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世界のRDAの取組みのいま(5)―フィリピン

NDL書誌情報ニュースレター

NDL書誌情報ニュースレター2015年4号(通号35号)

【はじめに】

フィリピンでは従来、英米目録規則第2版(Anglo-American Cataloguing Rules, second edition: AACR2)を使用して目録を作成していましたが、2012年12月、フィリピン図書館専門職調整委員会(Philippine Professional Regulatory Board for Librarians: PRBFL)が国内の図書館に、2015年までに目録規則としてRDA(Resource Description and Access)を採用するように指示しました。本稿では、2013年5月から7月にかけてアナベル・パレーデス・アセデラ氏が実施したアンケート調査の結果に基づき、ミンダナオ島の図書館におけるRDAに対する意識やその準備状況(2013年7月時点)をご紹介します[1]。なおアセデラ氏は、アンケート実施当時、北ミンダナオ地方の教育の中心、カガヤンデオロ市にあるルーデス大学に所属していました。また、あわせて、2015年9月現在のフィリピン全体のRDAの対応状況についてもご紹介します。

【背景】

フィリピンの図書館員にとって、RDAはまだあまり馴染みがありません。その基本概念となる「書誌レコードの機能要件」(Functional Requirements for Bibliographic Records: FRBR)[2]がフィリピンの図書館員に初めて紹介されたのは、2006年11月の第1回フィリピン目録作成専門家会議(First Meeting of Philippine Experts on Cataloging)でのことでした。当時の参加者たちの反応は、「私たちをさらに混乱させるだけだ。」「著作(work)、表現形(expression)、体現形(manifestation)、個別資料(item)など目録作成に何の意味もない。」といった否定的なものでした。そして、会議の後、FRBRは忘れ去られたかのようでした。

2008年11月には、米国のRDA開発合同運営委員会(Joint Steering Committee for Development of RDA:JSC)がRDAの草案を公開しましたが、国内での対応は緩慢なものでした。講義や研修が開催されたものの、RDAの概要や簡単な紹介に留まるものがほとんどだったのです。

しかし、その後、2012年7月に、フィリピン国立図書館がRDA適用スケジュールの策定などを目的に、国内の図書館員のRDA移行準備に関する会合を開催しました。同年12月、PRBFLは、AACR2の代わりにRDAを採用することを発表しました。

一方、アセデラ氏が、RDAについて、ミンダナオ北部の中心都市カガヤンデオロ市の図書館員を対象に、非公式なヒアリング調査を実施したところ、楽観、悲観、無関心などのさまざまな反応がありました。さらには、RDAについて全く知らない図書館員さえいることがわかりました。そこで、カタロガーの研修の検討の参考に、ミンダナオ島の図書館員のRDAに対する意識と各図書館における準備状況をより詳しく調査することにしました。

【調査方法と調査対象】

アンケートは、2013年5月から7月にかけて、ミンダナオ島の28の図書館の司書資格を持つ図書館員51名を対象に行われました。RDAは、すべての図書館業務に影響するため、アンケートの対象者を目録担当者に限定しませんでした。その結果、回答者の内訳は、全体の45%が「ワンパーソン・ライブラリーの図書館員」で、43%が目録以外の業務(収集、レファレンス、貸出、医療分野、総務等)担当者でした。目録担当者は全体の12%でした。

アンケートは質問事項10問からなり、海外の二つの図書館関係団体(米国のSWON図書館コンソーシアム(SWON Libraries Consortium)およびカナダ図書館協会(Canadian Library Association)の専門サービスに関するグループ(Technical Services Interest Group)[3])がそれぞれ行ったRDAに関する調査をもとにアセデラ氏が作成しました。

【調査結果と考察】

PRBFLによるRDAの採用に関する決定については、78%が認識していましたが、各館における適用のための準備状況については、未対応という回答が相当数に及びました。具体的な適用時期については、41%が適用未定と回答した一方、すでに適用している(16%)、2013年または2014年中に適用する予定である(29%)という回答もありました。また、適用する予定がないとする回答は4%でした(図1)。


図1 RDAの適用時期 [4]

つぎに、前述のとおりRDAはフィリピンの図書館界にとって馴染みのないものであり、十分な研修が必要であるため、RDAの講義や研修の受講経験の有無について質問しました。その結果、ほとんどの図書館員がすでに受講したことがあると回答しました。さらに、その講義や研修が実際にRDAを適用するために十分なものだったかどうかについては、反応が真っ二つに分かれ、47%が研修は十分と感じているのに対し、53%はそうではないという回答になりました。

RDAについて充分理解できたと思われる分野は何かという質問には、RDAの適用方法と用例(25%)、RDAの規則の基本(24%)、AACR2との違い(19%)と続きました(図2)。


図2 RDAについて充分理解できたと思われる分野 [5]

RDAを実際に仕事でストレスなく使えるかどうか尋ねたところ、ストレスがない(18%)、あまりストレスがない(36%)、ややストレスを感じる(16%)、ストレスを感じる(29%)という結果でした(図3)。


図3 RDAを実際に仕事でストレスなく使えるか [6]

さらに、研修を受講した回数とRDAの使用におけるストレスの相関関係を調べました。その結果、受講した回数が多いほど、RDAをストレスなく使えると感じていることがわかりました。しかし、十分に研修を受けたと感じている図書館員の場合でも、RDAの概要は理解しているものの、非図書資料に適用するためにはより進んだ知識を必要としていました。また、当然のことですが、研修が十分でない図書館員ほどRDAの使用にストレスを感じていました。

RDAは、冊子体以外に、RDA Toolkitとしてオンラインでも有料で提供されています。RDA Toolkitは、年に数回改訂されるRDAの規則そのもののほか、MARC21フォーマットとのマッピングや、米国議会図書館(LC)の指針類も見ることができ、RDAを使って目録を作成する図書館員にとって必要不可欠なツールです。ところが、アンケートに応じた図書館員が所属している28の図書館のうち89%はRDA Toolkitはもちろん冊子体も持っておらず、六つの図書館ではRDA Toolkitが何かさえ知りませんでした。RDAに関する研修の配布資料だけを頼りにしている図書館も少なくありませんでした。そのおもな理由は、図書館員にRDA Toolkitの目的や使用に関する知識がないことと、年間予算10万ドル以下の小さな図書館では、RDA Toolkit等を揃えるより図書館資料を購入したいと考えているからでした。

このアンケート調査の結果から、今後研修を計画する上で重要な点がいくつか明らかになりました。まず、すでにRDAの適用準備が十分にできたと感じている図書館員にとっては、さらに応用知識が必要であること。つぎに、RDAの適用準備が不十分、または適用に不安がある図書館員にとっては、RDAの広範な研修が必要であること。そして最後に、多くの図書館でRDA toolkitや冊子体の購入費がまかなえないため、図書館員はRDAにアクセスできないことです。

上記のアンケート結果と考察をふまえ、“Maxwell's Handbook for AACR2”[7]のような、基礎から応用まで含み、段階や対象別に分かれたRDAの研修マニュアルの必要性が訴えられています。これはAACR2からRDAへの移行の不安に応えるためのガイドラインであってほしいとも述べています。また、ミンダナオ学術図書館情報ネットワーク(Academic Libraries Information Network in Mindanao:ALINET)のような、この地域の図書館に専門的な支援を行っている機関が研修マニュアルの作成主体となり、RDA Toolkitにアクセスできない図書館に配布することを期待して論文を結んでいます。

【おわりに】

2013年に実施したアンケート調査から2年経った現在のフィリピン全体の状況はどうなっているでしょうか?筆者がアセデラ氏にメールで問い合わせたところ、次のような回答をいただきました[8]

(1)
フィリピン学術研究図書館協会(Philippine Association of Academic/Research Libraries:PAARL)は、過去2年の間にフィリピン全土でワークショップを開催し、参加したすべての図書館員にRDAハンドブックを配布してきました。また、フィリピン国内のその他の図書館協会もRDAに関するセミナーを支援してきました。
(2)
2015年から司書資格試験の範囲にRDAが含まれるとの発表が試験委員会からありました。また、大学の図書館情報学のカリキュラムではすでにAACR2からRDAに置き換わっています。

いただいた回答には、RDA Toolkitや冊子体の普及状況に関する言及はありませんでした。この2年間で質量ともに充実した研修が行われたことがうかがえ、RDAはより一層フィリピン全体の図書館員の間に浸透してきたと言えるでしょう。また、大学のカリキュラムや司書資格試験にもRDAが含まれるようになり、今後、RDAに習熟した図書館員が増えていくことが期待されます。

上田 友明
(うえだ ともあき 外国資料課)

[1]Annabelle Paredes Acedera. Are Philippine Librarians Ready for Resource Description and Access (RDA)? The Mindanao Experience. Cataloging & Classification Quarterly. 2014, 52(6/7), p. 600-607, doi:10.1080/01639374.2014.891164, (参照 2015-11-05).
下記のURLに要旨が掲載されています。
http://catalogingandclassificationquarterly.com/ccq52nr6-7.html, (参照 2015-11-05).

[2]和中幹夫. 動向レビュー: AACR2改訂とFRBRをめぐって-目録法の最新動向-. カレントアウェアネス. 2002, (274), p. 11-14,http://current.ndl.go.jp/ca1480, (参照 2015-11-05).
和中幹夫・古川肇・永田治樹訳. 書誌レコードの機能要件: IFLA書誌レコード機能要件研究グループ最終報告
(IFLA目録部会常任委員会承認). 日本図書館協会, 2004, 121p, http://www.ifla.org/files/assets/cataloguing/frbr/frbr-ja.pdf, (参照 2015-11-05).

[3]TSIG RDA Training Needs Assessment Working Group of the Canadian Library Association,
“Survey,” http://rdaincanada.wikispaces.com/Survey, (参照 2015-11-05).

[4][1]をもとに筆者作成。なおパーセンテージは「図書館の数」ではなく「図書館員の数」の割合。

[5][1] FIGURE3 (p. 603)を筆者が翻訳し作成。

[6][1]をもとに筆者作成。

[7]Robert L, Maxwell. Maxwell's Handbook for AACR2: Explaining and Illustrating the Anglo-
American Cataloguing Rules through the 2003 Update. Chicago, American Library Association, 2004, 519p.

[8]2015年9月9日付けアセデラ氏からのメールによる回答を筆者が翻訳。


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NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)

ISSN 1882-0468/ISSN-L 1882-0468
2015年4号(通号35号) 2015年12月24日発行

編集・発行 国立国会図書館収集書誌部

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