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国際シンポジウム「ビッグデータ時代の図書館の挑戦-研究データの保存と共有」開催報告

国立国会図書館は、平成26年2月5日(水)13時30分~17時、東京本館にドイツ国立科学技術図書館・ハノーファー大学図書館 研究開発部門長のペーター・レーヴェ氏をお招きして「ビッグデータ時代の図書館の挑戦-研究データの保存と共有」と題するシンポジウムを開催しました。

プログラム・ 配布資料

  • 開会あいさつ 中山正樹(電子情報部長)
  • 「知識インフラ」構築に向けて 川鍋道子(利用者サービス部科学技術・経済課長)[講演スライド(PDF: 231KB)
  • 【講演】研究データをめぐる国際動向
    • 村山泰啓氏(情報通信研究機構統合データシステム研究開発室長・京都大学生存圏研究所客員教授)[講演スライド(PDF: 1.74MB)
  • 【基調講演】ドイツ国立科学技術図書館の戦略:研究データの保存と共有
    • ペーター・レーヴェ氏(ドイツ国立科学技術図書館・ハノーファー大学図書館 研究開発部門長・ドイツ地球科学研究センター客員研究員)[講演スライド(英語)(PDF: 1.77MB)
  • 【事例報告1】農業研究におけるデータ共有の実態
    • 木浦卓治氏(農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター情報利用研究領域 上席研究員)[講演スライド(PDF: 558KB)
  • 【事例報告2】SSJ(Social Science Japan)データアーカイブにおけるデータの保存と普及
  • 【鼎談】研究データ・マネージメントの将来像:図書館ができること
    • 喜連川優氏(国立情報学研究所長・東京大学生産技術研究所教授)
    • ペーター・レーヴェ氏
    • 村山泰啓氏:モデレータ
  • まとめ・質疑応答(講演者全員登壇)

その他配布資料

開催内容・記録

本シンポジウムの全記録については、以下の議事録をご覧ください。また、『国立国会図書館月報』639号(2014年6月)pp.12-16にも紹介記事があります。

講演の概要

中山電子情報部長による開会挨拶、川鍋科学技術・経済課長による開催趣旨説明の後、講師による講演等が行われました。

【講演】研究データをめぐる国際動向(村山泰啓氏)

オープンデータをめぐる現状と政府や研究者コミュニティの最新動向について概説し、研究データの共有化に関する国際的な取り組みとして、世界科学データシステム(WDS:World Data System)及び研究データ同盟(RDA:Research Data Alliance)の紹介がありました。また、研究データを保存し共有する意義について、科学論文の再現性を担保するため、更には科学の信頼性を維持するために必要なことと言及した上で、データの共有化の進展が図書館や出版社も含めた科学の在り方全体を変えつつある、と指摘しました。

【基調講演】ドイツ国立科学技術図書館の戦略:研究データの保存と共有(ペーター・レーヴェ氏)

ドイツ国立科学技術図書館における研究データをめぐる取り組みに関して、まず、出版された論文とそれを支える基礎データがリンクしていないことの問題を取り上げ、その解決策としてのデジタルオブジェクト識別子(DOI:Digital Object Identifier)の導入事例と意義を解説しました。続いて、図書館間のネットワークである「GOPORTIS」や、データ・マネージメントを進めるのに必要な基盤や機能を提供する「RADAR」プロジェクトについて紹介がありました。また、「Radieschen」という、ドイツにおける科学の将来構想を検討するプロジェクトの紹介もあり、その中で示された未来の図書館像に言及した上で、研究ニーズの変化に対応するためにモジュール化したサービスと共通プラットフォームの構築が重要であることなどを訴えました。

【事例報告1】農業研究におけるデータ共有の実態(木浦卓治氏)

農業分野におけるデータの共有化に関して、国内外の農業関係機関が提供しているデータベースの紹介があり、データの公開を行う機関やサービスが増えてきていることの報告がありました。その一方で、まだまだ共有されるデータが限られること、例えば、農業機械が扱うデータについてはISO標準として定められているもの、他の会社とデータ交換する状況にはなっていないこと、あるいは研究者の手元にあるままのデータが多いこと、農業クラウドサービスも複数立ち上がってはいるが全体でデータが共有されていないこと、といった共有化が進まない現状についての指摘もありました。

【事例報告2】SSJ(Social Science Japan)データアーカイブにおけるデータの保存と普及(佐藤博樹氏)

社会科学分野の視点から、日本におけるデータアーカイブ構築と調査環境の整備の遅れを指摘した上で、社会調査・データアーカイブ研究センター(SSJDA)が行っている事業の活動と運営面の課題について報告がありました。データの収集、データの整理といった活動に加え、研究者による二次分析(データ作成者以外の研究者がアーカイブされたデータを使って論文を作成すること)の促進やデータ寄託者のモチベーション活性化に向けた活動について紹介がありました。また、メタデータ作成など活用のために行うデータ整理にかかる労力を課題として挙げた上で、図書館におけるデータライブラリアンやIT知識にたけた人材育成の必要性について指摘がありました。

【鼎談】研究データ・マネージメントの将来像:図書館ができること(喜連川優氏、ペーター・レーヴェ氏、村山泰啓氏:モデレータ)

喜連川氏による、データの活用事例の紹介とデータ共有の課題についてショートスピーチがあったのち、鼎談がはじまりました。
喜連川氏のショートスピーチでは、現在の科学研究においてはデータ基盤とネットワーク基盤の整備が極めて重要であること、データを蓄積するだけでなく、そのデータをいかに活用するかも課題であるとのお話がありました。そのためにはITが必要であり、データのみならずコードについてもサイテーションを可能にすることが重要であること、そしてデータアーカイブの基盤作りを誰が行うかについての議論も必要であると指摘しました。
鼎談では、研究におけるデータの共有化のビジョンについて意見を出し合う形で始まり、村山氏は、個々のアイデアや情報が相互に結びついてきちんと使われること、レーヴェ氏はそのための資金をどう調達するか、また喜連川氏は実際に蓄積するデータの選別をどのように行うかが重要である、とコメントした後、「信頼できるデータをどのように作り、共有していくか」をテーマに鼎談は進行しました。

まとめ・質疑応答

まず全登壇者によるシンポジウムを振り返っての感想があり、データの共有化のために、資金面の援助に加え、研究者への啓蒙、データサイエンティストの養成等が必要との認識が示されました。このほか、SSJDAのデータ利用条件、RDAにおける分野の違いによるデータ共有の在り方の差、RADARプロジェクトの資金面などに関する質疑応答がありました。

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