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国際目録原則覚書(ICP)の改訂版が公開されました

NDL書誌情報ニュースレター

NDL書誌情報ニュースレター2017年1号(通号40号)

【はじめに】

「国際目録原則覚書(Statement of International Cataloguing Principles; ICP)」は、2009年にIFLAによって策定された目録に関する指針で、1961年に国際目録原則会議で採択された通称「パリ原則」にとって代わるものです[1]。その後、ICPは、書誌および典拠レコードに記録されるデータを対象とした三つの概念モデルFRBR、FRAD、FRSAD[2]からなる“IFLA Functional Requirements family”の概念モデルを取り入れ、2014年から2015年にかけて内容の再検討が進められました。そして、2016年12月に改訂版[3]がIFLAにより公開されました。この2016年版は、新たな利用者層やオープンアクセス環境、データの相互運用性とアクセシビリティ、発見ツールの特徴、利用者行動の著しい変化等を考慮したものとなっています。

2009年版からの変更点を中心に、2016年版についてご紹介いたします。

1. 全体および構成

2016年版の構成は以下のとおりです。

  1. 適用範囲(Scope)
  2. 一般原則(General Principles)
  3. 実体、属性および関連(Entities, Attributes, and Relationships)
  4. 書誌記述(Bibliographic Description)
  5. アクセスポイント(Access Point)
  6. 目録の目的および機能(Objectives and Functions of the Catalogue)
  7. 探索能力の基盤(Foundations for Search Capabilities)

2009年版から章の順番が少し変更され、「目録の目的および機能」が4章から6章に移されました。「書誌記述」「アクセスポイント」の章がそれぞれ繰り上がっています[4]

2016年版では、全体を通して「書誌レコード(Bibliographic Record)」「典拠レコード(Authority Record)」の語を使わず、それぞれ「書誌データ(Bibliographic Data)」「典拠データ(Authority Data)」が使われるようになりました。これは、レコードはデータの集合の仕方と見せ方の一つであるという考えによります。

2. 各章について

「1. 適用範囲」

2009年版では「図書館、文書館、博物館・美術館」を対象としていましたが、2016年版では図書館コミュニティに特化したものとなりました。これは、データの作成、管理、共有における他コミュニティとの連携が望ましいとする姿勢に変わりはないものの、連携が必ずしも同一の原則や定義の適用を意味するものではなく、あくまでこの原則が図書館の活動、概念モデル、標準、ツール等に基づくものであるという考えによるものです。また、冒頭の文章において、ICPが「目録規則(cataloguing codes)」の作成を導くとともに、「カタロガーの判断(the decisions that cataloguers make)」の指針となることを意図したものであると述べられています。

「2. 一般原則」

2009年版では9種類の原則として、「利用者の利便性」「用語法の一般性」「表現性」「正確性」「充分性および必要性」「有意性」「経済性」「一貫性および標準性」「統合性」が掲げられていました。

2016年版では、さらに4種類の原則が追加されました。「相互運用性(Interoperability)」「開放性(Openess)」「アクセシビリティ(Accessibility)」「合理性(Rationality)」です。これにより、合わせて13種類の原則が提示されましたが、最上位の原則が「利用者の利便性」であることは変わりません。それ以外は特に順序づけはなく、もし対立する場合には、今回追加された「相互運用性」―図書館コミュニティ内外の書誌および典拠データの共有と再利用の促進―の原則を優先すべき旨が示されています。

「3. 実体、属性および関連」

今回の改訂は、FRBR、FRAD、FRSADの概念モデルの統合作業(継続中)の影響を受けています。2010年、この概念モデルの一つFRSADにおいて、FRBRで目録利用者の関心対象とされている実体で、かつ2009年版でも実体として挙げられていた「概念(Concept)」「物(Object)」「出来事(Event)」「場所(Place)」の代わりに、「Thema」が定義され、「Nomen」も新たに加わりました。その結果、2016年版では、以下の九つが実体として挙げられています。「著作(Work)」「表現形(Expression)」「体現形(Manifestation)」「個別資料(Item)」「個人(Person)」「家族(Family)」「団体(Corporate Body)」「Thema」「Nomen」[5]

「4. 書誌記述」

4章(2009年版の5章に相当)にはそれほど大きな変更点はありません。2009年版の記載から、、2016年版では、ISBDが図書館コミュニティにとっての基準であること、他の基準に基づく場合には、データの相互運用性を担保し、その適切な再利用を促進するために、ISBDとのマッピングを作成し公開すべきことが追加されています。

「5. アクセスポイント」

5章(2009年版の6章に相当)では構成が微調整され、項目名の修正がありました。2016年版では、「典拠形アクセスポイントの選定」が「5.3.3 優先名称の選定(Choice of Preferred Name)」に、「著作/表現形の名称の形」が「5.3.4.4 著作/表現形/体現形/個別資料の名称の形」に変更されました。

また、「著作/表現形/体現形/個別資料に対する優先タイトルの選定」の項に、著作に複数のタイトルがある場合の具体的な説明が新たに追加されました。複数の体現形に、著作のタイトルの異なる形があるときは、a)著作のオリジナルの表現形における最初の体現形のタイトル(通常はオリジナルの言語による)、b)一般によく使用されているタイトル、の優先順位によることが示されています。

最後に、異形名称および名称の異なる形が典拠データとして記録されるべきものであることが明記されました。

「6. 目録の目的および機能」

6章(2009年版の4章に相当)では、FRSADおよびFRBR Library Reference Model(FRBR-LRM)[6]で新たに追加された利用者タスク「探索(Explore)」が明記されました。「6.5 誘導および探索すること」として、その対象を目録の中と外から、さらに他の目録や図書館外の世界にまで広げることが示されています。また、「特定の主題(subject)に関するすべての資料」が「特定のthemaに関するすべての資料」に改められました。

「7. 探索能力の基盤」

「7.1 探索」の項では、アクセスポイントの役割について二つ挙げられています。2009年版では確実な検索の提供と探索結果の限定が示されていましたが、2016年版では、後者が「探索結果の配列(collocate)と限定」になりました。また、「7.1.1. 探索の仕組み」の項の末尾に、相互運用性と再利用の促進のために、図書館外(の仕組み)に対しても開放され、検索できるデータであるべき旨が明言されました。さらに、典拠データの「7.1.2 中核的アクセスポイント(Essential Access Points)」の説明において、「実体の典拠形名称」「実体の異なる名称および名称の異なる形」「実体に対する識別子」に加えて、新たに「著作の統制された名称(主題アクセスポイントおよび(または)分類記号)」が追加されています。

「7.2 検索」の項の末尾には、利用者が検索結果のさまざまな表示順を選択できること、可能であれば、実体とそれらの関連の表示が優先されるべきことが追加されました。

【おわりに】

以上、ICP2016年版における2009年版からのおもな変更点を紹介しました。なお、IFLA目録分科会のICP改訂にかかるタスクグループでは、今回の改訂は必要最低限のものであり、FRBR-LRMの公開を見据えたさらなる改訂も想定している旨、2015年ケープタウン大会の常任委員会で担当者から言及がありました[7]。今後も動向を注視してまいります。

津田 深雪
(つだ みゆき 収集・書誌調整課)

[1] 収集書誌部による日本語訳(PDFファイル)を国立国会図書館デジタルコレクションで公開しています。
http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1000879_po_ICP-2009_ja.pdf?contentNo=1&alternativeNo=, (参照 2017-01-27).

[2] 1998年刊行「書誌レコードの機能要件(Functional Requirements for Bibliographic Records; FRBR)」、2009年刊行「典拠データの機能要件(Functional Requirements for Authority Data; FRAD)」、2011年刊行「主題典拠データの機能要件(Functional Requirements for Subject Authority Data; FRSAD)」

[3] IFLA目録分科会のウェブサイトに原文と概要が掲載されています。
http://www.ifla.org/publications/node/11015, (参照 2017-01-27).

[4] その他2016年版では、2009年版で付属資料だった「用語集(Glossary)」と「参考資料(Sources)」が8章、9章として位置づけられ、さらに「10. 使用しない用語(Terms no longer used in 2016 Statement)」「11. 後書き(Afterward)」が追加されました。

[5] 「Thema」「Nomen」はFRSADで追加された実体です。日本語の定訳がまだないため、本文中では訳語を付していません。FRSADでは、「Thema」は著作の主題として使われる実体、「Nomen」はthemaが関係していたり、扱われていると知られている記号や記号の系列(英数字、シンボル、音等)、と定義されており、ICP2016年版の用語集の定義でも大きな変更はありません。
山本 昭, 水野 資子訳. 主題典拠データの機能要件 概念モデル(仮訳). TP&Dフォーラムシリーズ : 整理技術・情報管理等研究論集. 2014, (23), p. 64-96.

[6] FRBR、FRADおよびFRSADの三つの概念モデルを整理統合したもので、2016年2月から5月にかけて、案がワールドワイドレビューに付されました。2017年1月現在、まだ確定版は公開されていません。本誌2016年4号(通号39号)の以下の記事も参照。
http://www.ndl.go.jp/jp/data/bib_newsletter/2016_4/article_03.html, (参照 2017-01-27).

[7] 2015年4号(通号35号)の以下の記事も参照。
http://www.ndl.go.jp/jp/data/bib_newsletter/2015_4/article_01.html, (参照 2017-01-27).


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NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)

ISSN 1882-0468/ISSN-L 1882-0468
2017年1号(通号40号) 2017年3月28日発行

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