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書誌データの基本方針と書誌調整:目録に関する国際的な動向

「国際目録原則覚書」最終草案について

国際目録原則に関するIFLA専門家会議(IFLA Meeting of Experts on an International Cataloguing Code: IME ICC)は、パリ原則にとって代わる新しい原則として、2003年7月から「国際目録原則覚書(Statement of International Cataloguing Principles)」の検討を進め、2004年1月、その最終草案を承認したと発表しました。

パリ原則は、1961年、国際目録原則会議によって採択された標目の選定と形式に関する原則であり、国際標準書誌記述(International Standard Bibliographic Description: ISBD)とともに、目録規則の世界標準化における大きな柱として位置づけられてきました。
一方、新しい原則(IME ICC第1回会議の開催地であるフランクフルト・アム・マインにちなんで「フランクフルト原則」とも呼ばれる)は、利用者の便宜を目録規則の第一の目的としつつ、オンライン図書館目録にパリ原則を適合させるため、その適用範囲を大きく拡張しています。
すなわち、新原則では、単に文字による著作ばかりでなく、あらゆる種類の資料を念頭に置き、記述目録法と主題目録法の両面にわたって、一貫した道筋を与えることを目的としています。また、パリ原則の扱う範囲が主として標目に限られていたのに対し、新原則は、図書館目録における書誌レコードと典拠レコードのあらゆる面へと、対象を拡大しています。
さらに、新原則がよって立つ基盤として、伝統的な目録法ばかりでなく、IFLAの打ち立てた新しい概念モデル、「書誌レコードの機能要件(Functional Requirements for Bibliographic Records: FRBR)」や「典拠レコードの機能要件と典拠番号(Functional Requirements and Numbering of Authority Records: FRANAR)」が積極的に導入されています。

最終草案の公表後も、IME ICCによる検討は継続して行われています。2004年8月にブエノスアイレスで行われたIME ICC第2回会議では改訂提案が出され、ラテンアメリカ及びカリブ諸国で合意されました。IME ICCは、こうした調整を各大陸・地域の目録規則作成機関等と引き続き行う予定であり、2005年のエジプト(予定)、2006年の韓国を経て、2007年に南アフリカ共和国(予定)で新原則を完成させることを目指しています。

このたび書誌部は、図書館関係者の理解と関心を深めることを目的として、「国際目録原則覚書」最終草案の日本語訳を作成しました。以下に全文を掲載いたします。

(書誌調整課データ標準係)

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国際目録原則(フランクフルト原則)覚書最終草案

2003年12月19日までの応答に基く「最終」草案

国際目録原則覚書

2003年ドイツ・フランクフルトにおける国際目録規則に関する
第1回IFLA専門家会議承認済草案

序論

 広く「パリ原則」として知られている「原則覚書」は、1961年に国際目録原則会議で採択された。目録法の国際的標準化の根拠となるというその目的は、確実に達成されている。すなわち、その後に世界中で発展した目録規則のほとんどは、厳密に、または少なくとも相当程度に、この原則に従ったものである。

 その後40年以上が経過し、目録作成者とそのサービス対象者が世界中でOPAC(オンライン閲覧目録)を利用するため、共通の国際的な目録原則をもつことは一層望ましいこととなっている。21世紀初頭の現在まで、オンライン図書館目録やその先にあるものにふさわしい目的にパリ原則を適合させようという努力がIFLAによってなされてきた。その目的の第一は、目録利用者の便宜に資するということである。

 この新しい原則は、パリ原則に取って代わり、それを単にテキストから成る著作からあらゆる種類の資料にまで、単に記入語の選定と形式から図書館目録に用いられる書誌レコードおよび典拠レコードのあらゆる面にまで拡張するものである。

 以下に述べる原則案は、次の事項を対象としたものである。

  1. 適用範囲
  2. 実体、属性、関連性
  3. 目録の機能
  4. 書誌記述
  5. アクセスポイント
  6. 典拠レコード
  7. 探索能力の基盤

 この新しい原則は、世界の偉大な目録法の伝統1と、パリ原則を主題目録法の範囲にまで拡大する「書誌レコードの機能要件」(FRBR)と「典拠レコードの機能要件と典拠番号」(FRANAR)というIFLAの文書に表された概念モデル上に構築されている。

 この原則が、書誌データと典拠データの国際的な共有を増大させ、国際的な目録規則を発展させる目録規則作成者たちの努力の指針となることを願うものである。

国際目録原則覚書

2003年12月19日付最終草案

1.適用範囲

 ここに述べる原則は、目録規則発展の指針となることを目的としている。この原則は、書誌レコードと典拠レコード、および今日の図書館目録に適用する。この原則はまた、図書館、文書館、博物館・美術館その他のコミュニティが作成する書誌とデータファイルにも適用することができる。
 この原則は、あらゆる種類の書誌的資料の記述目録法と主題目録法に対して、一貫した道筋を提供することをめざしている。
 目録規則を作成する際に最も重視すべき原則は、目録利用者の便宜でなければならない。

2.実体、属性、関連性

 2.1.書誌レコードにおける実体
 書誌レコードの作成にあたっては、知的・芸術的努力の成果を対象とする以下の実体を考慮する。
  著作
  表現形
  体現形
  個別資料2

 2.1.1.書誌レコードは、特徴として体現形を反映するものでなければならない。ここでいう体現形とは、著作の集合または個別の著作もしくは著作の構成要素を具現化したものということができる。体現形は、単数または複数の物的単位で出現することがある。
 一般的には、各物的形態(体現形)に対して、別々の書誌レコードを作成しなければならない。

 2.2.典拠レコードにおける実体
 典拠レコードは、少なくとも個人、家族、団体3、主題に対する名称の統制形の根拠を示さなければならない。著作の主題として機能する実体には次のものがある。
  著作
  表現形
  体現形
  個別資料
  個人
  家族
  団体
  概念
  物体
  出来事
  場所4

 2.3.属性
 各実体を識別する属性は、書誌レコードと典拠レコードの中でデータ要素として用いなければならない。

 2.4.関連性
 書誌的に重要な実体相互の関連性は、目録のどこででも識別できなければならない。

3.目録の機能

目録の機能は、利用者に次のことを可能にすることである5

 3.1.資料の属性や関連性を用いた探索の結果、蔵書(実際または仮想の)の中から書誌的資料を発見することにより、

 3.1.1. 単体の資料の存在を確認すること。

 3.1.2.次のような一群の資料の存在を確認すること。
  同一の著作に属する総ての資料
  同一の表現形に属する総ての資料
  同一の体現形に属する総ての資料
  特定の個人、家族、または団体の、総ての著作と表現形
  特定主題に関する総ての資料
  通常、探索結果の二次的な限定を行なう他の基準(言語、出版国、出版日付、物的形態等)によって特定される総ての資料

経済的事情のため、著作の構成要素や著作集中の個々の著作に対する書誌レコードのない図書館目録が存在することが認められている。

 3.2.書誌的資料またはその代替物を識別すること(すなわち、レコードに記述された実体が求める実体と一致することを確認すること、または同種の特性をもつ2以上の実体を区別すること)。

 3.3.利用者のニーズに適合する書誌的資料を選択すること(すなわち、内容、物的形態等に照らして利用者の要求を満たす資料を選ぶこと、または利用者のニーズに適合しない資料を排斥すること)。

 3.4.記述された個別資料を入手するかそれへのアクセスを達成すること(すなわち、利用者が購入や借用等によって個別資料を入手したり、遠隔情報源にオンライン接続して個別資料に電子的にアクセスしたりできる情報を提供すること)、または典拠レコードや書誌レコードを入手すること。

 3.5.目録を自在に使うこと(すなわち、書誌情報が論理的に排列され、著作、表現形、体現形、個別資料の相互の関連性を含め障害物のない道筋が示されていることで動き回れること)。

4.書誌記述

 4.1.書誌レコードの記述部分は、国際的に認められた基準に基づかなければならない6

 4.2.記述には、目録または書誌ファイルの目的に基づいて、いくつかの精粗のレベルがあり得る。

5.アクセスポイント

 5.1.通則
 書誌レコードや典拠レコードを検索するためのアクセスポイントは、一般的な原則(1.適用範囲を見よ)に従って形成しなければならない。アクセスポイントは統制形のこともあれば、非統制形のこともある。
 非統制形アクセスポイントには、表現形中の本タイトルとか、書誌レコードに付け加えられたキーワードや書誌レコード中のキーワードとかが含まれることがある。
 統制形アクセスポイントは、一群の資料の存在を確認するために必要な一貫性を提供するものであり、一定の基準に従って標準化しなければならない。この標準化された形(「典拠形標目」ともいう)は、参照形に用いる異なる形とともに典拠レコード中に記録しなければならない。

 5.1.1.アクセスポイントの選定

 5.1.1.1.書誌レコードに対するアクセスポイントには、著作と表現形のタイトル(統制形)、体現形のタイトル(通常は非統制形)、および著作の作成者名の統制形を含める。
  このことは、作成者が団体である場合には、仮に団体の役員や職員の立場にある個人の記名があっても、著作の性質が必然的に団体の総体としての意思や活動を表現したものである場合か、タイトルの表現と著作の性質を考え合わせると、団体が総体として著作の内容に責任を持つことが明らかである場合に限られる。
 さらには書誌レコードに対して、記述対象である書誌的資料の発見、識別、選択に重要と思われるその他の個人、家族、団体、主題の名称の統制形のためのアクセスポイントを提供する。

 5.1.1.2.典拠レコードに対するアクセスポイントには、実体に対する名称の典拠形および名称の異なる形を含める。関連する名称を通じて付加的なアクセスが行なわれることがある。

 5.1.2.典拠形標目
 実体に対する典拠形標目は、体現形に顕著に見られる名称か、または当該目録の利用者に適した広く受け入れられた名称のように、一貫した方法で実体を識別する名称でなければならない(例えば「慣用名」)。
 同一名称の他の実体と区別することが必要な場合には、さらに識別のための特性を付加しなければならない。

 5.1.3.言語
 名称がいくつかの言語で表現されてきたときには、本来の言語と文字で書かれた表現形の体現形に見られる情報に基づく標目を優先しなければならない。ただし、本来の言語と文字が、当該目録中で普通に使われている言語と文字でない場合には、標目は体現形か当該目録の利用者に最も適した言語と文字の一つで書かれた参照形に見られる形に基づくものにすることができる。
 典拠形標目からであれ参照形からであれ、可能な限り本来の言語と文字からアクセスを提供しなければならない。翻字が望ましい場合には、文字変換のための国際基準に従ってこれを行なわなければならない。

 5.2.個人名の形

 5.2.1.個人名が幾つかの単語からなるときには、記入語の選定はその個人の国籍がある国の慣用によって決定するか、

 5.2.2.国籍がある国が確定できないときには、その個人が通常居住する国の認められた用法によって決定するか、

 5.2.3.その個人が通常居住する場所が確定できないときには、記入語の選定は、体現形や一般的な参考情報源に見られるその個人が通常用いる言語の認められた用法に従って行なわなければならない。

 5.3.家族名の形

 5.3.1.家族名が幾つかの単語からなるときには、記入語の選定はその家族に最も関係のある国の慣用によって決定するか、

 5.3.2.その家族に最も関係のある国が確定できないときには、記入語の選定は、体現形や一般的な参考情報源に見られるその家族が通常用いる言語の認められた用法に従って行なわなければならない。

 5.4.団体名の形

 5.4.1.法域を示す典拠形標目には、当該目録の利用者のニーズに最も適した言語と文字による対象領域の名称の今日用いられている形を含めなければならない。

 5.4.2.団体が一連の時代に、一つの名称の些細な変更とは考えられないような別の名称を用いてきた場合には、顕著な名称の変更毎にその名称を新しい実体と見なさなければならず、その結果として各実体に対応する典拠レコードを「をも見よ」(以前/以後)参照で関連付けなければならない。

 5.5.統一タイトルの形
 統一タイトルは、独立したタイトルのこともあれば、名称/タイトルの組合せのこともあり、タイトルを団体名、地名、言語、日付等の識別要素を付加して限定したもののこともある。

 5.5.1.統一タイトルは、本来のタイトルまたは当該著作の体現形に最も頻繁に見られるタイトルでなければならない。特に定められた一定の状況の下では、典拠形標目の根拠として、目録に用いられている文字と言語で広く用いられているタイトルを本来のタイトルよりも優先することがある。

6.典拠レコード

 6.1.個人、家族、団体、著作、表現形、体現形、個別資料、概念、物体、出来事、場所のような実体に対するアクセスポイントとして用いる名称の典拠形と参照形を統制するために典拠レコードを作成しなければならない。

 6.2.個人、家族または団体が、異なる名称または異なる形の名称を用いる場合には、典拠形標目として異なる人格毎に一つの名称または一つの名称の形を選ばなければならない。一つの著作に異なるタイトルがある場合、統一タイトルとして一つのタイトルを選択しなければならない。

7.探索能力の基盤

 7.1.探索と検索
   アクセスポイントは書誌レコードの要素であり、1)書誌レコードと典拠レコードおよびそれに関連する書誌的資料の確実な検索、および2)探索結果の限定手段、を提供する。

 7.1.1.探索方策
  特定の図書館目録や書誌ファイルにおいて、名称、タイトル、主題は、例えば、名称の完全形、キーワード、語句、部分一致形等の可能なあらゆる方策で探索や検索ができなければならない。

 7.1.2.不可欠なアクセスポイントとは、書誌レコードや典拠レコード中の各実体の主たる属性と関連性に基づくアクセスポイントのことである。

 7.1.2.1.書誌レコードに不可欠なアクセスポイントには次のものが含まれる。
  作成者の名称、または、2以上の名称があるときには最初に表示された作成者の名称
  本タイトル、または体現形のための補記タイトル
  出版または発行の年
  著作/表現形の統一タイトル
  件名、主題語
  分類記号
  記述された実体の標準番号、識別子、「キータイトル」

 7.1.2.2.典拠レコードに不可欠なアクセスポイントには次のものが含まれる。
  実体の典拠形名称またはタイトル
  実体の名称またはタイトルの異なる形

 7.1.3.付加的アクセスポイント
 書誌記述や典拠レコード中の他のエリアからの属性は、任意的なアクセスポイントとして、大量のレコードが検索されたときにフィルタや限定の方策として機能することがある。書式レコード中のそのような属性には次のようなものが含まれるが、これに限定されるものではない。
  最初の作成者以外の付加的な作成者の名称
  演者または、作成者以外の役割を果たす個人、家族、団体の名称
  並列タイトル、見出しタイトル等
  シリーズの統一タイトル
  書誌レコード識別子
  言語
  出版国
  物的媒体
 典拠レコード中のそのような属性には次のものが含まれるが、これに限定されるものではない。
  関連する実体の名称またはタイトル
  典拠レコード識別子

付録

目録規則作成の目的

目録規則作成を導く目的は幾つかある7。最上位の目標は利用者の便宜である。

*目録利用者の便宜。記述やアクセスのための名称の統制形の作成を決定する際には、利用者を念頭におかなければならない。
慣用。記述やアクセスにおいて用いられる標準化された語彙は、利用者の多数派の語彙と一致しなければならない。
表現。記述中の実体およびアクセスのための名称の統制形は、実体自体に記述されている方法に基づかなければならない。
正確性。記述対象の実体は、忠実に記述されなければならない。
充分性と必要性。記述中の要素とアクセスのための名称の統制形で利用者が目的を果たすのに必要であり、かつ実体を一義的に識別するのに不可欠なものだけが含まれていなければならない。
有意性。要素は書誌的に有意なものでなければならない。
経済性。目的を達成するための方法が選べるときには、全体として最も経済的な方法を優先しなければならない(すなわち、最小のコストまたは最も単純な道筋)。
標準化。記述とアクセスポイントの作成は、可能な範囲と水準において、標準化しなければならない。こうすることで一貫性が徹底し、その結果、書誌レコードと典拠レコードを共有する能力が増大するのである。
統合化。あらゆる種類の資料の記述と実体の名称の統制形は、可能な範囲で共通の規則に基づかなければならない。
目録規則中の規定は
*正当性を有し、恣意的であってはならない。

時にはこれらの目的が相互に矛盾することがあり、正当で現実的な解決策が採用されることが認められている。

[主題シソーラスについては、他に該当する目的があるが、この声明には含まれていない。]

  1. Cutter, Charles A. :Rules for a dictionary catalog. 4th ed., rewritten., Washington, D.C.: Government Printing Office. 1904, Ranganathan, S.R.: Heading and canons. Madras [India]: S. Viswanathan, 1955,および Lubetzky, Seymour. Principles of Cataloging. Final Report. Phase I: Descriptive Cataloging. Los Angeles, Calif.: University of California, Institute of Library Research, 1969.
  2. 著作、表現形、体現形、個別資料はFRBR/FRANARモデルで記述されるグループ1の実体である。
  3. 個人、家族、団体は、FRBR/FRANARモデルで記述されるグループ2の実体である。
  4. 概念、物体、出来事および場所は、FRBR/FRANARモデルで記述されるグループ3の実体である。[注:FRANARの商標、識別子等のようにさらなる実体を、将来識別することになる可能性はある(FRANARの報告書が「最終のもの」になったときには必要に応じて更新する)。
  5. 3.1-3.5は、Svenonius, Elaine. The Intellectual Foundation of Information Organization. Cambridge, MA: MIT Press, 2000. ISBN 0-262-19433-3に基づいている。
  6. 図書館コミュニティにおいては、それはInternational Standard Bibliographic Descriptionsとなるであろう。
  7. 書誌に関する文献、特に次の資料に掲載のRanganathan と Leibnizの文献に基づく。Svenonius E. The Intellectual Foundation of Information Organization. Cambridge, Mass.; MIT Press, 2000, p. 68.

[翻訳:国立国会図書館書誌部]

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