進捗報告を行う。必要に応じてオンラインツール等による遠隔会議を行う。これらの詳細については、VIAF評議会会議後にメンバーにプロポーザルが提示される予定です。

【おわりに】

今年のIFLAのWLICでは、昨年から検討が進められている“IFLA Global Vision”が大きく取り上げられました。これは、拡大するグローバリゼーションの中で図書館が直面する課題に対し、図書館による共同かつ包括的な取組みのための将来のロードマップ策定を目指すものです。IFLA各分科会や関係するコミュニティで議論され、取りまとめられた案をもとに、最も重要と考えられる図書館の課題や取組みについて、オンラインでの投票が広く呼び掛けられました。その結果を受け、“IFLA Global Vision”は2018年1月に確定し公開される予定です。
 2018年のIFLAのWLICの開催地は、マレーシアのクアラルンプールです。大会テーマは“Transform Libraries, Transform Societies”です。
 IFLAの各分科会の常任委員は4年の任期です。筆者の任期は3年目に入り、より具体的な活動を通した国際的な書誌調整への寄与、貢献が求められることを実感しています。Skype等による遠隔会議の機会も活用しながら、分科会での議論により積極的に参加できればと思います。

津田 深雪
(つだ みゆき 収集・書誌調整課)

[1] 今回の大会プログラム、発表ペーパーの一部については、以下に掲載されています。
http://2017.ifla.org/, (参照2017-11-02).
http://library.ifla.org/view/conferences/2017/, (参照 2017-11-02).
また、2016年のIFLA大会およびVIAF評議会については、本誌2016年4号(通号39号)の記事をご覧ください。
http://www.ndl.go.jp/jp/data/bib_newsletter/2016_4/article_03.html, (参照2017-11-02).

[2] “National Bibliographies in the Digital Age: Guidance and New Directions”.
収集書誌部訳「デジタル時代の全国書誌:指針および新しい方向性」をNDLホームページで公開しています。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9454266, (参照2017-11-02).

[3] 2014年9月16日、IFLAが策定した図書館や情報サービスにおける標準を集めた“IFLA Standard”のページを公開しました。
IFLAでは、概念モデル、情報の記述規則、UNIMARC等のフォーマット、ガイドライン、ベストプラクティスをスタンダード(標準)と定義しています。策定されたIFLAスタンダードは以下のページで公開されています。
IFLA. Current IFLA Standards.
https://www.ifla.org/node/8750, (参照2017-11-16).

[4] ベストプラクティスの構成をもとに、各章の内容の修正・更新を行う方法で、最終版に向けた作業を進めています。構成は“Background”“Organisation”“Purpose and value”“Scoping and selection”“Resource description and standards”“Service delivery”の1章から6章までと、用語集(含・リンク集)と参考資料一覧からなります。

[5] FRBRまたはIFLA-LRMのオブジェクト指向(object-oriented)版がFRBRoo(またはIFLA LRMoo)です。

[6] RDA運営委員会を中心に、IFLA-LRMへの対応やツールキットのユーザビリティ向上のための改修等を含めた3R(RDA Toolkit Restructure and Redesign) Projectが進められています。新ツールキットの公開時期は、2018年4月とされていましたが、リスケジュールの結果、6月になる予定です。
3R Project.
http://www.rdatoolkit.org/3Rproject, (参照2017-11-02).


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NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)

ISSN 1882-0468/ISSN-L 1882-0468
2017年4号(通号43号) 2017年12月26日発行

編集 国立国会図書館収集書誌部
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