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第2回科学技術情報整備審議会議事録

日時:
平成24年8月29日(水)午後3時から午後5時5分まで
場所:
国立国会図書館 東京本館総務課第一会議室
出席者:
科学技術情報整備審議会委員 9名
有川節夫委員長、倉田敬子委員長代理、坂内正夫委員、塚原修一委員、土屋俊委員、時実象一委員、中村利雄委員、中村道治委員、森本浩一委員
(喜連川優委員、鈴木篤之委員、戸山芳昭委員は欠席。)
館側出席者 13名
館長、調査及び立法考査局長、収集書誌部長、利用者サービス部長、電子情報部長、関西館長、国際子ども図書館長、総務部企画課長、同部会計課長、収集書誌部主任司書、利用者サービス部副部長、電子情報部副部長、利用者サービス部科学技術・経済課長
会議次第:
1. 開会
2. 館長挨拶
3. 新委員紹介
4. 幹事異動等報告
5. 報告及び懇談
 (1)第三期科学技術情報整備基本計画の進捗状況及び今後の取組について
 (2)東日本大震災アーカイブの取組について
 (3)懇談
6. 閉会
配付資料:
第2回科学技術情報整備審議会 次第(PDF: 140KB)
(資料1)科学技術情報整備審議会委員及び幹事名簿(平成24年8月29日現在)(PDF: 192KB)
(資料2)第三期科学技術情報整備基本計画の進捗状況及び今後の取組について(PDF: 238KB)
(資料3)東日本大震災アーカイブの取組について(PDF: 472KB)
(参考資料)
科学技術情報整備審議会規則(PDF: 195KB)
科学技術情報整備審議会議事規則(PDF: 187KB)
第三期科学技術情報整備基本計画(PDF: 229KB)
(机上配付:参考資料)
東日本大震災アーカイブ パンフレット(PDF: 2.41MB)
・『学術情報の国際発信・流通力強化に向けた基盤整備の充実について』(文部科学省ホームページへのリンク)(平成24年7月 文部科学省 科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会 学術情報基盤作業部会)
『ビッグデータ時代におけるアカデミアの挑戦~アカデミッククラウドに関する検討会 提言~』(文部科学省ホームページへのリンク)(PDF: 634KB)(平成24年7月4日 文部科学省 アカデミッククラウドに関する検討会)

議事録:
1.開会
有川委員長: 只今から第2回科学技術情報整備審議会を開催します。はじめに、事務局相原課長からお知らせがあります。
相原
科学技術・
経済課長:
本日はお忙しい中、御出席くださいましてありがとうございます。本日、喜連川委員、鈴木委員、戸山委員は所用のため御欠席です。
机上に資料を配付していますが、今回の会議資料の他に、当館の東日本大震災のパンフレットと文部科学省の審議会の報告資料、提言の資料も配付しています。これらは後ほど懇談の際に参考に御覧になることもあるかと思いまして用意しています。
有川委員長: それでは開会にあたりまして、大滝館長から挨拶があります。
 
2.館長挨拶
大滝館長: 去る4月1日付で、第15代館長を拝命しました。これまでの歴代館長の路線を一歩でも前進できるように取り組んで参りたいと思いますので、宜しく御指導のほどお願いします。
本日は、有川委員長はじめ、委員の皆様には、大変に御多忙のところ、第2回科学技術情報整備審議会に御出席くださり、誠にありがとうございます。当館では、昨年1月に頂戴しました『国立国会図書館における今後の科学技術情報整備の基本方針に関する提言』を踏まえまして、直後の昨年3月に「第三期科学技術情報整備基本計画」(以下、三期計画)を策定し、これに基づき、提言内容の具体化に向けて、昨年度から鋭意取り組んでいるところです。
また、三期計画の策定後に、国のレベルで「東日本大震災からの復興の基本方針」(復興庁ホームページへのリンク)(PDF: 344KB)が決定され、国の「第4期科学技術基本計画」(内閣府ホームページへのリンク)において大震災への対応が盛り込まれました。当館においても、こうした社会の動きに迅速に対応し、三期計画に大震災への取組を追加し、東日本大震災アーカイブを構築する事業として、大震災関連の貴重な記録を分散収集・保存し、アクセスを可能とすることを通じて、直面する復興の取組に生かすと同時に、将来にこれらの記録を伝え、活用してもらうため、重点的に取り組むこととしています。
現在、この三期計画は、5か年計画の第1年度を終えて、第2年度目に入っているところですが、昨年度は、基幹システムのリプレースと利用者サービスのリニューアル、デジタル化資料の公開など、この数年来、前任の長尾館長のもとで館を挙げて取り組んだ成果が目に見える形になりました。今年度は、今国会で、民間発信の無償のオンライン資料を制度収集できるよう、すでに国立国会図書館法が改正されました。これらを通じ、情報化時代における当館の使命を果たすという、新たな、着実な一歩を踏み出していると考えています。
本日は、特に現在取り組んでいる三期計画の具体化に向けた諸事業及び東日本大震災アーカイブの実施状況と今後の取組の予定を中心にしまして、報告申し上げ、みなさまの御意見・御指摘を頂戴したいと思っています。
委員の皆様から、率直な御意見をいただき、活発な御審議をお願いします。
 
3.新委員紹介
有川委員長: それでは、新委員の紹介を事務局からお願いします。
相原
科学技術・
経済課長:
新たに委員に御就任された先生を紹介します。文部科学省大臣官房審議官の交代により、戸渡速志委員が退任され、森本浩一先生が御就任されています。
有川委員長: 森本委員、一言お言葉を頂戴したいと思います。
森本委員: 文部科学省の森本と申します。今、研究振興局を担当しておりますが、ここはスーパーコンピュータから、SINET、大学図書館、大学の情報をどう扱うか、そして最近流行のビッグデータといったことを担当しています。今後とも、色々と連携を深めさせていただければと思っておりますので、どうぞ宜しくお願いします。
 
4.幹事異動報告
有川委員長: それでは、幹事異動等の報告をお願いします。
相原
科学技術・
経済課長:
審議会の活動を補佐するために、当館の部局長を幹事に任命しています。当館内の人事異動に伴いまして、幹事に異動がありましたので報告します。山口調査及び立法考査局長、福士利用者サービス部長、石川関西館長、坂田国際子ども図書館長、以上が前回の審議会以降に新たに幹事に任命されました。本日は、幹事のほかに、大滝館長、審議会事務局の職員が出席しております。どうぞ宜しくお願いします。
 
5.報告及び懇談
有川委員長: それでは報告及び懇談に移ります。
最初に事務局から報告を行い、その後で報告に対する質問をするという形にしたいと思います。本日用意されている二つの報告が終わりましたら、懇談をする予定です。よろしくお願いします。
まず、報告(1)について、事務局から説明をお願いします。
 
(1)第三期科学技術情報整備基本計画の進捗状況と今後の取組について
相原
科学技術・
経済課長:
(資料2に沿って説明)
有川委員長: ありがとうございました。それでは質問等ありましたら受けたいと思います。何かありますか。
土屋委員: (資料2)6ページで、現在のところデジタル化実施済が全体の3分の1から5分の1ということですが、将来計画として、これは結局最終的に全部やるという方向性なのですか。それとも2分の1が達成できればそれでいいなど、将来展望はどの程度のお見積りですか。この前の127億円がなければ100年かかるという話でしたから、100年、200年かかっても仕方がないと思いますが。
大滝館長: 当館のデジタル化は、平成12年度から現在までに153億円くらいを投入しています。そのうち補正予算は127億円を占めており、その結果、所蔵資料のデジタル化済み割合が4分の1という達成状況になったわけですが、今年度のデジタル化の予算額は0です。先日の参議院の文教科学委員会の質疑でも、ぜひデジタル化を進めるようにという応援をいただきましたが、現実には予算的な手当てがついていません。御質問の、どの位が当面の目標かについては、まず、来年度予算で毎年度着実にデジタル化する経費として、億単位まではいかないのですが、千万単位で要求していきますので、経常的なデジタル化経費を獲得する中で、当面の目標を詰めていきたいと思っています。
また、東日本大震災関連の補正予算要求におきまして、コンテンツのデジタル化経費が予算化されなかったという経緯もありましたが、大震災関係の記録をデジタル化することは、国全体の緊急な取組事項でもありますので、平成25年度要求、それからこれからあれば補正予算要求の中で糸口を作って、その上で全体計画をお示しできるようにしたいと思っています。
有川委員長: 非常に大事なことだと思います。相当長期にわたると思いますが、全体のロードマップ的なものを持つことは大事だと思います。
博士論文については、そのデジタル化について国立国会図書館(以下、NDL)は明確な戦略をお持ちと思いますが、そもそも博士論文の条件としては公開しなければいけないことになっています。昔のものについて著作権処理をして著者の許諾を得るのは相当大変で、時間と経費をかける割にはあまり進まないのではないかと思います。そこで博士論文の条件を規則面で整備して、ある時期から先は全部自動的に電子的に収集し、ネット上に公開して、アクセスできるといった仕組みが作れるとよいと思いますが、そういったことはいかがでしょうか。
土屋委員: それはNDLではなくて、文部科学省、大学の問題になりませんか。
有川委員長: そうですね。ですから、大学の学位の授与規則といったものを変えてしまえばよいと思います。しかし、以前に少し議論したことがありますが、自然科学系は問題ないのですが、人文・社会科学系は、部数が余り多くなくどこかに印刷物で置かれている分にはよくても、ネット上に置くとプライバシーの問題など、微妙な問題があったりします。メディアに依存するのはおかしいのですが、そういったまだ解決されていない問題もあり、それについては、時々指摘されます。早急に関係者はこの問題に決着をつけなければならないと思います。
補正で多額の予算がついた時にデジタル化を進めるという機会を待つことも大事でしょうが、一方で、デジタル化の技術を伝承していく必要があります。私ども九州大学で小規模ですが、150万件位の目録データの遡及入力事業を5年がかりでやりました。なぜ5年かかったかと言いますと、一気にやるには人がいないため、人を確保しながら進める必要があったからです。同様の作業は、その後もある程度の分量を毎年進めていて、それをする人を確保しています。それから、技術面では、例えば石川正俊先生(東京大学工学部)が高速で資料を動かしながらデジタル化する技術を開発するなど、随分進んできており、使えそうなものもあります。そういった研究者の開発した最先端の技術を採用して、同時に研究者にも関心を持ってもらい、相乗作用で進めていくというやり方もあると思います。つまり、今年度は0とかではなく、一定量のデジタル化作業は日常的なNDLの業務として位置付けるという状況を作っていくことが大事だと思います。
佐藤
電子情報部
副部長:
今年度、図書の大型本についてのデジタル化を行う予定で、現在調達準備を進めています。可能な範囲でデジタル化作業は継続していきたいと考えています。
大滝館長: 学位論文のデジタル化については、平成12年度に当時の千葉大学の図書館長だった土屋委員に、当時NDLの収集部長の立場で相談に伺ったことがありますが、現在、このような形で進捗はしておりますが、やはり問題点があると思います。委員長御指摘のとおり、継続的に進めたいという思いは我々もありますし、先ほど申し上げたようにあらゆる財源を捻出して続けたい。しかしここまで進んだのも、文部科学行政、大学図書館の御理解と御協力によるものです。どのように当館が分担し、新しいデジタル形式の論文をどのように組織的に生成の段階から公開の段階まで繋げるかは、これから大学図書館界と御相談しながら進めることになると思います。
今までのデジタル化したものの問題点は、思った以上に著作者、学位請求者の許諾が得られずに公開できないことです。具体的には担当者から後で数字を言いますが、10%以内の許諾しか得られないことが実態としてあります。先程の委員長のお話のように、学位論文は公開義務がある一方で、当館は学位論文を所蔵していますので、それらは、出来る限り高度情報通信社会の基盤を利用して、インターネットで公開できるよう整備したいのですが、現在第一線で御活躍の方で、御自分の学位論文のインターネット提供について許諾をしないという現実も一方であります。ですので、公開に向けての御理解が進むよう世論を盛り上げていただきたいとお願いしながら、我々も努力をしていきたいと思っております。
佐藤
電子情報部
副部長:
数字を報告します。学位論文のデジタル化対象資料は、全体で14万909件ありました。そのうち、公開の許諾を得られたものは1万4,421件ということで、約1割程度にとどまっています。
有川委員長: 学位論文のデジタル化に関する報告書を拝見すると、実際に14万人の方に許諾をお願いできたわけではなくて、確か6万強位の人しか同定できなかったということではなかったですか。
佐藤
電子情報部
副部長:
5万7,900件です。
土屋委員: 許諾を依頼する前の段階で全く分からなくなってしまっているという状況だったと思います。お願いしたいのは、そういう問題に関してどうなっているかが非常によく分かる報告書なのですが、インターネット上で見つからない。14万あるのに1万幾らしか公開できないという結果については、日本の実態を知るのに非常によいデータだと思うので、DRMを付けてもいいですから、ぜひ利用可能にしてください。
坂内委員: それはどういう理由で許諾しないことが多いのでしょうか。自信がないとか、誤りがあるとか。
佐藤
電子情報部
副部長:
許諾しない例としては、共同で研究していて、本人がよくても他の方の許諾まで得られないケースです。
土屋委員: 若干解説しますと、医学系の学位論文に多く、実際に公開した論文をそのまま学位論文として使っているケースです。
坂内委員: ですが、それは、プライマリーな権利をみな刊行してOKとして出しているはずではないのですか。
土屋委員: 実際に許諾にうかがうと、かなりの方がそうおっしゃるだけではなくて、NDL側の判断としても、全員の許諾がないとまずいだろうと考えているわけです。生の公開論文がそのままコピーされているケースもあり、それはまずかろう、そんなので学位を出しているのかという話にしたくないという判断があったというケースも、別の報告書の件ですが聞いています。
有川委員長: 過去のものをデジタル化しようとすると、非常に大変な思いをして全然進みません。どこかであきらめて、これから先のものは、あるいは、先ほど人文・社会科学系で微妙な問題があると言いましたが、コレクションに関するデフィニションをはっきりさせて、ここは全部あるのだ、という戦略をとるのが賢いのではないかと思っています。デジタル化しようとすると、必ず許諾の問題があってなかなか進んでいかない。全体の何%か、ということを気にしていても、デジタル化資料の割合は増えないと思います。学位論文に関していいますと、学位をとってしまったのだから自分としては何も困らない、なるべくそっとしておいてほしい、といったことも多分あるのだと思います。それをどうしても、と言って考えを変えてもらうのは相当難しいので、あるときから先の未来に関しては、自動的に出来ていくというようにする、という考え方がよいと思います。
不確かかもしれませんが、私が若いころに、図書目録カードを手動で、タイプライターで作っていて、そのうちの一つはNDLに納めるという文化が大学図書館にもあったと思います。これはヒントになるかと思います。一方で、目録データについては、国立情報学研究所(以下、NII)を中心にして、大学が国公私問わず、協同で目録を作り上げていく仕組みがあります。いま、2億くらいになっているのでしょうか。
坂内委員: 1億2千万くらいです。
有川委員長: それは、みなで協力して作り上げています。そのようなことがデジタル化に関しても考えられるのではないでしょうか。参加する喜びみたいなものをうまく引き出していって、結果としてかなりの部分ができてしまうという方法もあるのではないでしょうか。NDLにしかないものもあるが、幾つかの大学にあるものもある。その大学でデジタル化しているものがあれば、それをお互いに使うといった文化を作っていく方法もあるように思います。
大滝館長: 示唆に富む御指摘をいただきました。新しいところについては、各大学における機関リポジトリの動きの中で、大学における学術生産活動を学内で一般に公開するという各大学の取組も進んでいますし、NIIにおいても全国的な施策を進められています。そういったところと連携しながら、当館でもNDLサーチ等の、関連機関を横断的に検索できる仕組みの基礎もできていますので、委員長からの御指摘のあった点もあわせて、具体的にこれまでの大学図書館界との連携を一層進められるよう取り組んでいきたいと思います。
土屋委員: 実現しそうにない話かもしれませんが、一つだけ言わせてください。今の時代にどう考えても電子化率が低いように思います。公開に関して著作権の問題が出てくるのは当たり前で、Googleも2,000万近いタイトルの電子化をやって、ほとんどが使える状態になっていないという状況です。どうせ使えないのであれば、保存のための電子化ということで、Googleとでも組んでいいので、電子化だけでもした方がよい。使えないのだから、国民として不利益はないので、むしろ電子化していることの方が安全でよいと思います。国の予算や大学との協同でやれるのはたかがしれています。いっそのこと、そういう民間とやるのはどうか。実際にヨーロッパの国立図書館もそういう方向になびきつつある。そういったことも視野に入れたらよいと思います。Googleがだめでも、他にどこか乗るところもあるでしょうから。
中村利雄委員: 質問ですが、デジタル化実施割合は同じ様な割合になっていますが、何か優先順位をつけるとか、例えば、博士論文の中でも学会の論文は優先的にやるとかあるのでしょうか。
また、学会等と組んで、デジタル化して公開することの了解を事前に発表する人に学会にとっておいてもらうなど、最初から仕組みを組めばよいのではないでしょうか。古いものはあまり役に立たないかもしれませんのでゆっくりデジタル化をやればよいでしょうが、新しいものについては、自動的に公開できる仕組みにしていく、例えば、役所のいろんな刊行物や私どもの会議録などはデジタル化して報告書につけています。そういったことを予め、主要なところにお願いしておく方策はとれないのでしょうか。NDLならお願いできるのではないでしょうか。
佐藤
電子情報部
副部長:
博士論文については、文部科学省の学位授与規則をどうするかという話と大きく関わってくると思います。その辺りは、相談する場が設けられればうれしく思います。
大滝館長: いまの御質問で、優先順位については、予算に限りがあるためつけなければなりません。全体として古いところを対象に、1968年までに刊行した和図書を悉皆的に対象にしているのが今までの進め方です。今後は、御指摘くださったように、継続的な経費を確保すること、また、土屋委員からの、国だけに頼る時代ではない、あらゆるチームの中で資金獲得を目指すべきだという御指摘も受けながら、あらゆる財源獲得に取り組んでいくこととなりますが、その上で継続的に進めていきたいと思います。
最新の学術情報、例えば大学で生成している、学術研究活動の中から出てくる情報については、比較的、機関リポジトリの形で組織化して提供されていると思いますので、そういった状況を考えながら、当館として取り組む優先順位を決めていくことになるかと思います。例えば、戦前の和雑誌は、目録類も整備されていませんし、館内の閲覧においても、ボロボロになったのでかつてはゼロックス複写も出来なかったのですが、いまはデジタル形態からの打ち出しもできるといったように、利便性が向上している部分もあります。また、デジタル化に際してデータを作ってそれを検索できるようになりまして、今までにない検索結果を利用者の方が使えるようになるなど、今までの成果がこれまでにないところで出てきていますので、今後はそれらを進展させるような形で取り組みたいと思っています。
時実委員: (資料3)15ページにジャパンリンクセンターについて書いてありますが、NDLの役割はどの辺にあるのか、お聞かせください。
佐藤
電子情報部
副部長:
ジャパンリンクセンターは、科学技術振興機構(以下、JST)が運営委員会を開いており、私は運営委員として参加しています。細かいところを取りきめて実施の段階に移るのはもう少し先のことと認識していますが、当館の持ち味としては、狭い意味での学術文献でいいますと、先ほどから話題に出ている博士論文が顕著なものですが、それにDOIを付与することについて関与していきたいと思っています。それ以外の、広い意味での学術文献についても、当館でデジタル化したものの流通の利便性を図るために、DOIを利用していきたい。コンテンツそのものをインターネットで流すことまでできなくても、所在情報が分かる形で、広くDOIを利用するといったことができるのではないかと考えています。
時実委員: DOIのコンセプトとしては、出版者が付与するということで、デジタル化した人が付与するのは、必ずしも趣旨と合っていない気がします。そういうことをすると、例えば、AをNDLでデジタル化する、あるいは別の図書館でもAをデジタル化して、それぞれDOIをつけると二つできてしまうのは、DOIの趣旨に合わないのでは。
土屋委員: DOIはそれは全然OKです。違うものをデジタル化したら違うDOIでよい。DOIはそういう趣旨です。CrossRefとお間違いになっているのではないでしょうか。
時実委員: ですが、ジャパンリンクセンターは基本的にCrossRefと同じ様なコンセプトでやるのでしょう?
土屋委員: ジャパンリンクセンターはDOIをつけるだけです。その後どういうサービスをするかは、JSTのサービスがあるのか、NDLのサービスでやるのか、といった付加サービスの話であり、CrossRefレベルのサービスの話です。
時実委員: デジタル化したコンテンツがどういう形態であろうと、同じものであることを分かるようにする、というのが本来のコンセプトだと思いますが。
土屋委員: いえ、違います。もう一つよろしいですか。
有川委員長: どうぞ。
土屋委員: (資料3)23ページの電子ジャーナルの遠隔複写について、英国図書館(British Library)は権利料を支払っているわけですが、NDLはこれまでのサービスの続きということで、無許諾・無償でやっていると思うのですが、例えばJSTの文献複写サービスは40万件台になっていますが、かねてから、権利者から強い批判を受けていた部分がある。一部については、権利料を支払う処理をしている。他方、NDLは権利料無しでやっている。件数的にはJSTを追い抜かんばかりの勢いになっていて、30万件位にはいっているかと思いますが。
大滝館長: その数は、従来媒体のことではないですか。
土屋委員: 従来媒体のことについても文句はあるわけですが、つまり、権利料の問題は、そのままやっていけるとお考えなのか。
金箱
収集書誌
部長:
電子ジャーナルの遠隔複写については、購入時にそういう使用も含んだ契約をしている。当館側が権利侵害をしているわけではありません。
土屋委員: 印刷したものを送付することについては権利がある、ということだと思いますが、それでも、当然、次にはPDF送付の話がでてくるわけです。利用者の不便を顧みず、NDLはあまりやらないように思いますが。実際問題として、規模的には、遠隔複写は従来媒体も電子媒体も含めてJSTに匹敵したものとなっています。JSTは権利料を支払っているのに、NDLはあくまで権利料は支払わないというスタンスでいくのか、ということを聞きたい。逆に、電子化したものの利用に関しては、権利者側の意見を非常に強く受け入れて、非常に使いにくい形で提供しているように思います。権利者への対応の一貫性について、どういう方針をお持ちなのか。何が何でも絶対に権利料を支払わないのか、もしこちらで支払ってもう一つの方で譲歩が引き出せればよいのではないか、などその辺の方針はどうなっているのですか。
大滝館長: 幾つか論点が錯綜していますが、電子ジャーナルの遠隔複写については、紙媒体に打ち出して郵送で送ることは、電子ジャーナルの契約時に一定の条件設定をして、その範囲でできるという許諾の下に行われています。利用者の利便性から言えば、今後の方向性として、PDF送付という道も模索する必要もあるかもしれません。しかし当面は、電子ジャーナルについては、大学に所属されている方は入手の機会もあるでしょうが、一般的には入手できないものですので遠隔複写サービスでその必要を満たすという取組は続ける必要があります。従来型の遠隔複写については、関西館開館を機に以前より規模が大きくなったわけですが、著作権法を厳守するという立場です。著作権法の権利制限規定が何のためにあるかといえば、出版者、特に著作者の経済的利益を不当に犯さないということだと思いますが、一方で、現在までの遠隔複写サービスのレベルでは、著作者から大きな異論はないというのが実情です。このサービスを継続することについては国民、利用者の強い要望もあると考えていますので、当館としても続ける必要があると考えています。
また、デジタル化したものについての権利者との関係、権利者だけでなく、出版者など現在の著作権法に明記されていない周辺の権利関係に気を遣いすぎなのではないかと御指摘を受けたわけですが、その点については、著作隣接権のような形で、特にデジタル情報の流通については、出版者の権利を認めようという立法化への研究も現在進んでおり、次期国会で通過させようという動きがあります。そういう点では、デジタル化したものを社会的に流布することを探りながら、一方では、出版者・著作者との関係が一番難しい問題になっていますが、図書館界としても利用者からの強い求めがありますので、お互いの主張の中で、合理的な社会的ルールの形成ができないか、模索しています。私も就任以来、出版者の方にたくさんお会いする中で、そういう合意作りを図書館界からもお願いする必要があると感じており、現在取り組んでいるところです。
有川委員長: 非常に大事な議論をしているところですが、もう1件報告があります。その後に多少時間が確保できると思いますので、まだご意見等ありましたら、その時間帯にお願いします。
では、二つ目の、東日本大震災の取組について、説明をお願いします。
 
(2)東日本大震災アーカイブの取組について
佐藤
電子情報部
副部長:
(資料3に沿って説明)
有川委員長: それでは、ご質問等ありましたら挙手願います。
坂内委員: 震災から1年半経ちますが、こういう情報は散逸するので、スピードが大事ですが、うかがっていると、その切迫感が感じにくい。去年、当時の長尾館長にもお願いしましたが、どういう情報を個人も含めどこで集めたり利用したりしているか、呼びかけている政府系機関はどこまでできるのか、どういうところが今は欠けていてどこに協力を更にお願いしなければならないのかなど、ある種の全貌というか、設計図のようなものを、今までの経験を踏まえて、明らかにされると、協力する方もしやすいと思います。
それからアーカイブ全般についてですが、アーカイブは非常に縁の下の力持ちの話であり、現実問題として、私の周りでも震災関係の情報にはだんだん熱が冷めてきています。こういうアーカイブがどういうペースでどういった付加価値があるのかを明示しながら構築していくことが大事だと思います。例えば、先ほどの報告資料にありましたが、NDLは原子炉の設置許可申請書をきちんと所蔵している。NDLでなければ公的な形でこういうものが保存されなかったかもしれないことを示すという意味では、利用者に対し、まず、どんな形でも利用できますではなくて、提供側も付加価値をつけるような利用をイメージして、こういう所蔵資料と今構築しているアーカイブとが組み合わされると、どの時期にどんなことに役に立つのかといったことを示していくべきです。データベースを構築するところと利用するところは、本来は別々であるはずですが、構築する方も全てを収集するわけにはいかないので、利用支援というか、利用イメージを明確にして、アピールしていくのがよいと思います。先ほどの原子炉設置許可申請書は、今後も非常に社会的に重要な資料だと思いますし、収集することと、利用価値を提示すること又は募集することを一緒にできるとよいのではないでしょうか。
佐藤
電子情報部
副部長:
貴重な御指摘ありがとうございました。取り組んでいるとは言っていますが、具体的にどんなところに集中して進めているかを示せていないというのは、認識しております。確かに、どういったところに力点を置いて協力を呼び掛けているかについては、もう少し広報して、国民全体に知らせることも必要ですし、特に御協力くださっている類縁機関の皆様には、もう少し質の高い情報を提供して、御協力を依頼することが必要と考えています。こうしたことも、なるべく早く取り組みたいと思います。また、利用イメージについては、館長からもきちんと明示するよう指示を受けていますので、具体的な利用イメージをなるべく早くお示ししたいと思います。
時実委員: 二つ質問があります。一つは、協力機関の中で、国立公文書館及び地方の公文書館の位置付けがはっきり見えないことです。震災復興に絡む場面では、電子資料も含め、正式な文書だけでなく、メモのようなものも含めて、公文書をきちんと取っておくのが大事だと思うのですが、その辺はどうなっているのでしょうか。
もう一つは動画に関してですが、YouTubeがすごい量を持っているわけです。これは民間の会社、Googleですので、なかなか協力を依頼しづらいとは思うのですが、どうお考えでしょうか。
佐藤
電子情報部
副部長:
公文書館の状況について説明します。当然ながら国立公文書館ともお話はしているところです。ただ、今のところ具体的な連携の在り方を示せる形にまでは至っていません。行政府省との連携と同じように協力体制を立ち上げていきたいと思っています。また、自治体については、例えば、岩手県庁とは公文書のメタデータの提供についてお話をしています。地方の公文書は自治体とセットでお話をしている例があります。まだまだ継ぎはぎのような状況ではありますが、公文書館も非常に重要な連携機関だと認識しています。
中山
電子情報部長:
今まで当館で収集していなかった、動画、音声、その他、この震災に関する様々な媒体で流れている情報について東日本大震災アーカイブの対象としています。具体的にはYouTubeというお話がありましたが、現在、実際にGoogle社と収集に当たっての調整をしています。まずはメタデータで当館のシステムからも検索ができるように調整を進めているところです。
大滝館長: 先ほど、坂内委員からこのプロジェクトを進めるにあたってのスピード感について御指摘がありましたが、その点私も非常に意識しています。時間が経つにつれてなくなる世界です。それは復興相も同じ認識です。8月に入ってから御厨貴先生と復興相と私とで進め方についての確認をしましたが、私からは、「捨てない」ということからスタートしてもらえないかとお願いしました。その場では、国全体の取組としては、行政府省の記録をどのように残していくか、どういうものを特に優先順位が高いものとして残す必要があるか、全省庁的に理解を深めてもらうことが急務となっているという認識でした。その中で、(資料3)11ページの、アーカイブのための課題抽出会議を御厨座長のもとで進めていることとしては、平成25年度予算でどのように具体的に取り組むのか、概算要求までに急いで進めるようお願いをしました。そのために、例えば各省庁のしかるべき立場の方が代表で集まって話し合いをする場を作るという手法も考えられましたが、形式的に集まっただけでは物事は進捗しないと思いまして、先進的に取り組んでいる府省のヒアリングを重ね、その中から全省庁にお願いを広げていくという、実質的な取組をしています。
先ほど時実委員から御指摘のありました、公文書館との取組は、公文書の保存制度を役割分担する形で、各府省の第一線に理解してもらう必要があります。ヒアリング中の課題抽出会議を通じて、その次の段階として、各府省が分担するところ、公文書館が分担するところ、当館が分担するべきところ、また当館には支部図書館が全省庁にありますので、支部図書館が各省庁でどういう役割を果たせるのかといったところを整理しながら進める予定です。時間との戦いはありますが、一方では実質的に進めるためにはある程度時間がかかると御理解くださればと思います。
土屋委員: こういう問題の重大性をNDLとして認識された上で、立法的にもこの周辺の緊急な立法が要求されるのでしょうから、そのための資料の整備として、新しく出てくるものでなくて、関連する雑誌資料でもいいし、既存の図書でも、あるいは外国の本や雑誌などのようなものの収集が重点化されるといった変化はないのですか。
山口調査及び
立法考査局長:
調査及び立法考査局(以下、調査局)としては、震災発生時は急場ですので、新規の資料を集める云々という対応は事実上不可能ですので、既存の資料、又はネット上の情報を駆使して、国会議員の先生方に必要な情報を提供しました。これは依頼に対する回答といった形のほかにも、震災関係の刊行物を提供するといった様々な形で力を注いできました。そういう中では、どちらかというと既存の刊行物を積極的に活用してきました。今土屋委員の御指摘は、将来に向けて、これを機に、震災に関連する、あるいは広くは災害に関連する資料の収集をどう進めるのか、より積極化するかどうかという御質問かと思いますが、その点については、私どもも今後そうした資料が政策面においてより重要視されるのは当然のことですし、調査局も外国書の選定等に関わっておりますので、積極的に災害関係等の出版物については注力していきたいと考えております。
土屋委員: 特にそのための収集方針を書くとかはせずに、やっていく、ということですか。
金箱
収集書誌
部長:
当館には、各市町村等含めて、納本制度によって資料を集めていくという、基本的な仕組みがあります。これに関しては、新たな呼びかけを含めた納本強化策を行っているところです。
また、先日、都道府県立図書館長との懇談会を開催しましたが、具体的な被災地の資料は基本的にその地方の地方資料という形になりますので、各地方での収集、保存の呼びかけをしています。東日本大震災アーカイブとの関係ですと、納本はいわゆる普通の刊行された本になるわけですが、今回はそうでないものでも、地方で持ちきれなくなることが実際に発生してくるでしょうから、それらも受け入れる準備をしているところです。
大滝館長: 端的に申すと、全体として、当館の方向性が見えないという御指摘ですので、もっと分かりやすい形で取り組みたいと思います。ただ、今まで国立国会図書館法第24条の2で、地方自治体の出版物を網羅的に収集する制度や、特に公的機関のインターネット資料の収集という点では、例えば被災地の自治体のホームページについては頻度を上げて震災直後から蓄積しているという実績もありますので、そういったものが東日本大震災アーカイブで使えるようになります。それから、6月に国立大学図書館協会の会合で神戸大学にうかがった際、神戸大学における震災文庫の具体的な資料の収集について聞きました。それらはネット上でずいぶん公開されています。我々も、そういう先駆的な取組を参考にしながら、より深みのあるアーカイブづくりを目指す必要があると考えています。
有川委員長: メディアに関していうと、一般国民は、日本放送協会(以下、NHK)や新聞などの情報を通じて実際のことを知ります。YouTubeについては、放送されていないもの、あるいは日本では放送されていないが外国で放送されているものなどがあり、それぞれの人がアクセスして、震災の全体像を掴んだと思います。NHKは自分たちが作ったもののかなりのアーカイブをお持ちで、ノウハウも持っていますし、新聞もいろいろな機能を持っていて、古い情報も迅速に検索できるなどの対応をしています。そういうものも含めて基本理念に位置付けて、全部NDLに集めるだけではなく、分散保存のようなことを、NDLがうまくイニシアチブを発揮して、指令をして、全体としては、先ほどの「捨てるな」ということを伝えていくことが一番大事だと思います。
NDLでノウハウを持っているものもあります。震災によって、図書館で所蔵している図書資料等が流出したり、痛んだり、泥をかぶったりしています。それらをどこかが修復に向けてまともに取り組まなければなりません。既に取り組んでいるかもしれませんが、NDLは経験やノウハウをお持ちだと思います。
当時の文部省が30年程前に、7つぐらいの大学に対し、台風、水害、火山といった災害に関する資料を収集するよう指示をしました。私どもの九州大学ですと、西日本災害資料センター(西部地区自然災害資料センター)があります。普段は何をしているか分からない感じですが、いざ何かがあると意味があるわけです。つまり、そういった周辺の関連組織もうまく位置付けて、各機関で進めていくことも大事ではないでしょうか。そういったものは例えば大学ですと、次の研究のための資料に役立つわけです。また、今回の東日本大震災は、1000年に1回の規模とか言われていますが、これで終わったわけではなく、例えば九州の水害なども相当数の人が亡くなり大変なことになっているように、災害は今後も大小さまざま頻繁に起こりえます。そのときに今回の取組で培って確立されるやり方を適用できる仕掛けを作っておくのも必要ではないかと思います。既に取り組んでいる部分もあるでしょうが。
土屋委員: 今までNDLは放送番組、動画像、音声等の収集はしていないと思います。もちろんパッケージ化されたレコードとかビデオとかは収集していたと思いますが、それらとは全然違うタイプの資料群です。そのノウハウをお持ちなのでしょうか。大丈夫ですか。
有川委員長: 多分初めてのことだと思います。最近ですとCDなどがあって、次にWeb上の資料を、といった形での準備はいろいろしていたと思いますが、今回のような、様々なものがいろいろなところにある…
土屋委員: 携帯上の動画像とかですね。
有川委員長: ですから、捨ててはダメ、とりあえずお持ちだったらNDLにどうぞ、といったキャンペーンをして、集めるだけ集めて、消えてしまわないようにしなければならないと思います。それをどう利用するかは、後からいろいろ見えてくると思います。問題なのは関心が薄れること、捨てることであり、自分たちのパソコンに保存している画像などは、とったときは大事にしていますが、時間が経つと一気に捨ててしまったりします。そうならないようにしなければならないと思います。
土屋委員: (資料3)6ページと21ページとを見比べると、6ページの収集範囲のところには「個人」が入っていますが、21ページの場合には「社会、国民」と一般的な表現になっていて、個人が入っていません。連携協力の相手ではないというのは分かるのですが、国民一人一人を相手にしてないように見えます。
佐藤
電子情報部
副部長:
「国民」という文言で済ませてしまいました。失礼しました。
有川委員長: NDLの取組の広報として、テレビやネットでもいいですので、動画も含めてデータを公開して、どうぞNDLにお寄せくださいと広報すると、個人が寄贈するのではないかという気がします。そういう時代になっていますので、その辺はうまく活用されるとよいと思います。そういう意味では、(資料3)21ページで、個人もそうですが、メディア関係はどこに入るのかと思うのですが。
坂内委員: NIIでは、関東地区の7テレビ放送の全放送を3年余りアーカイブしました。去年、我々のアーカイブを使って、6機関と共同で震災対応の緊急共同研究を行い、震災直後1週間はコマーシャルがなくなり、すべての放送局が本来の報道機関に戻ったとか、震災以前と以後で、テレビの内容も一変した、社会の雰囲気も変わったなど、震災によって社会の何が変わったかを学術的に研究しました。海外の放送と日本の放送の違い、ネット上のブログ等と放送の違いなど、様々な面白い研究ができました。しかし一方で、メディアというのは、高次にいろいろ処理しようとすると、著作権の問題があるので、館内利用のような形で、研究者にはNIIに来て使ってもらっています。各テレビ局からは、今のところ文句は言われていません。
 
(3)懇談
有川委員長: 二つのテーマの中でかなり懇談的なことも入っていましたが、残りの時間で懇談を行いたいと思います。今の二つの報告の中で大事なことは、第4期の科学技術基本計画の中に盛り込んである「知識インフラ」についてです。これはNDL側からの提案で入ったもので、期せずして、今の災害のこともそうですが様々なところと関係があります。最近では、お手元に用意した資料(『ビッグデータ時代におけるアカデミアの挑戦』(文部科学省ホームページへのリンク)(PDF: 634KB)がありますが、これは文部科学省の研究振興局長の諮問機関という立場で、アカデミック・クラウドに関する検討会が設置され、検討を開始したときはアカデミック・クラウドでしたが、後からビッグデータというタイトルの方がふさわしいという判断になったのですが、そのビッグデータについてまとめたものです。このビッグデータの問題なども、「知識インフラ」と非常に様々な面で関係すると思います。そうしたことも含めて、文部科学省の資料の中でも触れてありますが、文部科学省、NDL、JST、日本学術振興会(以下、JSPS)、NIIといった機関との連携分担の在り方において、今後NDLが行うべき取組として、NDLを中心にした関連機関との望ましい連携分担の在り方などについて議論をすることになっていました。これまでにもある程度の議論はされたと思いますが。
残された時間は短いですが、まとめに入る前に、文部科学省の資料について簡単に説明します。一つは、7月に出されたもので、『学術情報の国際発信・流通力強化に向けた基盤整備の充実について』(文部科学省ホームページへのリンク)です。科学技術・学術審議会の学術分科会のもとに、研究環境基盤部会があり、そのもとに学術情報基盤作業部会があります。そこでかなりの時間をかけてまとめたもので、ここにいる委員の多くが学術情報基盤作業部会のメンバーでもあります。この作業部会は、ネットワークやスーパーコンピュータといった学術情報基盤に関すること、図書館に関すること学術情報の発信流通に関することの三つのテーマを一つずつ順繰りに行っています。平成17、18年から続けてきていて、今期は『学術情報の国際発信流通及び強化に向けた基盤整備の充実について』というテーマでまとめました。簡単な概要は33ページから書いてあります。
もう一つの資料は、先ほど申し上げました『ビッグデータ時代におけるアカデミアの挑戦』です。3月29日の米国オバマ大統領の、ビッグデータイニシアチブが一つの契機になって、大きなうねりのようなものが出てきています。21ページの図にあるように、ビッグデータというのは、産業界、経営、省庁で言いますと、経済産業省、厚生労働省、農林水産省など様々なところが関係しており、そうした状況にあって文部科学省として何をするべきかという議論をまとめたものです。文部科学省は大学等も抱えていることから、基礎基盤的な理論や技術等を含め、研究開発課題として取り組んでいくことになりますし、それについては(8月)23日に開かれた研究計画・評価分科会で評価されています。少なくとも文部科学省としてはそのように取り組むし、他省庁でも取り組んでいくことと思います。もう一つ大事なこととしては、21ページの図の左側に「大規模・多様なデータの存在」とありますが、これは、時系列、時間軸があって、絶えずどんどんデータが入ってくるということがあります。例としては、最近の大事な課題である、グリーン、ライフ、復興、防災などがあります。これは東日本大震災にも関係しますが、そうしたことの共通基盤技術を研究開発するということで、データの収集、蓄積、構造化、分析、処理、可視化などを行っていかなければなりません。通常のことであれば予測あるいはイメージが掴めると思うのですが、センサー、実験、計測機器等から集まってくるデータは、ものすごい量になるわけで、「ゼタ(zetta)」という10の21乗くらいのオーダーになると言われています。そうしたものに対してどう向き合っていったらよいか、その中から何を見たらよいか分からない、といったこともあります。21ページの図の右側にあるように、そこから新たな知の創造ができ、そのための第四の科学としてのデータ科学、データセントリックといったものを確立し、それらを通じて科学技術イノベーションが創出される、ということを意識していくことになると思っています。
これはNDLにおいても、様々な面で関係があります。アカデミアから言うと研究成果物を扱っていることになるわけですが、「知識インフラ」からいいますと、そのプロセスについても関心を持つべきであり、大事な観点であると思います。このビッグデータをかなり意識されなければいけないという気がします。『学術情報の国際発信・流通力強化に向けた基盤整備の充実について』に書いてありますが、NDLとの関係で言いますと、NDL側からだけではなくて、他の機関との連携、例えばJSTの場合はJSTが構築しているデータベースについて検討した時に、分担して連携できるものは連携していくということがありました。JSPSに関しては、ファンディングにおいて、研究成果物である定期刊行物に対してどのようにサポートをしていくかということ、これまでは、主として印刷物、活字体のものを対象にしていましたが、電子的なものについても援助していくなどの取組があります。もう一つ大事なこととしては、先ほどの収集やアクセスなどと関係がありますが、学術論文等に関して、オープンアクセスが強調されています。この考え方も、「知識インフラ」などとともに、第4期科学技術基本計画の中に盛り込まれていたものです。オープンアクセスができるものが増えていく中でNDLがどう対応していくか、という問題もあると思います。それとの関連では、機関リポジトリのこともあります。それぞれの機関、大学や研究所はどんどん成果物を作っていき、それをNDLがうまく位置付けていくというような形になれば、研究論文を作っている現場とNDLとの関係もごく自然にできていくのではないかと思います。
懇談ということで、二つのキーワードを使いながら、用意した文部科学省の資料にも触れて、簡単に話をいたしました。何かありますでしょうか。
土屋委員: 最初の報告1にありました、国立国会図書館法25条の4による収集ですが、これは、基本的に、今有川委員長が言われたオープンアクセス出版物の納本義務の話なのでしょうか。つまり、無償出版でDRMなし、とはまさにオープンアクセス出版物のことで、普通オープンアクセス出版をしている人は、公開したらそれでいいと思っているはずですが、それを集める義務はNDLの方に生じますか。それとも…
佐藤
電子情報部
副部長:
提供義務が出版者の方に生じます。
土屋委員: とすると、今までオープンアクセスで出してこれでいいと思っていた人は、これから義務が発生するわけですか。
佐藤
電子情報部
副部長:
そういうことになります。ただ、人手をかけて提供してもらうことだけを考えているのではなく、当館のウェブアーカイブ・システムでロボット収集ができるので、URLを教えてくだされば自動的に収集するなど、負担なく集められるようにしたいと思っています。
土屋委員: 手間の問題というよりも概念的な問題としてですが。NDLとしてはアーカイブしてあげるのだというアプローチになるのでしょうか。
有川委員長: いずれにしましても、新しい切り口の問題が出てきていて、これから大きく変わっていくのかなという感じがします。
中村道治委員: 今のオープンアクセスの件ですが、世界中のファンディングエージェンシーが、年に何回か顔を合わせて議論しようということで、Global Research Councilいうものがスタートしまして、今年ワシントンであり、来春はおそらくベルリンで行われます。その時までに検討するテーマが、一つはサイエンスインテグリティというような規範の問題と、もう一つがオープンアクセスで、世界中のファンディングエージェンシーがこの問題に非常に関心を持っています。国の研究資金で研究したものが、オープンに活用できないというのは、やはり問題だということです。私どももそういう議論に参加しますので、世界会議でこういう発言をしてほしいとか、もし何かありましたら教えてほしいと思います。
有川委員長: オープンアクセス等につきましては、文部科学省の資料で割と踏み込んだ提言をしています。今のようなことを聞きますと、非常に方向は正しかったと思います。
 
6.閉会
有川委員長: それでは、時間になりました。本日は、大事な課題につきましては、深い議論と理解ができたと思います。議事はこれで終了しますが、最後に、大滝館長から御挨拶が、それから事務局から連絡があります。
大滝館長: 本日は、長時間にわたって、多面的に御審議くださり、貴重な御指摘をいただきましたこと、誠にありがとうございます。頂戴した御指摘について、一つ一つ今後の事業運営に生かしていきたいと思っています。
一言、新人の館長として、決意表明させていただきますと、この審議会からいただきました「知識インフラ」という大課題、また、我々の三期計画の中でも「知識インフラ」の構築をこれから取り組むこととしておりますが、これを段階的に着実に実現する取組をしなければならないと決意しています。ただ、今日の冒頭からの報告でも申し上げた通り、東日本大震災アーカイブの実現という大課題と、「知識インフラ」との同時の両面作戦はなかなか難しいところがあります。この二つの課題には非常に共通した取組の事柄がございますので、この東日本大震災アーカイブの構築について当面努力することを通じて、その中でこの「知識インフラ」の構築に一歩でも近づく進め方をいたしたいと思いますので、今後ともどうぞ宜しく御指導のほどをお願いします。本日はありがとうございました。
相原
科学技術・
経済課長:
次回の審議会は、平成25年7月頃を予定しております。具体的な日程につきましては、改めてご連絡差し上げますので、御協力よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。
有川委員長: それでは本日はこれにて閉会といたします。

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