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世界のRDAの取組みのいま(3)―カナダ

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NDL書誌情報ニュースレター2015年4号(通号35号)

【はじめに】

カナダは英米目録規則第2版(AACR2)を作成した委員会のメンバーでした。カナダの目録作成では、英語圏でAACR2が、フランス語圏でAACR2のフランス語版がそれぞれ使用されてきました。カナダでは英語とフランス語の二つの公用語を持ち、目録作成言語として英語とフランス語の両方の言語が併用されています。

カナダはRDA開発合同運営委員会(the Joint Steering Committee for Development of RDA: JSC)のメンバーでもあったことから、カナダ国内のほとんどの図書館が一定期間でAACR2からRDAに移行すると予想されていました[1]。いち早くRDAに対応した事例として、ケベック州モントリオールにあるユダヤ公共図書館(Jewish Public Library)があります。ユダヤ公共図書館は2012年2月にRDA対応のシステムを導入し、RDAを採用した世界初の公共図書館となっています[2]

カナダ国立図書館・文書館(Library and Archives Canada:LAC)は2013年3月に米国、英国、オーストラリアの国立図書館と協調してRDAの適用を開始しました。フランス語圏では、ケベック州立図書館・文書館(Bibliothèque et Archives nationales du Québec:BAnQ)が同年4月にまず単行本への適用を開始し、順次対象を広げていきました。

本記事では、カナダの英語圏とフランス語圏のRDA研修事情と、2013年秋に実施されたRDAの導入状況調査について紹介します[3]

1. 英語圏のRDA研修

RDAの普及には目録作成者への研修が必要不可欠です。カナダの英語圏では、RDAの導入に向けて行われた研修の一端をカナダの図書館関係者の有志が担いました。その他に米国議会図書館(LC)等の国外で作成された研修資料を活用した研修もありました。

カナダでは2010年まではRDAの研修プログラムは存在していませんでした。2009年からカナダ図書館協会(Canadian Library Association:CLA)の専門サービスに関するグループ(Technical Services Interest Group:TSIG)のメンバーの一部がRDA適用のための研修について検討を行いました。RDAの認知度について調査を実施し、この調査結果を基にカナダに適した研修モジュールの作成を始めました。その際に留意したのは、まず、RDAの理論的な背景や、RDA適用が今後のメタデータ作成における重要な一歩であることを理解させることでした。これは、目録作成者が効率的なデータを作成できるようになるために必要なことでした。

TSIGのメンバーのほかに6人の目録作成者もこのグループに参加し、後に汎カナダRDA目録作成ワーキンググループ(Pan-Canadian Working Group on Cataloguing with RDA。以下、Pan-Canadianといいます)として知られるワーキンググループが誕生しました。

Pan-CanadianはLCが無償で公開しているRDA研修資料等を基に研修モジュールを作成しました[4]。2010年6月にはWiki形式のRDACAKE(RDA CAnadian Knowledge Exchange)[5]によって研修モジュールを維持管理、公開しています。後述するRDA導入状況の調査で、回答した図書館の約3割がPan-Canadianの研修資料を使用したと回答しています。また、約2割がPan-Canadianの講師が行ったRDAの研修に参加したと回答しています。

回答にあったRDAの学習手段については図1のとおりです。


図1 RDAの学習手段 [6][7]

2. フランス語圏のRDA研修

フランス語圏の研修事情は、有志が作成したモジュールなど複数の学習手段が存在した英語圏とは対照的に特定の組織によって行われました。

カナダがフランス語の目録作成にRDAを導入した最初の国であったために、フランス語での研修資料は存在しませんでした。フランス語の翻訳作業が開始されたのは2010年秋でした[8]。2013年3月の適用開始までの期間が短かったため、BAnQとLACのRDA翻訳チームが翻訳と並行して研修資料も作成しました。ドキュメンテーション科学技術推進協会(Association pour l'avancement des sciences et des techniques de la documentation:ASTED)がマネジメントを行い、BAnQが職員の派遣をすることで研修が行われました。最初に研修が行われたのは、2012年11月でした。

その後もフランス語圏の研修は、過度にBAnQに依存した形で行われ、受講を希望する声の多さに対応が追いつかない状態でした。研修実施の要望が高まった原因の一つは、各館で研修講師を務める職員の育成を目的とした研修を想定していましたが、実際には全てのスタッフに直接受講させたいと考える管理職者が大勢いたためです。

RDA適用後のサポートについてもBAnQが指導的役割を果たしています。フランス語版RDAが使用できるようになると、フランス語圏でも適用の課題を論じるフェイスブックや大学のアドホックグループ等の有志による草の根活動も急速に増えてきましたが、館種を超えた交流はありません。RDA Toolkitでは、目録に関する決定やツールの共有が可能であり、フランス語圏の目録コミュニティは、そこに掲載されるBAnQの追加決定や適用方針に関心を持っています。

3. RDA導入状況調査

フランス語圏では、2013年にRDAの適用を開始した目録コミュニティのほとんどがケベック州にありました。そのため、対面のワークショップのように研修の実施方式が限られていても、物理的な距離による問題はありませんでした。一方、英語圏では、対象となる地域が広大なため、対面によるワークショップは人手と時間を要するため、限られた資源の中で数多く実施することが難しい状況でした。そこで、より費用対効果の高い研修方式を検討するため、2013年秋、Pan-Canadianによってカナダの英語圏におけるRDA導入状況の調査が行われました。サンプルの54.3%に当たる50館の回答に基づく結果は以下のとおりでした(図2参照)。


図2 カナダ英語圏のRDA導入状況 [9]

50館の内、RDAを完全に適用した図書館は10%、部分的に適用した図書館が56%、未採用の図書館が34%という結果でした。ただし、未採用の図書館の内76.5%が将来的にはRDAを導入する予定であると回答しています。

RDAが適用されている資料は単行本と録音資料が多く、次いで逐次刊行物が挙げられていました。また、部分的に適用した図書館のうち約3割の図書館ではRDAで作成されたデータをコピーカタロギングしていましたが、オリジナルの目録作成では完全にはRDAが使用されていませんでした。

館種別で見ると、総合大学(University)図書館における導入率が最も高く、適用は12.5%、部分的適用75.0%、未採用12.5%でした。単科大学(College)図書館では適用は0%、部分的適用37.5%、未採用62.5%、公共図書館では適用は5.9%、部分的適用58.8%、未採用35.5%、官公庁図書館では適用は25.0%、部分的適用25.0%、未採用50.0%、専門図書館では適用は0%、部分的適用50.0%、未採用50.0%という結果でした。

館種別では総合大学図書館が最もRDA導入に積極的であるという結果になりました。同じ学術系図書館でも単科大学図書館の導入率が低かったのは、単科大学図書館のコンソーシアムがRDAの導入に慎重であったことが理由でした。

地域別でみると、最も導入率が高かったのは西部地域(マニトバ州、サスカチュワン州、アルバータ州、ブリティッシュコロンビア州)で適用15.0%、部分的適用75.0%、未採用10.0%でした。反対に最も導入率が低かったのは北部地域(ノースウェスト準州、ヌナブト準州、ユーコン準州)で、適用は0%、部分的適用20.0%、未採用が80.0%でした。その他大西洋地域(ニューブランズウィック州、ノヴァスコシア州、プリンスエドワードアイランド州、ニューファンドランド・ラブラドル州)では、適用は11.1%、部分的適用33.3%、未採用55.6%、中央地域(オンタリオ州)では適用は6.3%、部分的適用56.2%、未採用37.5%という結果になりました。

北部地域の導入率が低い理由として、カナダでは北に行くほど人口密度が低いため、周囲の図書館との距離があり連携が取りにくい、研修を受けるための費用が掛かるという回答が寄せられました。次に導入率が低かった大西洋地域では、導入に割く時間と研修の機会がないとの回答がありました。

この調査に寄せられたコメントから、いくつかの興味深い事実が明らかになりました。大きな図書館(特に学術系)でRDAの採用が最も進んでおり、新しい目録規則の結果とメリットについて肯定的でした。コンソーシアムに参加している図書館では、コンソーシアムの適用方針の決定や調整に時間がかかるため、ゆるやかに導入する傾向がありました。公共図書館は、AACR2における一般資料表示(GMD)からRDAにおける内容種別(content type)とキャリア種別(carrier type)への変更に伴って、利用者にわかりやすく伝えるための表示方法が新たな図書館システムで必要になることについて、最大の懸念を表明していました。すべての館種に共通の課題はRDA Toolkitに慣れることが困難であったことと、カナダにおける適用方針の決定機関がなかったことでした。

【おわりに】

カナダの英語圏のRDA研修では、有志によって研修を行う動きがありました。有志による研修には草の根的に助け合って行う方式の弊害として、RDAに変更があっても、誰も最新版を伝えることに責任を持たず、受講者の自己責任になってしまうという問題がありました。一方、フランス語圏では、研修の運営を特定の組織に依存することになり、受講の要望に対しその企画や実施が追いつかない状態でした。

信頼のおける組織と有志による研修のバランスが、今後、カナダの英語圏、フランス語圏の目録コミュニティでそれぞれ研修を成功させていく上での課題です。

2013年秋時点でJSCのメンバーであるカナダ国内では、英語圏に限ればRDAの導入率は6割を越えていました。ただし、全面的にRDAへ移行した図書館はまだ1割しかなく、部分的に導入している図書館の方が多いという結果でした。RDA適用から数年経過してカナダ全体でどの程度RDAが普及したか、新たな調査が待たれます。

河村 悦子
(かわむら えつこ 外国資料課)

[1]JSCは、2015年11月、RDA運営委員会(RDA Steering Committee:RSC)に名称が変更されました。
RDA Governance Review Takes First Step in Implementation(RSC, 2015/11/7)
http://www.rda-rsc.org/RDAgovernancefirststep, (参照 2015-11-20).

[2]カナダのJewish Public LibraryがRDA対応の図書館システムを導入へ. カレントアウェアネス-R. Posted 2012年1月18日, http://current.ndl.go.jp/node/19938, (参照2015-10-30).

[3]Emma Cross et al. In the company of my peers : implementation of RDA in Canada.
Cataloguing & classification quarterly. 2014, 52, p.747-774, doi: 10.1080/01639374.2014.899535 (参照 2015-10-30).
下記のURLに要旨が掲載されています。
http://catalogingandclassificationquarterly.com/ccq52nr6-7.html, (参照 2015-10-30).

[4] “RDA: Resource Description & Access Training Materials”
http://www.loc.gov/catworkshop/RDA%20training%20materials/index.html, (参照 2015-12-2).

[5]RDACAKE. https://rdaincanada.wikispaces.com/, (参照 2015-10-30).

[6][3] Figure1を筆者が和訳しました。

[7]ALCTSは、米国図書館協会内の図書館資料およびテクニカル・サービス協会(Association for Library Collections & Technical Services)

[8]フランス語圏における目録規則の動向やRDAのフランス語翻訳については、本誌今号の「世界のRDAの取組みのいま(4)―RDAのフランス語翻訳」を参照してください。

[9][3] Figure 2およびFigure 3を元に筆者が作成しました。


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NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)

ISSN 1882-0468/ISSN-L 1882-0468
2015年4号(通号35号) 2015年12月24日発行

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