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第44回科学技術関係資料整備審議会議事録

日時:
平成16年2月26日(木)午後2時00分から午後4時15分
場所:
国立国会図書館 東京本館4階特別会議室
出席者:
科学技術関係資料整備審議会委員 11名
朝倉均、岡﨑俊雄、沖村憲樹、倉田敬子、末松安晴、塚原修一、土屋俊、長尾眞、名和小太郎、野依良治
なお、丸山剛司委員(文部科学省大臣官房審議官)の代理として三浦春政同省研究振興局情報課長が出席した。
館側出席者 13名
館長、副館長、総務部長、調査及び立法考査局長、収集部長、資料提供部長、主題情報部長、関西館長、総務部会計課長、同部企画・協力課電子情報企画室長、主題情報部司書監、同部参考企画課長、同部科学技術・経済課長
会議次第:
1. 開会
2. 国立国会図書館長挨拶
3. 委員長互選
4. 委員長挨拶
5. 報告
 (1)平成15年度における科学技術関係情報整備に係る取り組み
 (2)「国立国会図書館電子図書館中期計画2004」について
 (3)質疑
 (4)休憩
6. 懇談:「情報環境の変容と国立国会図書館のこれからの役割」
7. 今後の審議会の進め方について
8. その他
9. 閉会
配布資料:
科学技術関係資料整備審議会 会議次第
科学技術関係資料整備審議会委員および幹事名簿
科学技術関係資料整備審議会 座席表
科学技術関係資料整備審議会規則
科学技術関係資料整備審議会議事規則

資料1 科学技術関係情報整備の現況と取り組み(PDF: 87KB)
資料2 科学技術関係資料費等の予算額と執行割当額について(PDF: 142KB)
資料3 科学技術分野外国雑誌の内訳、経年グラフ(PDF: 98KB)
資料4 国立国会図書館で利用できるネットワーク系電子資料(PDF: 116KB)
資料5 関西館開館前後のドキュメント・サプライ・サービスの利用状況(1)(PDF: 194KB)
資料6 関西館開館前後のドキュメント・サプライ・サービスの利用状況(2)(PDF: 112KB)
資料7 科学技術関係情報整備計画―組織機構再編後の当面の課題遂行と館内体制について-(PDF: 278KB)
資料8 国立国会図書館電子図書館中期計画2004(PDF: 195KB)
資料9 独立行政法人科学技術振興機構の事業 特に、情報流通促進事業について(PDF: 341KB)
資料10 学術情報流通の現状と課題(PDF: 91KB)

議事録:
1 開会
主題情報部長: 定刻になりましたので、第44回科学技術関係資料整備審議会を開催いたします。始めに、審議会委員の異動についてご報告いたします。昨年6月末日を以って4名の委員がご退任され、新しく4名の委嘱をさせていただきました。次に、資料の確認をいたします。なお第2部の懇談で使用する資料を机上に配布させていただいています。
では、お手元の会議次第に沿って進めてまいりたいと思います。開会にあたりまして黒澤館長よりご挨拶申し上げます。
 
2 国立国会図書館長挨拶
館長: 本日はご多忙のところ当審議会にご出席いただき心から御礼申し上げます。メンバーの異動の報告がありましたが、新たに委嘱させていただいた先生には快諾していただきありがとうございました。昨年の第43回審議会では、電子図書館としての役割を中心に関西館の開館のご報告をするとともに、平成10年2月に頂戴した審議会の答申を受けて策定された五ヵ年の「科学技術情報整備基本計画」がその目標実現の最終年度にあたることから、「基本計画」の総括報告をいたしまして、関西館の新たな方向性についてご議論いただきました。
本審議会は1963年に発足し、40年を経過いたしました。前身の原子力関係資料整備委員会の発足から数えますと半世紀を経過したことになります。この間一貫して、科学技術関係資料の収集については政策的優先順位が与えられ、当館といたしましては本審議会にお諮りしながら充実に努めてまいりました。近年は通信技術の進展がめざましく、科学技術資料をめぐる情報環境は大きく変化しております。私どもは、関西館を立ち上げますとともに、当館全体として電子図書館サービスに取り組むための情報発信の基盤として、システムの開発に取り組みました。このサービスはまだ緒についた段階でありまして、問題はこの最先端の通信技術を駆使して、どのように国民の期待に応えてまいるかでございます。その意味では、当館も情報化の波の中で大きな転換期に直面しております。後ほど取り組みの一端として、「電子図書館中期計画2004」と通称しています計画の報告をさせていただきます。また、社会状況の変化を見据え、本日ご議論していただくテーマを「情報環境の変容と国立国会図書館のこれからの役割」とさせていただきました。
限られた時間ではありますが、大所高所からの活発な討議をお願いしたいと存じます。以上、開会にあたり一言申し上げました。よろしくお願いいたします。
 
3 委員長互選
主題情報部長: それでは次の議事に移らせていただきます。今回は委員の任期満了に伴い、改めて、委員をお願い申し上げました。従いまして現在は委員長が選出されておりませんので、委員の皆様に委員長の互選をお願いいたします。慣例に従いまして最も当審議会のご経験があられる名和先生に選出の手続を進めていただきたいと思います。
名和委員: 今のご説明にあったように、委員長選出をお願いいたします。どなたかご推薦いただけますでしょうか。
末松委員: 適任者ばかりかと思いますけれども、長尾眞委員にお願いしたいと思います。理由は、先生が非常に長い間科学技術関係資料整備、あるいは電子図書館に従事されていること、機械翻訳に関しては世界的な権威でいらっしゃることです。また法人化の動きの中で先月まで京都大学の総長でいらっしゃって、手腕が大変おありかと。国会図書館の特別顧問でもいらっしゃるそうなので、適任かと思います。
名和委員: 末松委員より委員長に長尾委員をご推薦いただきました。皆様いかがでしょうか。
委員一同: 異議無し。
名和委員: それでは、長尾委員よろしくお願いいたします。
(長尾委員、委員長席へ着席)
 
4 委員長挨拶
長尾委員長
(以下、委員長)
それでは、ご推薦、ご指名いただきましたので、委員長を引き受けさせていただきます。この審議会は館長のおっしゃるように伝統のある委員会でして、特に昨今、電子図書館、コンピュータ、インターネットが変貌しつつある中で、将来どういう方向に向かっていったらいいのかという問題もありますし、一方では科学技術資料関係においては出版界の寡占化という現象もあり、電子ジャーナルの深刻な問題もあります。国立国会図書館にどのようにやっていただくのがよろしいか、 大きく言えば日本全体としてどういうふうにやっていくのかは大きな問題ではないかと常々思っておりました。なんとか私も努力をしたいと思います。よろしくお願いいたします。
それでは早速ではございますが、議事進行をさせていただきたいと存じます。ここで皆様に議事規則に則って1件おはかりしたいと思います。と申しますのは、委員長が不在の場合に、本審議会を円滑に運営するため、委員長代理を置かせていただきたいと思います。私は関西にいるので、場合によっては委員長の代わりをお願いすることもあるかと思います。委員長代理につきましては、この審議会の経験が深い名和委員にお願いしたらどうかと思います。ご了承いただけますでしょうか。
委員一同: 異議無し。
委員長: それでは最初に、先程ご紹介のあった新しい委員の方々に、一言ずつお言葉を頂戴できれば幸いです。よろしくお願いいたします。
(各委員自己紹介)
委員長: それでは次に、「報告」に移りたいと思います。
まず、「平成15年度における科学技術関係情報整備に係る取り組み」を、その次に「『国立国会図書館電子図書館中期計画2004』について」を国立国会図書館から報告いたします。報告のあと、これらについて、まとめてご質問やご意見があれば、頂戴したいと思います。
その後休憩をはさんで、懇談に移りたいと存じます。
 
5 報告
(1)平成15年度における科学技術関係情報整備に係る取り組み
主題情報部長: (報告略。資料1~6参照。)
前回の審議会で行いました基本計画の総括とご審議を踏まえて、継続課題について「科学技術関係情報整備計画」をまとめさせていただきました。
(報告略。資料7参照。)
もう1つの新しい電子図書館については、先日「電子図書館中期計画2004」を策定しましたので、次に担当者から報告させていただきたいと思います。
デジタル情報の環境下での情報の収集、利用、蓄積、保存の問題は関連しておりまして、科学技術情報資料の整備に特化したとは言えませんが、当館全体の枠組みと連携しながら取り組んでいきたいと考えております。
委員長: ありがとうございます。それでは次の電子図書館中期計画の報告をお願いいたします。
(2)「国立国会図書館電子図書館中期計画2004」について
電子情報企画室長(以下、室長): (報告略。資料8参照。)
委員長: ありがとうございます。ただいまの報告について、ご質問なりご意見をどうぞ。
(3)質疑
委員長: 報告に出てきた加速化パッケージとは何ですか?
室長: 「e-Japan重点計画」を進めていくうえで、なるべく効率的に早く進めていこうという計画があります。その計画のことをそう呼んでいます。
委員長: 「日本のデジタル・アーカイブ・ポータル」は非常に魅力的な計画ですが、デジタルコンテンツはどの範囲を考えているのですか。
室長: 具体的なことはこれからです。デジタル情報自体が領域が区切られて提供されていないので、「日本の」という言い方ができるのか、利用者にとっては何が一番いいのか、ということは当館で決められないと考えています。平成16年度にポータルについて検討していきたいと考えています。
末松委員: デジタル情報を長期に渡って保存とすると、周辺の機器が変わっていくと思いますが、そのあたりの見通しや計画はどうなっているのですか?
室長: デジタル情報の保存についてはこれから本格的に調査していきたいと思っています。昨年からデジタル情報の保存の研究を行っていて、今年度は当館で所蔵しているパッケージ系の電子情報が最新の機器で読めるか、といった実験もしています。事例を研究しながら考えていきたい、という段階です。
沖村委員: 国立国会図書館が「日本のデジタル・アーカイブ・ポータル」の構築で具体的にはどのような役割を果たされるのでしょうか?技術開発なのか、窓口的なものなのか、それとも統一した運営をするための協議会を設けるのか。
室長: 既にNIIでは学術情報ポータルがあります。当館でも館内で収集したデジタル・アーカイブに対して、一元的に一気に一次情報にたどりつく仕組みを考えています。政府刊行物や学術情報等をそれぞれの領域で案内するのであればリンクで良いのですが、利用者としては欲しい情報がすぐに手に入ることが必要になっているのではないかと考えられます。やり方はいろいろあると思いますが、デジタル・アーカイブ・ポータルの一番上にインデックスを作って検索をかけて情報へとぶ、あるいはそれぞれのポータルにインデックスを使って検索をするなど、直接ターゲットへとんでいく、とイメージで考えています。
土屋委員: OPACや雑誌記事索引が提供されて紙の資料への誘導をやっている一方で、デジタルのナビゲーション支援を行うということですと、利用者としては両者の区別なしに利用したいと思います、紙とデジタルの統合したビジョンはお持ちなのでしょうか?
室長: 現在はまだですが、紙と電子媒体のナビゲーションにおける統合は考えていく必要があると考えています。「日本のデジタル・アーカイブ・ポータル」では統合して提供するイメージです。
土屋委員: 統合は具体的にはいつ頃を考えているのでしょうか?
室長: 電子図書館中期計画は5年を目途としていますが、「日本のデジタル・アーカイブ・ポータル」は計画の一番最後、5年程度先かと思います。
土屋委員: 情報を組織するだけでも大変なことだと思いますが、現在は組織だったポータルではなくGOOGLEなど、どちらかというと無定形だが大量のものに全文検索をかける方が便利だという生活をしている人も多いのではないでしょうか。旧来の分類に近いナビゲーションは、どれくらい有用なものであり続けるか、というような評価はされていますか?
室長: 評価はこれからしていきたいと思っています。国としてやるべきナビゲーションがあるのならば当館でやっていくべき、と考えています。
土屋委員: やるべきかどうかは誰が判断するのでしょうか?
室長: ポータルに関しては館内でも論議があるところです。必要だということでできるものと、提示されてみて便利だとなるものがありますが、ポータルは後者の方かと思います。
やるべきことについては協力関係を密にしないといけないので、見極めていきたいと思います。
朝倉委員: 医療界では、今EBM(Evidence based Medicine)が言われていて、専門家と一般人との間での用語の違いが問題となっています。デジタルでの検索などの場合、その「言葉」がぴったり合わないとうまくひけないということがあり、結果とし幅広い用語を使わなくてはならない、ということがあります。その辺を十分に理解しながら進めていって欲しいと思います。
室長: 情報に到達するための手段というところの課題と認識しております。
土屋委員: 政府刊行物ポータルは各府省のアーカイブはどのくらいの範囲を想定しているのでしょうか?
室長: 政府刊行物ポータルは一次情報を集めておらず、ナビゲートしているだけです。その情報を使うのかどうかも協議が必要かと思います。当館としては、政府刊行物については当館の中にアーカイブすることを目指しています。
倉田委員: 国会図書館でのデジタル・アーカイブは、今行っている「WARP」のような一般的選択的なウェブ・アーカイブと、明治期刊行図書を提供する「近代デジタルライブラリー」のようなものを拡大していくことが中心なのでしょうか?
室長: いいえ。電子図書館中期計画はオンライン・デポジットに性格が現れていると考えています。ウェブ・アーカイブについては、今までの「WARP」を拡張していく方向ですが、ウェブ・アーカイブで集めるのは浅いところのウェブだけです。データベースは集められません。有用な情報は深層にもあります。これらを集めるのは、別の方法を使わなくてはいけません。そのためにオンライン・デポジット(電子納本)を考えています。一冊一冊書籍として集めるのと同じようにターゲットを絞って集める、というイメージです。これについては長期保存の技術も必要だと思っています。
倉田委員: 電子雑誌の論文の原文までも見られる、というイメージでしょうか?
室長: そうです。オンラインでどこからでも見られるような提供の仕方ができるかは、また別の問題ですが。
倉田委員: NIIで実施している学術情報ポータル、学会誌などの学術雑誌を公開するという事業との関係はどうなるのでしょうか?
室長: 学術情報ポータルの情報そのものをアーカイブのポータルの中に入れるかは、今後の協力関係の中で考えていくことになると思います。
委員長: 今のお話は後半にお願いしたいと思います。後半は沖村委員と土屋委員が資料を用意してくださっていますので、大いに議論をしていただきたいと思います。
(4)休憩
(末松委員退席)
 
6 懇談
委員長: それでは後半に入らさせていただきたいと存じます。懇談ということで、色々ご意見いただきたいと思っておりますが、沖村委員と土屋委員に資料をご用意いただいているようですのでお願いしたいと思います。まずは沖村委員、お願いいたします。
沖村委員: お時間をいただきありがとうございます。私どもは以前「日本科学技術情報センター」(JICST)と言いまして国立国会図書館には長年にわたってご指導いただきありがとうございます。今日は情報を中心に、ということでございますので、ご用意した「独立行政法人科学技術振興機構の事業 特に、情報流通促進事業について」を用いてご説明させていただきます。
(報告略。資料9参照。)
委員長: どうもありがとうございます。つづいて土屋委員にお話を伺い、それから議論をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
土屋委員: もうご存知のことも多いかと思いますが、これからの議論の共通の基盤として情報提供をさせていただくという観点でお話させていただきます。学術情報がどういう状況かご説明するということなのですが、大学の図書館が扱っている情報ということでご理解いただきたいと思います。
(報告略。資料10参照。)
委員長: 2つの報告と前半の国立国会図書館の報告も含めて自由にご意見をお願いします。
野依委員: 一つは10兆円の学術雑誌市場の中で、日本はどのくらいでしょうか?自然科学分野では日本の論文数のシェアは12%で、そのうち80%は海外のメディアを通じて流出しています。12%のシェアがあるとすれば、本来は日本のシェアが1.2兆なければならないがとてもそうはなっていないと思います。
第二点は、商業誌を許さないという動きが欧米で広がっていますね。ベルリン宣言があり、アメリカでもSabo法案が提出されるということがあります。日本はどう考えておられるのか。J-SPARCが一つの考えかと思いますが。
土屋委員: 10兆円の規模ですが、学術出版全体なので、かなり経営とか法律を含んで10兆円ということです。その中で科学技術がどの程度どのくらいかは微妙です。エルゼビアでは法律の売上が大きいので評価するのが難しいのですが、科学技術は半分くらいはいっているのではと考えられます。日本の大学が外国に払っているお金は300億円弱になります。JSTが払っているもの、国会図書館が9億、それらを全部足したお金です。
マーケットの中で日本の出版事業に対する経費の回収として日本に入ってくるお金は、計算はしていませんが、殆どないと言われています。具体的な例としては外国に対して予約購読を行っている出版事業は学会ベースでも少ない、したがって売れても数十部だそうです。10兆円の中のプレイヤーとしては、一方的に支払側に回っているということです。
野依委員: 3,000億の競争的資金を使って、全部を巨大な国際マーケットの形成に寄与しているということでしょうか。
土屋委員: 雑誌の費用として払っているものだけではなく、外国の学会誌の投稿費用や研究費用などを含めると海外に出ているお金はもっと多いと思います。
野依委員: 学協会である場合はある程度許せるが、商業誌に全部吸取られているのは問題だろうと私は思います。
名和委員: 小さな話ですが、学術情報の著作権管理を行っている団体では、日本からアメリカに渡す分とその反対と、一桁違います。最近始めた事業でまだ正確な数字ではありませんが、年間渡すのは4億円強くらいで、受け取るのは10分の1以下です。これには日本にも事情がありまして、コピーライトに関する意識が低いです。学術団体は強いのですが、非学術系の雑誌、週刊誌系や小説の著作権料は国内でページ当たり2円です。そのことが関係して日本の学術雑誌の著作権料を低くしています。
朝倉委員: 医学関係で発言させてください。日本の雑誌に載せてもインパクトファクターがつきません。大学で昇進するときにインパクトファクターが基準になりますので、MEDLINEに収録される外国の雑誌に投稿せざるを得ません。日本の学会で英語の雑誌を出しても、MEDLINEに採択されませんのでインパクトファクターがつきません。日本の主な医学関係の英文誌は、A社とかB社の外国系の出版社に出版をお願いしますと、出版者に力があって1~2年で採択されます。この理由でどうしても医学関係の論文は欧米に流れます。
三浦: 両先生がおっしゃっていましたが、発信力のある英文雑誌がない、市場的にも損しているし、研究成果の評価においても損をしているというご心配は野依委員や末松委員やたくさんの先生が危惧なさっていまして、その流れが急速に広がっています。明日、学術会議の会場をお借りして日本発の学術雑誌も評価すべきという、シンポジウムが行われます。関係者の方々にご参加いただければと思います。その席では、国がもっと応援をして雑誌を育てて、あるいは外国雑誌に対抗できるように、というご意見が出るだろうと承知いたしております。
土屋委員: 野依委員のご質問の中に言及されていたベルリン宣言を含めて簡単に現状をご紹介したいと思います。海外の話なので、報告の中には含めませんでしたが、ここ2~3年の動きとして、オープンアクセス運動というのが出ています。科学者の情報流通を科学者のもとにコントロールを取り戻すという動きの一つで、オープンパブリッシングとセルフアーカイビングの2つの流派があります。
オープンパブリッシングは、無料でアクセスできる学術雑誌を作ろうという運動で、一番有名なのはPublic Library of Scienceという最近Biologyの分野で始まりました。ジョージソロスの財団が約9億円の立ち上げ資金を出して、1,500ドルの投稿料で維持しようという試みです。アメリカの団体が行ったアンケートによると、投稿料として出せるのは500ドルまで、という人が90%だったので、投稿料の1,500ドルが妥当かどうかは今後見ていく必要があります。
もう一つのセルフアーカイビングは、一定期間過ぎた情報については、自分のホームページで公開していこうという運動です。強い商業出版社は、初号からのデジタリゼーションを実施していますが、著者自身が情報を提供すれば、商業出版社はカレントなものだけを流通させるようになっていくのではないかという考えで行われています。外部資金をもらって大学ごとや研究機関ごとに実施するという形で行われています。この運動には名和委員がご指摘になりましたような権利問題が生じてくることになります。多くの場合投稿して採択された状態で、権利は譲渡契約を行っています。アメリカでは、事前の許諾か結果としてフェアユースの観点から、自身のホームページに載せて良いとなっていますが、機関のホームページに掲載する場合の権利関係は目下交渉中、という状況です。
委員長: 予算がどんどん減っていくという中で、国立国会図書館の科学技術資料に関しては、どういう考え方で将来考えていくべきか。全体的な問題はたくさんありますが、そういう観点で、積極的なご意見はいかがでしょうか。
名和委員: 今まで学術情報中心で議論がなされており、大学の図書館であればそうだと思うのですが、国立国会図書館では、国会と研究者と市民の三者を利用者と考えておられるようです。学術情報は専門家だけのものではなく、市民あるいはNPOが利用できるようにならなくてはならないと思います。国立国会図書館からの報告によれば、個人ユーザーが大変伸びているというのが、大変心強い試みではないかと思います。今までできなかったことが、電子化によって環境ができてきたということではないでしょうか。
また、学術情報の流通上の1つの課題が著作権かと思います。著作権の観点から言えば、学術情報はマイナーなものです。著作権関係の国際会議では、日本の代表としては文学関係の団体が参加しており、学術関係の団体はその下についていることになります。国際会議に行っても文学関係の団体では国内のことしか考えませんので、学術関係はワーキンググループに入れないという状況があります。国立国会図書館が国民のためにと言う視点でご発言になれば、この状況についても議論が進むのではと思います。
土屋委員: 大学図書館でのILLは120万件弱で、その中の7~8割が外国の科学技術論文と位置付けられます。国立国会図書館からの報告を拝見して、件数としては問題になりませんが、郵送複写全体の占める割合は外国の科学技術系は20%程度ということで、大学と国立国会図書館では全然違うというのが重要なポイントかと思います。科学技術の和雑誌の複写依頼がこんなにあるのは興味深いと思います。
委員長: 難しい議論があるとは思うのですが、国立国会図書館としてどのような観点としてやるべきか、議論を深めていく必要があります。図書館側からご意見があればお願いします。
主題情報部長: 先生方から様々な観点からの指摘を頂きました。国会図書館の役割を絞り込んで、今後の科学技術流通あるいは学術情報の流通をどのように考えていくのか、審議会として、継続的に調査研究あるいは審議することを考えていただけないでしょうか。
 
7 今後の審議の進め方について
委員長: 私もそう思います。できましたら作業部会を作って、問題点を集中的に議論して報告書をまとめていただき、それをもとに審議会で議論するというのはどうかと思いますが。
委員一同: 異議なし。
委員長: では、作業部会を作って、これからの国立国会図書館での科学技術関係情報整備をどうするかを考えていきたいと思います。土屋委員、名和委員、倉田委員に委員になっていただいて、集中的に議論していただくのはどうでしょうか?引き受けていただけますか?
土屋委員、名和委員、倉田委員: 承知しました。
委員長: ではよろしくお願いしたいと思います。次の会議はいつ頃ですか?
主題情報部長: 国全体の科学技術政策の計画を考えますと従来のような年に1度開催では遅いので、秋に次の会議を開く、ということでお願いしたいと思います。作業部会の議論はそれに間に合わせるようお願いしたいと思います。
委員長: 第三期科学技術基本計画に少しでも反映されるようなタイミングは大切と思いますので、秋に会議を開くとして、作業部会では夏中に議論していただくペースで進めていただけると有効かと思います。
 
8 その他
委員長: その他について委員の方からありますか?
主題情報部長: 事務的で恐縮ですが、議事規則の中に作業部会の設置等についても明文化していく予定です。早急に検討して報告したいと思います。
塚原委員: 国立大学の法人化が進みますと、英国の例を見ましても大学間の協力関係が悪くなることがあります。今まで以上に協力関係を良くするようお願いしたいと思います。
土屋委員: 何ら責任のある立場ではありませんが、多少良い情報としては、国立大学については、国公立を越えて私立も協力関係を考えています。
委員長: 館長から何かありますか。
 
9 閉会
館長: 今日は、熱心な活発な審議をありがとうございました。当館の粋を越えているところもありますが、大いに勉強させていただきます。作業部会とも連携を良くして、国の基本計画も見据えつつ、科学技術関係の資料整備に努めて参りたいと思います。本日はありがとうございました。
委員長: それでは終会といたします。

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