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世界のRDAの取組みのいま(2)―イスラエル

NDL書誌情報ニュースレター

NDL書誌情報ニュースレター2015年3号(通号34号)

【はじめに】

イスラエル国立図書館(The National Library of Israel:NLI)では、近年、新館建設(2019年完成予定)や、イスラエルやヘブライ語関係の資料のデジタル化など、大規模なリニューアル計画を推進中で話題を提供しています。このNLIと大学図書館を中心に、イスラエルでも“Resource Description and Access”(RDA)の適用が進められています。

イスラエルの公用語はヘブライ語とアラビア語であり、さらに、ロシア語も多く使用されています。そのため、日本と同様、RDAの適用に向けては、英語以外の言語における対応が必要です。

本稿では、イスラエルの目録作成に固有の課題や、国内全体の図書館へのRDAの普及を目指した準備作業における課題の観点から、その取組みをご紹介します[1]

【イスラエルの目録 RDA以前】

イスラエルでは、米国の基準をふまえた目録基準を使用しています。目録を作成するときの言語(目録用言語)も、英語を使っています。ただし、ヘブライ文字、アラビア文字またはキリル文字の資料については、ラテン文字(ローマ字)への翻字ではなく、資料の文字表記(原綴)をそのまま記録しています。これは、翻字のルールに一貫性がないため、利用者が検索の際に混乱しないようにするためです。また、英語で目録を作成する場合でも、米国議会図書館(LC)ではなくヘブライ語アカデミー(the Academy of the Hebrew language)の翻字テーブルを使用したり、聖書のような無著者名古典の標目の多くに米国のものと異なる独自の標目を使用するといった運用が行われています。

ヘブライ語資料の場合は、英米目録規則第2版(AACR2)に準拠したヘブライ語目録マニュアルがあり、標準化したヘブライ語の略語や、注記、一般資料種別(General Material Designations:GMDs)などを使用して書誌が作成されてきました。アラビア語やロシア語についてもおおむねヘブライ語同様の対応がとられてきました。

データフォーマットについては、多くの学術図書館がExLibris社の統合図書館システムAlephを導入していたため、Alephの開発方針に合わせる形で、2004年から2005年頃に、MARC21フォーマットに対応することになったという経緯があります。Alephは、英国図書館(BL)等の海外の国立図書館だけでなく、日本でも、国立国会図書館や慶應義塾大学で採用されています。なお、ExLibris社はイスラエルの会社であるため、MARC21フォーマットで対応できないヘブライ語特有の冠詞のインデックス処理や、左から右へ記述する言語と右から左へ記述する言語の両方を表示する場合の問題(bidirectional display)に対応することができました。

【RDA適用へ】

RDA適用の検討は、長らくヘブライ大学図書館が実質的な国立図書館の役割を果たしていたこともあり、ヘブライ大学も参加するイスラエル大学共同目録委員会(The Israeli Inter-University Cataloging Committee。以下、目録委員会といいます)が主体となり行われました。2010年7月から検討を開始し、しばらくは様子見でした。しかし、2012年になると、LCが2013年3月末までにRDAの適用を完了する計画を発表し、続いて、BL、カナダ国立図書館・文書館、オーストラリア国立図書館などが2013年第1四半期を目標に設定しました。イスラエルもRDA適用に向けた取組みを開始しました。

イスラエルでも、コピーカタロギングの利点などを考慮し、RDAを適用する方向で動き始めました。そして、目録委員会の下に設置されたRDA小委員会(The RDA subcommittee)により、以下の三段階に分けてRDAの適用に取り組むことが決定されました。

  1. OCLCのWorldCatからのコピーカタロギングによる、RDAが適用された書誌レコードおよび典拠レコードの取込み
  2. トレーナーの養成、国レベルの方針の策定、必要な用語のヘブライ語、アラビア語およびロシア語への翻訳
  3. 各図書館での研修の実施と、RDAに準拠したデータの新規作成

【2013年】

  • OCLCのWorldCatからコピーカタロギングを開始
    スタッフはまだRDAのトレーニングを受けていないため、コピーデータ利用のガイドライン作成が必要でした。
  • トレーナーの養成
    2013年8月、7日間にわたり、各図書館の目録部門の責任者を対象にしたセミナーが開催されました。イスラエルにはRDAのエキスパートがいなかったため、NLIと目録委員会は、米国の経験豊富なRDAトレーナーを招へいしました。
  • 必要な用語の翻訳を開始
    学術図書館の目録担当者の多くは業務上必要な英語の知識があるため、RDA Toolkitをヘブライ語に翻訳するのではなく、トレーニングに必要な「コア・エレメント」「アクセス・ポイント」といったRDA固有の新しい用語や、目録業務に必要な用語を翻訳しました。
    自国語資料の目録業務で使用する用語は、ヘブライ語、アラビア語、ロシア語に翻訳されました。関連指示子について、これら三つの言語への翻訳が完了していました(ロシア語は選択した語彙のみ)。
    また、RDAを適用することにより、MARC21フォーマットの260フィールドで出版者や出版地等が不明な場合に使用していた略語が記録できなくなるため、代わりに用いる標準的な用語について、直訳でなくわかりやすい訳語が工夫されました。
  • RDAに準拠した新目録マニュアル作成に着手
    目録マニュアルの文書は、ドラフトの段階からオープンアクセスでNLIのホームページに公開されました[2]。本稿執筆時点でも一部未完成です。前述の関連指示子のリストも、このマニュアルの付録として公開されています。

【2014年】

  • 各大学図書館におけるトレーニングの展開
  • 夏までにRDAに完全準拠したデータの新規作成を開始[3]
  • RDA小委員会による提案書の提出
    国レベルの方針を策定するためのもので、LC-PCC PS(Library of Congress-Program for Cooperative Cataloging Policy Statements)に準拠するだけでなく、イスラエルの「ベストプラクティス」も提唱されています。非ラテン文字言語の目録についての項目があり、関連指示子や用語の翻訳の際に、男性名詞に統一する問題や、ヘブライ語のアクセス・ポイントの没年表記についての問題などが扱われています。

【2015年以降】

  • 逐次刊行物、音楽資料についての提案書の作成(予定)
    本稿執筆時点では、これらについて、2015年6月の目録委員会の記録までがNLIのホームページに掲載されています[4]
  • 資料種別に関する課題の検討
    取組みの第1段階では、当初、従来のAACR2に準拠したデータとの一貫性を考慮し、RDAにはないGMDsの継続を企図していました。その後、GMDsの記録をやめることに決めましたが、RDAが適用される以前(AACR2)のデータとRDAが適用されたデータとの間で、資料種別の同定が困難になるとの懸念が残りました。また、本稿執筆時点で、 ULI(The Israel Union List。大学および単科大学による総合目録)では、従来のAACR2で作成されたデータも、RDAが適用されたデータも両方許容されていますが、RDAが適用される以前のデータを遡及的に更新した際に、MARC21フォーマットの336/337/338の3つのフィールドにそれぞれ記録する代わりに、GMDsを削除するかどうか等は将来的な課題とされています。

【システム面での対応】

国内で多くの大学図書館がAlephを使用していたことの利点として、同じくAlephユーザーであり、先行してシステムの再構成問題に対応していたBLから提供された情報を国内各図書館で共有できた点があります。

BLのRDA適用時のシステム再構成については、EURIG(European RDA Interest Group)の2014年ミーティングの発表資料[5]によると、Alephの再設定、新しいMARCフィールドに対応するためのテーブルの設定変更、プロダクトデータチェック用のMARCレポート、インデックスの再定義、レコード入力補助用テンプレートやマクロの変更などの作業が挙げられています。

【おわりに】

2012年にRDAの適用に向けて動き始めて以来、多くの作業に追われてきたイスラエルですが、取組みに対する積極的な姿勢がうかがえます。RDA適用へのプロセスを経て、国内図書館の協力体制を以前に増して強め、発足当初から目録委員会の目標であった書誌の標準化を進めることができました。

 坂和 さゆり
(さかわ さゆり 逐次刊行物・特別資料課)

[1]Marina Goldsmith, Elhanan Adler. RDA in Israel. Cataloging & Classification Quarterly. 2014, 52(6/7), p. 677-687.
下記のURLに要旨が掲載されています。
http://catalogingandclassificationquarterly.com/ccq52nr6-7.html, (参照 2015-07-30).
本文と同じ内容のものが、NLIのホームページでも入手できます。
http://web.nli.org.il/sites/NLI/Hebrew/infochannels/librarians/RDA-Training-Material/Documents/RDA-in-Israel--final-version.pdf, (参照 2015-07-30).

[2]הספרייה הלאומית. "אמנות הקיטלוג".
http://web.nli.org.il/sites/NLI/Hebrew/infochannels/librarians/Cataloging_Art/Pages/default.aspx, (参照 2015-07-30).
NLIの目録規則に関するウェブページ(本文はヘブライ語)。

[3]ריני גולדסמית "סקירה בישראל-RDA, ליום עיון של מאל"י מרץ2015 ".
http://lib.haifa.ac.il/extprojects/meli/images/docs/2015/rda/Riny_RDA_for_Meli_March_2015.pdf, (参照 2015-07-30).
2015年3月にNLIがExLibris社イスラエルユーザー会議で発表した資料です。これによると、ULIのRDAが適用されたレコード件数は、約134,000件です(2015年3月現在。オリジナルカタロギングとコピーカタロギングの別や使用されている言語等の詳細は不明)。おもな内訳は、NLIが27,013件、テルアビブ大学16,853件、ヘブライ大学13,771件などです。

[4]הספרייה הלאומית. "חומר הדרכה ל-RDA ".
http://web.nli.org.il/sites/NLI/Hebrew/infochannels/librarians/RDA-Training-Material/Pages/default.aspx, (参照 2015-07-30).
NLIによるRDAの研修資料に関するウェブページ(本文はヘブライ語)。

[5]Alan Danskin. RDA: implementation and application, British Library perspectives.
http://www.slainte.org.uk/eurig/docs/EURIG2014/2014_EURIG-AM_presentation_Implementing-RDA-in-BL_Danskin.pdf, (参照 2015-07-30).


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NDL書誌情報ニュースレター(年4回刊)

ISSN 1882-0468/ISSN-L 1882-0468
2015年3号(通号34号) 2015年9月25日発行

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