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書誌データの基本方針と書誌調整:書誌調整連絡会議

平成27年度書誌調整連絡会議報告

2016年3月3日(木)、国立国会図書館東京本館において「平成27年度書誌調整連絡会議」を開催しました。この会議は、国内の書誌調整に関する情報の共有と意見交換により、書誌データの作成及び提供の充実とその発展に資することを目的として、毎年開催しているものです。
16回目となる今回は、「新しい『日本目録規則』:記述の規定を中心に」をテーマとして、日本図書館協会(以下、JLA)目録委員会と連携して進めている新しい『日本目録規則』の策定作業について、JLA目録委員会委員長の渡邊隆弘氏から概要や進捗状況等をご発表いただくとともに、国立国会図書館(以下、NDL)からは、これまで検討した記述の規定の素案やデータ事例について報告を行いました。続いて、国内書誌調整や書誌データの相互運用性の観点から、2人の研究者にご発表いただき、出席者の間で意見交換を行いました。
以下に、会議の内容をご報告します。あわせて、会議資料も掲載します。会議資料のうち、新しい『日本目録規則』素案は、これまでに提示した他の素案とあわせて「新しい『日本目録規則』(新NCR)」のページ」でご覧いただけます。
なお、本報告では、「新しい『日本目録規則』」を「新NCR」と表記します。

平成27年度書誌調整連絡会議 出席者

朝倉 和代
東京都立中央図書館サービス部資料管理課課長代理
河野江津子
慶應義塾大学メディアセンター本部課長
越川 順規
株式会社トーハン図書館事業部マネジャー
小林 邦久
早稲田大学図書館資料管理課長
齊藤 泰雄
国立情報学研究所学術基盤推進部学術コンテンツ課学術コンテンツ整備チーム係長
佐藤 義則
東北学院大学文学部教授
谷口 祥一
慶應義塾大学文学部教授
松木 暢子
株式会社図書館流通センター取締役データ部長
渡邊 隆弘
JLA目録委員会委員長、帝塚山学院大学人間科学部教授

(以上敬称略、五十音順)

(国立国会図書館)

大曲 薫
収集書誌部長
安積 暁美
収集書誌部司書監
川鍋 道子
収集書誌部収集・書誌調整課長
田代 篤史
収集書誌部収集・書誌調整課主査兼書誌調整係長
柴田 洋子
収集書誌部収集・書誌調整課副主査

その他、オブザーバー及び聴講者として収集書誌部職員及び筑波大学附属図書館から1名が参加しました。
所属及び肩書きは、会議開催当時のものです。

開会挨拶

大曲薫(収集書誌部長)

昨年、一昨年に続いて、今回も新NCRをテーマとして取り上げた。JLA目録委員会と当館が連携して、鋭意策定を進めているところであるが、ただ作るだけではなく、国内の各図書館や関係機関ともしっかりと連携しながら、実際に使っていただける規則となるよう、努力している。日頃から書誌データについて重要なポジションで携わっておられる皆様から、貴重な研究の成果や意見を色々な角度からご提供いただいて、良い会議、良い新NCRにしていきたい。

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新NCR策定について

渡邊隆弘(JLA目録委員会委員長、帝塚山学院大学)

1. 新NCR策定の経緯とその背景

2006年の「日本目録規則1987年版改訂3版」(以下、現NCR)刊行後、目録委員会ではRDA(Resource Description and Access)の調査などの準備作業を行い、2010年9月の全国図書館大会奈良大会で、新NCR策定に向かうことを表明した。この時に、これからの目録は、「資料のもつ潜在的利用可能性を最大限に顕在化する道具であるべき」とした。2013年にNDL収集書誌部から連携作業の申し入れがあり、同年9月から本格的に開始した。この時に「2017年度に新NCRを公開」というスケジュールを設定した。
新NCR策定の背景には、FRBRやRDAに代表される、国際的な目録法変革の動きがある。その背景には、対象資料の多様化に伴って資料の内容的側面(コンテンツ)と物理的側面(キャリア)の整理が必要となったこと、目録の作成・提供環境の電子化に対応した規則に組み替える必要が生じたこと、人間が読むだけでなくコンピュータが認識・操作できるデータが求められるようになったこと等がある。また、インターネット時代にあっては、国際的な標準性や、LOD(Linked Open Data)など図書館以外のコミュニティも含めた相互運用性が重要である。現NCRは非基本記入方式や書誌階層など国際的な標準化から距離を置いてきた部分があり、それをどうしていくかが課題となっていた。

2. 新NCRの構成と特徴

新NCRは、国際標準(「国際目録原則覚書(ICP)」等)に準拠し、RDAへの対応を重視している。一方、日本における出版状況や目録慣行にも配慮し、論理的でわかりやすく、かつ実務面で使いやすくするため、RDAと異なる箇所もある。なお、名称、刊行形態は現時点では未定である。
新NCRの特徴としては、次の13点が挙げられる。(1)FRBR等の概念モデルに密着した規則構造、(2)典拠コントロールの明確な位置付け、(3)全著作の典拠コントロール、(4)物理的側面と内容的側面の整理、(5)関連の記録、(6)書誌階層構造、(7)エレメントの設定、(8)語彙のリスト、(9)意味的側面と構文的側面の分離、(10)機械可読性の向上、(11)アクセス・ポイントの言語・文字種と読み、(12)RDAとの互換性、(13)現NCRからの継続性。

3. 進捗状況と今後のスケジュール

策定作業は、エレメントごとに順次、JLA目録委員会とNDL収集書誌部で調整しながら進めている。JLA目録委員会のメンバーは概ね10名前後で推移している。2016年3月現在、公開済みのものは、アクセス・ポイントに関わる諸章と体現形の主要な属性。NDLで素案作成中のものは、著作及び表現形のその他の属性、体現形の属性の一部(刊行方式など)、場所の属性。JLA目録委員会で原案作成中のものは、関連に関する諸章、序説・総説・属性総則、注記であり、「付録」については検討を始めたところである。2015年9月に見直したスケジュールに従い、2016年度中に、「新規則案(全体案)の公開」「パブリックコメントの募集」「検討集会の開催」「国内で共通に適用できるよう関係機関と調整」「新規則案を適用した試行データ作成・評価」などを予定している。2017年度は、パブリックコメントや関係機関の意見も踏まえて新NCR案を修正し、その後、新NCRを公開することとしている。また、書誌データ作成機関向けの実務研修も必要である。
策定後の課題として、3点私見を述べる。(1)作った規則が各データ作成機関でどこまで広く使われるか。(2)著作の典拠コントロールや関連の記録など、これまでと大きく異なる部分への対応を各機関でどこまでしてもらえるのか。新NCRは自由度が高い規則なので、これまでと変わらないデータも作成できるが、それでは新規則の意味がない。その意味で、NDLが今後作成する適用細則は注目されるだろう。(3)毎年大きく改訂されるRDAへの対応など、刊行後の維持体制をどうしていくか。こうした課題への対応が必要となる。

NDLからの補足

安積暁美(収集書誌部司書監)

NDLでは、適用細則作成の準備に着手し、すみやかな公開を目指しているが、時期について明言はできない。また、各機関で新NCR素案を適用した試行データを作成し、意見を寄せてほしい。

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体現形の主な規定の条文案(素案)について

田代篤史(収集書誌部収集・書誌調整課主査兼書誌調整係長)

今回提示した新NCR素案は、体現形に関する規定の主要な部分である。資料の識別・発見に欠かせないエレメントは、該当する表示または情報が存在すれば(本タイトルとキャリア種別は常に)、記録必須のものとして、「コア・エレメント」と定めている。特徴として、目録用言語が日本語・英語の場合に対応したこと、洋図書等のコピーカタロギングを考慮し、RDAに則って作成されたデータと齟齬を生じないようにしたこと、従来の規定に配慮した別法を設けたこと、ISBD区切り記号を扱わないこと(例示の表し方は検討が必要)、などが挙げられる。構成は、RDAとは異なり、FRBRモデルに従い、体現形と個別資料を峻別した。また、現NCRとは異なり、資料の種類別・エリア別とはせず、横断的にエレメントを列挙する形にしたが、中間見出しや通則的規定を設け、全体構成を把握しやすくする工夫を施した。

次に、新NCR素案の内容について説明する。

  1. タイトル
    並列タイトル関連情報、異形タイトル等は、初めてタイトルの一つの種類として設定した。
  2. 責任表示
    複数の著者によって書かれた資料の場合、全員記録する規定を本則としたが、任意に省略できる規定も設けた。また、役割を示す語句は、情報源の表示のままに記録する規定を本則としたが、編集は「編」などと省略して記録する方法を別法とした。
  3. 出版表示・制作表示等
    出版地は、RDAに従って情報源の表示のままに記録する規定を本則としたが、欧米の資料と異なり、第一の識別対象である市町村名が先頭に位置しない場合が多いため、市町村名から記録する規定を本則とすべきという意見もある。
    出版年も、情報源の表示のままに記録する規定を本則としたため、和暦で「日」まで記録することになり、日本の資料、日本語の特性、日本の目録慣行からなじみにくいので別法とすべきという意見もある。
  4. シリーズ表示
    現NCRでは、終期を予定していないものを「シリーズ」、刊行の完結を予定しているものを「セットもの」として区別しているが、新NCRでは、いずれも「シリーズ」として扱う。
    「シリーズ表示」の範囲を広く「上位書誌レベルの表示」と捉えており、構成レベルから見た「上位書誌レベルの表示」(例えば、雑誌記事の収録誌、論文の収録図書)は、この「シリーズ表示」に該当する。個別の記事が集合した特集記事も、記事を収録した雑誌もいずれも「シリーズ表示」となるが、例えばMARC21フォーマットの両者の入力タグは異なっていることもあり、このような扱いとすることに基本的に無理はないか、なお検討が必要である。
  5. キャリアに関する事項
    現NCRの「形態に関する事項」に該当するが、「挿図、肖像、地図等」は表現形の属性であるため、ここには含まれない。「付属資料」はエレメントを設定せず、特別な規定を設けない。キャリアに関する事項では、用語を表から選択して記録する規定が多い。平成25年度の当会議で提示した「機器種別」と「キャリア種別」は、RDAに一対一対応するように用語を定めている。RDAの用語は網羅しているが、RDAにない日本の資料に特有の用語は、独自に表に追加した。

今後の課題としては、(1)「シリーズ表示」の範囲、(2)出版表示で見られたように、RDAを前提としながらも、日本の資料、日本語の特性、日本の目録慣行に合わない部分は、利用者に分かりやすい記録のための規定とすること、(3)RDAは西洋の資料を基本に考えているので、造本や出版事情において、西洋の資料、現代の資料とは異なる和古書・漢籍に適切に対応できるように一層の検討が必要であること、といった点が挙げられる。

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新NCR素案に基づく書誌データの作成について

柴田洋子(収集書誌部収集・書誌調整課副主査)

新NCR素案に従って作成した書誌データ例について説明する。なお、NDLが新NCRを適用するにあたって、実際にこのように記録するとは限らないこと、未提示または未検討の条文案に該当するものは、仮のものとして作成していることにご留意いただきたい。また、現NCRに基づいて作成した書誌データ例は、必ずしも現在のNDLの書誌データと一致しているとは限らない。

ラドヤード・キプリングの「Kim」の日本語訳の一つ、ちくま文庫の『少年キム』(ラドヤード・キプリング著、齊藤兆史訳)の書誌データ例を、MARC21フォーマットに記録したイメージで、以下の4パターン提示する。

  1. RDAに基づくデータ例。LC(米国議会図書館)の類似のデータを参考に作成。
  2. 新NCR素案に基づくデータ例のうち、典拠形アクセス・ポイントの優先言語を原語形とし、体現形にRDAに近い運用を選択した例。
  3. 新NCR素案に基づくデータ例のうち、典拠形アクセス・ポイントの優先言語を日本語形とし、体現形にNDLの現在の運用に近い規定を選択した例。
  4. 現NCRに基づくデータ例。NDLのデータを基に作成。

新NCR素案で本則または別法を選択した場合等によって大きな違いが見られるのは、「出版表示」と「数量」である。その他の「体現形」のエレメントは、新NCR素案でRDAに近い運用を選択しても、現在のNDLの運用に近い規定を選択しても、できあがるデータに顕著な違いはそれほど見られない。また、3.の例のように、現在の目録慣行を継承した規定を選択すれば、4.の現NCRによるデータとも、記録するタグに違いはあるが、作成されるデータには見た目にそれほど顕著な差はない。
平成26年度の当会議で提示した新NCR素案を基に、個人と著作・表現形の典拠データ例も提示する。

2009年に、RDAの開発・運営を担う組織であるJSC(Joint Steering Committee。現在のRSC(RDA Steering Committee))によって提示された、RDAを適用するための3つのシナリオがある。そのうち「シナリオ1.リレーショナル/オブジェクト指向データベース構造」と「シナリオ2.リンクされた書誌・典拠レコード」に基づき、『少年キム』の例をあてはめたものを提示する。シナリオ1の例は、著作・表現形といった実体ごとにレコードが作成され、著作、表現形等のレコードから個人等のレコードにリンクされるもので、RDAの適用において目指す姿とされている。シナリオ2の例は、書誌レコード(体現形等)に典拠レコード(個人等)がリンクされる構成になっており、MARC21フォーマットを用いて記録するという、最も一般的な適用方法と考えられている。

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新NCR案を拝見して:要望と提案

谷口祥一(慶應義塾大学)

タイトなスケジュールであることは承知しているが、なるべく早く新NCRの条文案全体を通して確認したい。さらに、NDLの新NCRに対する適用細則の早期公開も期待したい。その理由は、新NCRが、多様な選択肢が用意された、これまでよりも自由度の高い目録規則であり、実際にどのようなデータの形となるのか、具体的に知りたいからである。

以下は主な要望事項である。平成26年度の当会議で述べた事項も含まれる。

  1. 各条項の趣旨を理解するために、さらに例示を多く記載することを期待する。また、例示の表示形式については、ISBD区切り記号を使用すべきではない。エレメント名の前置や事例ごとの区切りなども必要ではないか。
  2. 一つの条項が複数の指示から構成されたり、大部な指示からなったりするものがある。より理解しやすくなるよう、分かりやすい構成を再検討してほしい。
  3. 体現形の属性の記録の条項において、「著作」という表現が見られる。規則の構造上、別の実体を参照する指示は避け、「著作」の語の使用は控えるべきである。
  4. 原案として提示された情報源の規定について、「体現形の記録」を作成してから「著作・表現形の記録」に進むという順序に縛られている感が否めない。著作・表現形、あるいは個人・家族・団体等の記録は、体現形から出発しない場合もあるという観点も必要である。

集合的実体、構成的実体の扱いについて

集合的実体と構成的実体とはつまり、集合著作と構成著作、集合的な体現形の資料とその構成部分などを指す。これらについては、未だRDAでも十分な規定がなされていない。
日本では現NCRで書誌階層を規定化した実績がある。新NCRでも、RDAに先行して規定してはどうか。

今回提示された新NCR素案のうち関わりがあるのは、(1)記述の形式(包括的記述、分析的記述)、(2)刊行形式(体現形タイプ)とその構成部分、(3)部編等の扱い、(4)総合タイトルをもつ資料ともたない資料の場合の扱い、(5)シリーズ表示の条項、である。これらの条項から、いくつかのモデルパターンを作成することができる。
はたして、新NCRの中で、どのようなモデルパターンが含まれ、どこまでが許容されるのか。さらに、逐次刊行物や更新資料等の体現形のタイプとその構成部分(logical:物理的な独立性とは関係のない構成、physical:物理的な独立性)に対して、これらのモデルパターンがどのように組み合わせられるのか。これらを整理し、必要な規定を新NCRに設定していただきたい。

参考文献

Shoichi Taniguchi. Aggregate and Component Entities in RDA: Model and Description. Cataloging & Classification Quarterly. Vol.51, No. 5, 2013, p.580-599.
谷口祥一. RDAにおける集合的実体と構成的実体の扱い:モデルと記述の分離を踏まえて. 第60回日本図書館情報学会研究大会発表要綱. 2012, p.145-148.

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「これからの学術情報システム構築検討委員会」の動向と新NCRについて

佐藤義則(東北学院大学)

私が委員長を務める「これからの学術情報システム構築検討委員会」は、NACSIS-CATをはじめとする大学図書館の図書館サービス全体について検討していく組織である。電子情報資源に関連した新たな業務の増加に伴い、そこにリソースを割く必要があるとともに、利用者のニーズに沿ってサービスも変化していかなければならない。その基盤であるNACSIS-CATについては、軽量化・合理化の観点から独自方式を廃止し、相互運用性の確保や外部資源の活用を可能とするワークフローの構築を目指して、「NACSIS-CAT検討作業部会」とともに検討を進めている。

NACSIS-CATの特徴は、以下のとおりである。

  • 独自のファイル構造を採用してきたこと。一つは「単行書誌レコード」や「集合書誌レコード」の採用であり、もう一つは、Volumeの繰り返しによる表現を採用してきたことである。
  • MARCタグに代えて、ISBD (国際標準書誌記述)を採用したこと。

このような方法で作ってきたNACSIS-CATのレコード件数は、以下の通りである。
1,100万件を超す図書書誌レコード数のうち、「集合書誌レコード数」が約50万件で、それにリンクしているレコードが約400万件弱である。
また、約6.4%の「Volumeフィールドを持つ書誌件数」に対し、Volumeフィールドの出現回数は223万回にのぼっており、Volumeの繰り返し表現の影響度は非常に大きなものとなっている。結果、所蔵レコードは約1億4,000万件となり、その中にはVolumeの繰り返しによる表現のものが相当数含まれていることになる。

今後のNACSIS-CATについては、「NACSIS-CAT/ILLの軽量化・合理化について(基本方針)(案)」に従って進めていく。

  1. 外部機関作成書誌データの活用を前提とするワークフローの改善
  2. 外部機関作成書誌データに合わせた書誌レコードの階層構造の変更
  3. 名寄せ機能の実装、典拠データの自動リンク形成等による機能強化

つまり、階層構造を持たない外部機関作成の書誌データを変換することなくそのまま投入すること、また、目録作成と検索を切り離して名寄せ機能によって一つの書誌に統合していくことを基本方針として検討を進めていくこととしている。

外部機関作成の書誌データの使用に向けて、相互運用性に関する現状の問題点から見て、新NCR素案における「本タイトル」の扱いが気になるところである。例えば国立国会図書館サーチにおけるNDLと他の公共図書館の書誌データを見ると、例に示すように、本タイトルの採り方にばらつきがみられる。これは、現NCRの解釈の揺れが存在していると考えられる。

「本タイトル(Title proper)」そのものの定義が、RDAや現NCRを見ても分らない。そのため、各データ作成機関は、それぞれのバックグラウンドが異なる中、同じように目録を採っているつもりで異なることをしてきたのではないか。これまでは各機関の中で目録が完結していたため許容されてきたが、今後もっとデータの流通性を高めていくためには、これらをきちんとすりあわせ、基本的な部分で理解を共有しておく必要がある。NACSIS-CATが他のデータ作成機関のデータを活用するためには、欠かせない点である。
相互運用性は基本的には構文の問題とされるが、現実的には意味論の問題としても捉えざるを得ない。つまり、適用細則や説明や解説書がなくても、目録規則だけを見て同じ目録を作成することができるようにしてほしい。それが本来の目録規則なのではないか。

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意見交換 ― おもな意見

(司会 安積暁美)

(1)新NCR素案の課題について

  • 集合的実体と構成的実体の想定されるモデルパターンについては、書誌データの作成単位や書誌階層、及び関連の付与の仕方において検討すべき課題と考えている。
  • 現NCRで採り方に揺れが生じている複数巻単行資料の固有のタイトル等については、これらを目録規則の中で、どこまで規定すべきなのか。今後の検討課題としたい。

(2)各機関の新NCR対応に向けた課題について

  • 和書については新NCR適用を想定しており、洋書についてはそれより早い時期におけるRDAの適用を検討しているところである。
  • OCLCから外部機関作成データを取り込んでいるため、元のデータに適用されている目録規則に合わせることとなる。
  • 今後、軽量化・合理化が進められることが決まっているNACSIS-CATにおいては、新NCR適用によって、各大学図書館の目録作成者の業務量の変化が気になるところである。また、これまで採用してきた独自の規定を、策定中の新NCRに採り込むことは可能か?
    →【目録委員長】今後予定している検討集会や関係機関との調整の中で、検討していく課題と考えている。
  • 現在はNACSIS-CATに登録が進んでいない電子ブックや電子ジャーナルについても、新NCRでは目録の対象に含まれていると理解している。実際にNDLがこれらの資料についてどのように対応するか関心がある。
    →【NDL】実際の検討はこれからであり、NDL適用細則の検討の中で、実現可能性を確認することになる。
  • 公共図書館の立場からは、新NCR策定・公開にかかるスケジュールだけでなく、MARC作成機関の適用スケジュールにも関心がある。

(3)その他

  • MARC作成機関としては、新NCRを適用するうえで、新NCR公開に向けたスケジュールだけでなく、使用するフォーマットや適用細則などのNDLの状況も注視しているところである。
  • 新NCRを適用した際に、既存のデータとの整合性や、データの遡及訂正の要否などについて懸念している。また、利用者が望む形のデータを作成・提供するためには、関係機関との調整や目録作成者の教育が必要になる。
  • 自館では新NCR適用に向けて準備を進めている。新NCRの普及にあたっては、実務担当者に向けた教育のためのツールの作成も検討していただきたい。
    →【目録委員長】現時点ではまだ、ツールといった具体的な想定ができる段階ではない。
  • 今回NDLから提示されたデータ事例で表していたような、FRBRの関係性に沿ったナビゲーションを利用者に提供することは、「資料のもつ潜在的利用可能性を最大限に顕在化する」ことである。そのためには、目録規則と、それに基づくデータと、実現するシステムの三つが必要である。典拠コントロールの拡大によって、求める情報へのリンクや検索結果の自由なグルーピングなど、利用者の利便性を向上させる可能性が広がるとともに、図書館コミュニティ外でLODによるデータの活用事例が生まれる可能性もあるのではないか。
  • 上記のような、利用者にとって享受されるべきメリットのために、多大なリソースとマンパワーをかける必要性があるかという問題に対しては、書誌コントロールを行う機関として図書館が生き残っていくための大事な任務の一つと認識すべきであると言えよう。

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