ホーム > 資料の収集 > 納本制度 > 納本制度審議会 > ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会(第5回)議事録

ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会(第5回)議事録

日時:
平成16年11月1日(月)午後2時~同4時30分
場所:
国立国会図書館 特別会議室
出席者:
公文俊平小委員長、合庭惇委員、安念潤司委員、内田晴康委員、小幡純子委員、紋谷暢男委員、奥住啓介専門委員、杦本重雄専門委員、夏井高人専門委員、野末俊比古専門委員
会次第:
1. 第4回小委員会の議事録の確認
2. 納本制度に関する懇談会(第10回)に関する報告
3. 調査審議
 (1)調査審議未了の論点及び確認を要する事項
 (2)小委員会報告書(案)
4. 今後の予定等
 (1)納本制度審議会までの小委員会報告(案)の取扱い
 (2)小委員会報告の答申(案)への組み込み
 (3)日程
配布資料:
(資料1)第4回小委員会議事録
(資料2)納本制度に関する懇談会(第10回)における質疑応答について
(資料3)同懇談会資料「ネットワーク系電子出版物の収集に関する納本制度審議会の調査審議の経過について」
(資料4)小委員会 審議未了論点・要確認事項
(資料5)納本制度審議会 ネットワーク系電子出版物の収集の課題に関する小委員会報告書(事務局案)本編
(資料6)同 資料編
(資料7)答申と小委員会報告との関係について
(資料8)納本制度審議会における調査審議の現況及び今後の要検討事項について(抄)[第7回納本制度審議会資料8]
(資料9)納本制度審議会 今後の日程(案)

議事録:
小委員長:  時間となりましたので、第5回の小委員会を始めます。本日は、前回事務局から示された予定に従いまして、審議未了論点等について結論を出すこと、それから小委員会報告をまとめることが主な内容となりますので、よろしくお願いいたします。
 
1 第4回小委員会の議事録の確認
小委員長:  会次第の1として、第4回小委員会議事録の確認をすることとします。事務局から、説明をお願いします。併せて配布資料の確認もお願いします。
事務局: 〔まず、配布資料(資料1から資料9まで)の確認。議事録については、出席者に確認いただいた上で、既に国立国会図書館(以下「館」という。)のホームページに掲載されている。〕
 
2 納本制度に関する懇談会(第10回)に関する報告
小委員長:  会次第2に入ります。事務局から、納本制度に関する懇談会について報告をお願いします。
事務局: 〔納本制度に関する懇談会の趣旨について説明し、平成16年9月9日に開催した第10回懇談会における出席団体との主な質疑応答の内容について、資料2に基づき報告した。納本制度に関する懇談会は、納本制度の円滑な運用に資するため出版社団体、著作権関係者団体との意思疎通を図ることを目的として、平成11年から開催しているものである。第10回懇談会では、第4回までの本小委員会における調査審議の経過について資料3に基づき事務局から報告し、出席団体と質疑応答を行った。〕
小委員長:  事務局からの報告について何かございますか。なければ、調査審議に入りたいと思います。
 
3 調査審議
(1)調査審議未了の論点
小委員長:  調査審議に入ります。会次第3の調査審議(1)のうち、「確認を要する事項」は小委員会報告書(案)と、一体の面がありますので、便宜一緒に扱うこととしまして、まず、第3回の小委員会で審議未了論点とされた、制度的収集によるべきか、契約による収集によるべきかという点について、事務局から説明をお願いします。
事務局: 〔資料4に基づいて説明。契約による収集に要する時間及び労力の実例として、館のインターネット資源選択的蓄積実験事業(WARP)における実績について併せて報告。第3回小委員会において、表現の自由に配慮したネットワーク系電子出版物(以下「ネットワーク系」という。)の制度的収集の仕組みを調査審議した際、範囲を限定しないで事前公告・固定拒否等の手続を組み込んで収集するという制度の構築・運用には膨大なコストを要するのではないかとの議論があり、併せて契約による収集についても検討が行われたが、いずれの手法によるべきかについて、審議未了となったので、ここで結論をいただきたい。契約による場合であっても交渉等のために時間・労力の点で相当のコストを要するため、今後急激な増加が見込まれるネットワーク系の収集に対応するのが困難である一方、制度による場合には、自動的な固定拒否の手法が実用化されていることから省力化を図ることが可能と考えられる。また、政府のe-Japan計画において館のデジタルアーカイブ構築へ期待が寄せられており、これに対応可能な収集方法を採用する必要がある。〕
小委員長:  今、館における契約による収集の経験も踏まえた説明がありました。また、前回の小委員会では、事務局から、政府のe-Japan計画の「加速化」など外部状況の変化について説明がありました。これらを踏まえて御判断いただくことになりますが、いかがでしょうか。
委員:  「確認を要する事項」の「2収集方法(1)概念の整理」において、「収集手段(館による複製、送信等)と固定拒否等の手続を合わせて『収集方法』とする」とありますが、「送信」とは誰が行うことを想定しているのですか。
事務局:  「発行者等」が送信する場合もあるということです。
委員:  送信する場合にも、館のサーバー等にネットワーク系の複製物が作成されますが、当該の複製を誰が行うものと考えていますか。館ですか、送信を行った「発行者等」ですか。
事務局:  「発行者等」と考えております。
委員:  「発行者等」とはどういう概念なのですか。従来の出版物の場合における「発行」という概念は、相当部数を頒布することをいうので、この語をネットワーク系の場合に用いることは妥当ではありません。ネットワーク系については、「公表」というべきではないかと考えます。「確認を要する事項」については、もう一点、質問があります。「4損失補償」の(3)に、「ネットワーク系については館の複製利用により、全く補償が不要とされる場合があるが、納本制度においては必ず出版物の所有権への補償がなされることとの整合性」とありますが、ネットワーク系でも従来の出版物でも情報の中身に意味があることには変わりがないので、このように両者を区別して論ずることができるのか疑問です。
事務局:  「確認を要する事項」については、小委員会報告案と併せて後ほど議論いたしますので、ここでは、収集について、制度によるべきか、契約によるべきかという点について御議論いただきたく思っております。
委員:  制度によるのであれ、契約によるのであれ、かくあるべし論のみでは結論を出すことはできません。実現可能な案でなければ採用するわけにはいかないでしょう。事務局からの説明にもあったように、契約によるとすると、非常に時間と手間がかかることになります。一方で、制度によるとしても、義務を課される側の強い反対があれば実施は困難だと考えられます。先程、納本制度に関する懇談会で出版社等関係団体に対してネットワーク系の収集をめぐる審議状況を報告したということでしたが、懇談会の出席団体一覧をみると、我が国の主なコンテンツ系事業者の団体がほぼ網羅されているように見受けられます。これらの団体が強く反対するようなら、制度による収集の実現は厳しいことになります。懇談会の場での出席団体の受け止め方はどうだったのですか。
事務局:  固定拒否の手続等について、詳細が固まっていないので、具体的なイメージがつかみづらいという意見はありましたが、意思に反する固定を拒否できるという仕組みが想定されているせいか、制度による収集自体を拒否するという御意見はなかったと考えています。
事務局:  制度を実施する際の具体的手続等についての質問がありました。制度による収集に対する拒絶や強い反対をその場で表明された団体はなかったものと認識しております。
委員:  分かりました。まだ制度の具体的詳細が固まっていないので、出席団体の方にもそれほどの切迫感がないのかもしれない点には留意する必要がありますが。
専門委員:  いずれの案を採用するにしても、実際の収集に際しては様々な問題が発生するでしょうし、いろいろな意見が出てくると思います。そこで申し上げたいのは、制度による収集を行うのであれば、固定拒否の申出等の仕組みについて、事前に分かりやすく様々な方法を用いて国民に説明する必要があるということです。固定拒否の方法に関する技術的検討も行うべきでしょう。そのための有識者委員会を設置することも考えられるかもしれません。最近はウェブ情報を作成する方法としてHTMLだけでなく、XML等色々な方式があるので、ロボット拒否の方法も一つだけでなく方式に合わせて複数用意した方がよいでしょう。ウェブを使う一般国民にとって分かりやすく、使いやすい方法にすべきだと思います。固定拒否の申出を行う側にとって個々のファイルごとにロボット拒否の設定を行うのは手間がかかるので、ドメイン単位で固定拒否の申出を行えるシステム等を考えておく必要があります。
小委員長:  制度によるべきか、契約によるべきかについての御意見はいかがでしょうか。
専門委員:  私としては、契約によるのでは、新しいコンテンツの掲載を常に館がモニターしていなければならなくなり、実施不可能だと思います。
委員:  契約による収集というのは、館の側から出向かなければならず、一方、制度による収集というのは、相手側が固定拒否をしなければなりませんが、ここで問題となるのは、どちらがコストを負担するのかということでしょう。WARP等の経験を踏まえると契約によることは難しそうなのですから、制度的収集によるしかないように思います。
専門委員:  従来の出版物の場合には、売れそうにないものであれば発行されず、収集の対象になることもありません。その意味で、経済原理によるスクリーニングがかかっているといえます。しかし、ウェブ上のコンテンツについては、その情報を見る人がいようがいまいが公表されるという点で、一般の経済原理が働きませんから、膨大な量の対象を取り扱わなければなりません。したがって、ウェブ上のコンテンツを収集するための制度を検討するに当たり、従来の出版物を収集するための現行納本制度を参考にするのは無理なところがあると思います。いったん納本制度を離れて問題を考えてみる必要があるかもしれません。意思表示の問題にしても、固定を拒否した者からは収集しないこととするのか、固定を許諾した者から収集することとするのか、制度設計の考え方はいろいろあると思います。後者の場合には、ロボットを拒否しないというフラグを立ててもらうなどの手法が考えられます。どういう方法が技術的に可能かということを確認しつつ、きちんと制度の内容を詰める必要があります。
専門委員:  発行者は一定の意図を持ってコンテンツを作成し、特定の時点で公表しているのですから、それに合わせて収集しなければ発行者の意図とは違う形で固定されてしまうことになるおそれがあります。収集のタイミングによっては、いったん公表されたものが削除されていることもあるでしょう。この時点であれば固定しても構わないという発行者の意図に合わせて収集することが可能なのかを検討しておく必要があると思います。
委員:  パッケージ系電子出版物(以下「パッケージ系」という。)を納本制度の対象としたときは、その納入すべき「最良版」について、本審議会において調査審議し、答申をまとめました。国立国会図書館法第25条第1項は、出版物の発行の日から30日以内に最良版を納入しなければならないと規定しているので、現行の納本制度の枠組みでパッケージ系を取り扱うためには、その「最良版」の決定基準を示す必要があったからです。しかし、従来の出版物と異なり、バグの問題などがあるパッケージ系の場合には、発行の日から30日以内に最良版を決定した上で納入するのは、実際には相当困難なことです。さらに、ネットワーク系の場合には、「最良版」という概念自体が成り立たないのではないかと思います。したがって、ネットワーク系については、納本制度からの類推で収集のための制度設計を行うことは無理です。せっかく納本制度とは別の制度によって収集しようとしているのですから、思い切った発想の転換が必要です。私は制度による収集でよいと考えますが、問題は制度の内容をどうすべきかという点でしょう。
小委員長:  今までの議論からすると、皆さん、制度により収集すべきとした上で、その内容について論じていらっしゃるように思われます。したがって、本小委員会としては、制度により収集を行うことが妥当であるとの結論に至ったこととしたいと思います。
(2)小委員会報告書(案)及び確認を要する事項
小委員長:  報告書(案)について、事務局から説明をお願いします。
事務局: 〔資料5~6に基づき報告書(案)について説明。〕
小委員長:  併せて、確認を要する事項について、事務局から説明をお願いします。確認を要する事項については、大事な点ですので、第1の点から順番に確認することといたします。まず、1の収集範囲の説明からお願いします。
事務局: 〔資料4に基づき説明。報告書(案)中の次の点について、問題がないかどうか御確認いただきたい。(1)放送の取扱い:放送は、収集除外事由に当たらないので他のネットワーク系と同じ扱いとする。(2)動的出版物とデータベース:データベースには、頻繁な更新がないデータベースもあるので、動的出版物とデータベースの項目を分け、それぞれについて除外事由に当たるかどうかを検討した。頻繁な更新がないデータベースは、収集の対象となると考える。〕
専門委員:  まず、放送についてですが、放送法の適用のある放送番組と電気通信事業法の適用のあるコンテンツとを分けて記述してはいかがでしょうか。前者は放送番組センターの収集対象であり、後者は館で収集するということにすれば、多少議論が整理できるように思います。
委員:  同感です。平成11年の納本制度調査会の答申では、放送については収集の対象としないという結論でした。ネットワーク系に含まれることを前提として考えると議論が難しくなりますが、放送は、館の任務から考えて、収集すべき対象ではないように思われます。放送法の適用のある放送番組は、収集の対象としないということでよいのではないですか。最初の定義において、放送はネットワーク系に含まれないとしてしまうことも考えられます。
事務局:  調査会答申のネットワーク系の定義では、放送は最も広義ではネットワーク系に含まれるとされています。また、放送法の適用がある放送番組を収集対象から外すとして、その理由が問題です。放送センターによる収集は、あくまでも任意的なものですから、館の収集対象からの除外事由にはならないと考えられます。
委員:  確かに放送を除外する理由付けは難しいように思います。
委員:  放送法・電気通信事業法の適用を基準として区別するといっても、境界事例をきれいに分けられるかが問題です。放送と通信の融合が進みつつある現在では、放送番組と同一内容のコンテンツがウェブ上で配信されるという、いわゆるインターネット放送も現れています。こうしたものについてどう考えるのですか。
専門委員:  割り切って、公衆送信に当たるものだけを収集することとしてはいかがですか。発行者が放送事業者に当たるかどうかではなく、提供の手段が公衆送信に当たるかどうかを基準として収集範囲を画定すれば、放送事業者がストリームでウェブに流しているものも収集対象として取り扱うことができます。
委員:  収集対象に当たるかどうかの基準としては妥当だと思いますが、問題はそうした基準を設ける理由です。放送であれば収集対象とならないのに、公衆送信に当たるものであれば収集対象となる理由については、どう説明するのですか。
専門委員:  有体物を発行することは、ネットワーク上では公衆送信に相当すると説明すればよいのではないですか。
委員:  それは分かりますが、放送事業者の放送番組が収集対象から除外される理由にはならないように思います。
委員:  放送については、従来の納本制度で収集していなかったものです。今議論しているのはウェブ情報という新しいものをどうやって収集していくかということでしょう。今まで存在していたにもかかわらず収集対象になっていなかったものについて、収集対象にしないことに理由は必要ないともいえます。
委員:  いわゆる伝統的な納本制度において出版物に当たらないとして収集対象になっていなかったのだから、現在の検討においても収集対象としない理由を説明するには及ばないということですか。
専門委員:  現在の議論において収集対象として想定されているのはインターネット情報だと思いますが、これには、放送番組は含まれないのではないですか。
委員:  現在の調査審議では、インターネット情報ではなく、ネットワーク系の収集が問題とされていますので、定義によればネットワーク系に含まれるのにもかかわらず、放送を収集対象としないとなると、その理由は説明しておかなくてはならないでしょう。
専門委員:  現在の調査審議においては、ネットワーク系とは、インターネット情報を指すのだということにしてしまえばよいのではないですか。
委員:  現行納本制度の下で放送は収集対象でないとされていたので、今回の議論でも、対象から除くということでよいのではないですか。
委員:  やはり、放送がネットワーク系に含まれることを前提にすると、議論が難しくなるようです。放送はネットワーク系に含まれないということにした方がよいかもしれません。
委員:  しかし、調査会答申の定義によるとネットワーク系には放送が含まれるということになっているのでしょう。放送を除く形で、ネットワーク系を定義し直すのですか。
事務局:  調査会答申との整合性という点は、どのように考えればよいでしょうか。
委員:  調査会における議論では、電子出版物全般に関する検討から始めなければならなかったので、議論の対象を広くとらえ、放送も最広義ではネットワーク系に含まれるとして、検討しておく必要があったわけですが、本小委員会においては、ネットワーク系の制度による収集という観点から、あらためて法的な検討を行った結果、ここでいうネットワーク系に放送を含めないことが妥当との結論に至ったと説明すればよいのではないですか。
専門委員:  調査会答申では一般論として放送がネットワーク系に含まれると考えることもできると述べたけれど、本小委員会における法的な検討では、放送はネットワーク系に含まれないこととなったということですか。
委員:  納本制度に関する議論では、放送が収集対象に含まれるのかという点がいつも問題になるような印象がありますが、放送について何らかの意見を示しておかなければならないような事情があるのですか。
事務局:  過去の検討では、調査会答申の定義を踏まえ、ネットワーク系には放送が含まれるということを前提にしておりましたので、これまでの議論を整理し、放送の取扱いについて確認させていただきたいということでございます。
小委員長:  ユーザーの側からすると、テレビの放送番組もウェブ情報も同じハードディスクレコーダで固定できるようになってきています。そうなると、ユーザーの側では、どうして両者の取扱いが違っているのか疑問を持つことも考えられます。
専門委員:  放送事業者は、インターネット情報とは明確に異なるとの意識の下に、放送番組を放映していると思います。放映された番組を視聴者の側がどのような機器を用いて蓄積するかは別の問題です。
委員:  ただ、インターネット放送は収集の対象にするということであれば、ネットワーク系に放送が含まれるという記述を削ってしまうと不都合があるかもしれません。
専門委員:  ウェブ上のデジタルコンテンツは収集の対象とするとしておいて、内容的に同一のコンテンツがネットワークと放送の両方で流された場合には、ウェブ上のデジタルコンテンツのみを収集するということでよいのではないですか。
委員:  ウェブ上のコンテンツを収集対象とするというのであれば、単に「公衆送信」というと、放送も含まれてしまうので、「自動公衆送信」という必要がありますね。
専門委員:  そのとおりです。正確には「自動公衆送信」です。
委員:  ただ、インターネット利用が増加しつつある現在、放送事業者の中には、デジタルコンテンツの電気送信設備を備える一方で、従来の放送設備から離れるような動きもみられますので、インターネット上のデジタルコンテンツという点だけで割り切ってしまってよいのか、やや気になります。館の任務から考えると、放送を収集することに問題はないのですか。
事務局:  報告書(案)が放送を収集対象としているのは、概念上、同じ文字・映像・音等の記録なのにもかかわらず、なぜインターネット情報が収集の対象になり、放送なら除外されるのか、その理由を説明することは困難だったからです。そこで、放送も収集対象に含まれることといたしましたが、そのようにしても、固定拒否の仕組みを放送事業者も利用することができるので、実際には問題が生じるおそれは少ないだろうということです。その点の考え方を変更するとなると、きちんとした理由付けが必要になりますので、どのようにしたらよいか、お示しいただきたいと思います。
専門委員:  そういえば、私もインターネットのラジオをよく利用していますが、これを収集対象とするとなると大変です。いわゆるウェブラジオは、自動公衆送信ではないと思うのですが、この点は、どうなのでしょうか。
委員:  無線でなく送信ケーブル等を用いたラジオですね。区別が難しいものもあるかもしれません。
専門委員:  ウェブラジオは量的に膨大なので現実に収集することは困難だと思います。その点を考えると、ウェブラジオまで収集対象になるような収集の範囲の定め方は避けた方がよいでしょう。
事務局:  保存する機関もなく日々消えていくウェブ情報を収集すべき緊急性は高いと考えられますが、各放送局等で一定の保存がなされている放送については、収集の緊急性はそれほど高くないといえます。ですから、館としても、インターネット情報の収集を優先して考えています。しかし、今後のことを考えれば、やはり、放送の取扱いについては、きちんと考え方を示していただく必要があります。放送について、本小委員会では議論しなかったということになりますと、場合によっては、将来、もう一度調査審議をお願いしなければならないかもしれません。そこで、議論していただいた上で、放送については、収集対象に含まれるが、他のネットワーク系と同様に固定拒否をすることができるので、特に問題は生じないという方向でまとめてはどうかというのが事務局の案です。
専門委員:  電波による放送については、ウェブ情報と違ってロボット拒否のような固定拒否の意思を表示する方法がないという理由付けにより、放送とウェブ情報とを区別できませんか。電波に固定拒否の信号をつける訳にはいかないでしょう。
委員:  電波による放送の場合には、あらかじめ又は事後的に固定拒否の申出を書面なり他の何らかの方法で行ってもらえばよいので、放送を除外する理由にはならないのではないでしょうか。
委員:  ニューヨークなどでは、無線によるインターネット利用が珍しくなくなっており、その一方で、放送についてはケーブルテレビによる有線放送が多くなっています。こうなってくると、電波を用いていてもウェブ情報に当たることがあるし、電波を用いていないのに放送に当たることもあるわけです。電波を用いることを基準とする場合には、その点をどう考えますか。
専門委員:  ケーブルテレビなどは契約していなければ受信できませんが、ウェブ情報は契約していなくてもアクセスできるものが多いでしょう。アクセスに契約を要しないものを収集対象とすることも考えられます。
委員:  放送も収集対象に当たるとした上で固定拒否をしてもらえばよいというのが事務局案の立場ですね。この考え方でよいのではないですか。
専門委員:  典型的な放送と、それ以外のネットワーク系との区別はつけておいた方がよいように思います。
委員:  ところで、報告書のまとめ方について確認しておきたいのですが、問題を整理した上で、このような対応の方法があり得ますと述べるだけでよいのですか。この報告書(案)の論調をみる限りそのように読めるのですが。このような方法により収集すべきという書き振りにする必要はないということですか。
委員:  難しい問題が多いので、現在の報告書(案)のような書き方でなければ、12月までに答申をまとめるのは困難でしょう。
小委員長:  この報告書は、問題点を指摘した上で、小委員会として、一つの考え方を示すという書き方が妥当だと思います。今回の要確認事項をめぐる議論を受けて修正が必要な箇所の取扱いですが、事務局に修正案を作成してもらい、皆さんに確認いただくということにしたいと思います。
事務局:  それでは、本日いただいた御指摘を受けて修正案を作成いたしますので、それを御確認いただくようにします。
委員:  こういう考え方もあり、こういう考え方もあるというように考え方を列挙するのではいけませんか。
事務局:  それは困ります。お示しいただく考え方は一つでないと、収集範囲を決められなくなります。
専門委員:  動的出版物とデータベースについて質問があります。「動的出版物」という用語の定義ですが、ある程度の期間で内容が変わるものという意味に理解しておけばよいのですか。アクセスするたびに内容が異なるという意味ではないのですね。
事務局:  そのとおりです。
専門委員:  データベースについて、システム全体を収集するのか、データのみ収集するのか、その点が明確にされていないように思います。大規模事業者のデータベースなどでは、システムと切り離してデータだけを館が収集することが技術的に困難なものもあると思います。
事務局:  その点については、懇談会でも質問がありました。データベースについては、データのみが収集対象であり、システム全体を収集するということはあり得ません。データベースによってはデータとシステムを切り離せないものがありますので、その点に留意した記述を検討いたします。
専門委員:  データベースのデータだけを収集しても、システムがないために利用できないということになれば意味がありません。それとも館がデータベースのシステム部分を作ることが可能なのでしょうか。データベースを館が収集するのであれば、収集したデータベースを利用者が館で利用できるようにすることと、データベース事業者の営業妨害にならないこととを両立させる必要があります。
専門委員:  データベースについては、ロボットにより自動収集すると、収集したものが利用可能な場合と可能でない場合が出てくるという問題もあると思います。
専門委員:  データベースの同一性・再現可能性を保ちつつ収集できるもののみを収集するということになるのではないですか。その場合には、技術的にみて収集可能なデータベースは少ないかもしれませんが。
専門委員:  システムまで複製して収集できるのかというと、大半のデータベースは、技術的にみて困難だと思いますので、ここでいう収集対象にはできないでしょう。
専門委員:  データベースの中にも収集できるものがあり得るということしかいえないと思います。
委員:  収集した後の利用の態様も問題です。収集したデータベースを利用させることは、著作権法上、無許諾では行えません。営利目的でない上演等の権利制限を定める著作権法38条第1項や第2項の規定は、データベースの利用には適用がありません。これは、データベース事業者保護の観点から、非営利無償のデータベースの利用提供のような競業するサービスが現れることを回避するために、あえて同法改正の際も規定の対象に含めなかったのです。その場合と同様の議論がここでも当てはまるのではないですか。
専門委員:  広く利用してもらいたいとの意図から、あえて複製できるようにHTMLだけで作られている学術系データベースのようなものもあります。そのように複製可能で利用にも供し得るものであれば収集の対象としてよいと思います。
専門委員:  収集したネットワーク系の再現に用いる機器の問題もあります。既に電磁的・光学的に蓄積されたデータの中には、再現のための機器が生産されなくなったために利用できなくなっているものがあります。収集したデータをいくら蓄積していても、利用できなければ意味がありません。
専門委員:  技術的に同一のものとして再現できないものについては、収集対象とはならないということにしてはいかがですか。
委員:  館による収集は、利用に供するために行うことが前提です。そこから考えれば、同一性を保持できないとか、技術的に再現できないようなものは、利用に供することができないのですから、収集の対象になり得ないということを書けばよいと思います。
専門委員:  館は、その任務から考えて、利用に供するために資料を収集しているということでしょう。
専門委員:  では、将来技術的に再現可能になれば収集対象になることもあり得るということですか。
専門委員:  収集したネットワーク系について、永続的にアクセスを保障するのも課題だと思います。
委員:  パッケージ系について議論したときは、機器の生産中止などの事情により再生手段がなくなることも考えられるので、再生手段を確保するなど何らかの対応策を検討する必要があるのではないかとの議論もありましたね。
委員:  その点を議論し始めると、エミュレーションをめぐる問題など困難な課題が山積しています。本小委員会で検討すべき範囲を超えてしまうのではないでしょうか。
委員:  予算面だけを考えても、当面、現実には対応困難でしょう。
事務局:  収集対象からの除外事由は、技術的な問題に限られるわけではございません。報告書(案)のこの部分は、技術的に収集可能であったとしても、何らかの理由で収集しないものがあるという記述になっております。資料41頁(報告書(案)5頁)を御覧ください。
事務局:  ただいまの御意見は、技術的に収集不可能なものは収集対象としない、再現可能性のないものも収集対象としない、という御趣旨と理解させていただきました。
 
小委員長:  次に、2の収集方法の説明をお願いします。
事務局: 〔資料4に基づき説明。(1)概念の整理:収集手段(館による複製、送信等)と固定拒否等の手続を合わせて「収集方法」とする。(2)送信と消去権:固定拒否申出期間経過後、送信を拒否できるためには、消去権のほかに送信拒否の権利を消去権の存続期間と同じ期間中は認める必要があるか。送信した後でなければ消去できないのでは不都合というのがその理由である。(3)国民が自己の出版物を固定されたことを知るための手段:発行者等が消去権を行使するために、収集したネットワーク系を館外に提供することが制度上必要か、必ずしも制度上固定について認識の手段を保障しなくても、発行者等からの館への問い合わせ等によることで足りるか。〕
委員:  最初に指摘したように、(3)に「発行者等」という語がありますが、相当部数を頒布することを指す「発行」の概念をネットワーク系にあてはめるのは適当でないように思います。ネットワークについては、「公表」というべきでしょう。その点との関連では、資料43頁(報告書(案)7頁)(6)に「発行の定義」とありますが、ネットワーク系の「発行」を定義することも疑問です。
事務局:  調査審議していただいている諮問には「日本国内で発行されるネットワーク系」とありますので、諮問に合わせて「発行」という語を用いております。その上で、資料38頁(報告書(案)2頁)以下の用語の定義において「通信等により公表されたもの」をネットワーク系というと説明しております。この報告書(案)におけるネットワーク系電出版物の「発行」とは「公表」の意味で使われているものとお考えいただければよいと思います。
専門委員:  (3)[国民が自己の出版物が固定されたことを知るための手段]について、ネットワーク系を収集すれば、結果的に個人情報が集まってしまうという問題があります。そのため、収集したネットワーク系を第三者の利用に供すれば、個人情報の取扱いという点で問題になるおそれがあります。もちろん、館は国の機関ですから、いわゆる個人情報保護法の直接の適用はないわけですが、責任がないことを明確にするために、その第23条第1項第4号のように、例外的に本人の同意を得ずとも個人データを第三者に提供できるという規定を設けておく必要があります。また、データの消去を求める権利についても、個人情報保護法の規定に基づくものではないということを明記しておいた方がいいと思います。
事務局:  ここでの問題は、義務を課される側が固定を拒否するに当たり、自らのネットワーク系を館が既に固定しているかどうかを確認したいときがあるかと思いますが、その際、インターネットを通じて自ら確認できるように、固定したネットワーク系をインターネット上で公表するような仕組みを制度に組み込む必要があるのかということです。
専門委員:  固定拒否の申出や消去権行使の前提として固定の有無を確認できる仕組みが必要ではないかという趣旨は分かります。ただ、申し上げたかったのは、固定したネットワーク系は結果的に個人情報の集積になってしまっていると思いますので、こうした個人データの塊をインターネット上で閲覧できるようにすると、何の法的手当てもないままでは、館の責任が問われるような事態も起こりかねないということです。そこで、このような場合には、館が本人の同意を得ずに個人データを第三者に提供できることを明確にする規定を設けておく必要があるのではないかと考えたのです。
委員:  館は個人情報保護法の対象外なのですから、適用除外の問題を考える必要はないと思います。
専門委員:  個人情報保護法の適用対象ではありませんが、制度の運用の場面では個人情報を第三者に提供したことの当否が問題になり得ますから、例外的に第三者へ提供できることを明確にして、館の責任を限定しておいた方がよいのではないでょうか。個人情報保護の観点から削除を求められたときの対応なども検討すべきなのかもしれません。
委員:  そうはいっても、個人情報保護法の適用自体がないので、適用除外の問題を報告書に書くのは困難だと思います。
委員:  個人情報保護の観点からの御懸念ですが、(3)の館外提供の際、個人データが本人以外に開示されるのですか。
専門委員:  デジタルコンテンツの中には、個人データに相当するものが相当量集積されていますので、結果的に第三者への提供に該当する場合も多いでしょう。
委員:  このとき確認できるのは、公表者なのですか、著作権者なのですか。
専門委員:  公表者ではないですか。
委員:  固定したネットワーク系をインターネット等で公表しないとすると、ある情報が固定されているか否かについては、公表者等からの問合せを受けて館が回答することになると考えてよいのですか。
事務局:  インターネット等で公表しない場合には、問合せの際、確認したいネットワーク系を特定できるように示した上で御質問いただければ、固定の有無をお答えすることになるのだろうと思います。
委員:  報告書(案)では発行者が送信するという手段も想定されていますが、固定拒否を認めるのであれば、送信の義務が課せられた者にも、送信の拒否を認める必要があるのではないですか。送信した上で消去を求めなければならないというのは不合理だと思われます。
事務局:  その問題は、(2)に掲げましたが、確認していただきたい事項です。委員の御指摘のように、資料46頁(報告書(案)10頁)では、送信拒否も可能であるという記述になっております。ここで、皆さんに、特に御確認いただきたいのは、(3)について、インターネット等の公表を行うことを制度上設ける必要があるのか、設けずとも、何らかの形で答えればよいのかという点です。
委員:  この問題は、近代デジタルライブラリとも関連しているのですか。
事務局:  近代デジタルライブラリは、著作権処理を行った上で掲載するものですから、現在の議論とは異なります。ここで問題となっているのは、固定を拒否するかどうか等の前提として、公表者が自らのネットワーク系の固定の有無を確認しようとした際、館まで出向いたり、照会を行わなくても、自らインターネット経由で確認できるような仕組みを制度上設ける必要があるのかどうかということです。
委員:  WARPの場合には、どのようにしているのですか。
事務局:  WARPでは公表者の許諾を得た上で掲載しますので、この問題が起きることはありません。
小委員長:  公表者等が自ら確認できないとすると、すべて館に対して問い合せなければならないことになりますが、それにいちいち館が回答しなければならないとすると大変なのではないですか。実際に対応できるのですか。
専門委員:  固定の有無の確認の仕組みや照会への対応については、制度を運用する上で最も適当と考えるものを館が決定すればよいことだと思います。この報告書(案)では、そこまで細かい点について結論を出すことは、かえって適当でないのではないでしょうか。問題を指摘して、その点についても検討する必要がある、というような書き方にすればよいと考えます。
専門委員:  同感です。
 
小委員長:  3の著作権及び4の損失補償の説明をお願いします。
事務局: 〔資料4に基づき説明。
3 著作権(1)プリントアウトの提供、保存のための複製と立法的解決:著作権法第31条第1号又は第2号の適用において、収集したネットワーク系が「図書館資料」に当たるか等については、解釈が分かれるので、権利者の許諾なしにこれらを行うためには、立法上明確な措置が必要。(2)第三者の著作物が使用されているネットワーク系の第三者の保護:第三者の著作権制限の可能性又は発行者等が第三者の許諾を得る努力義務という選択肢が検討された(第2回小委)が、固定拒否(又は消去)の権利を第三者に認めることによって第三者の保護を図る。
4 損失補償:(1)アクセスに対価が必要な(有料)ネットワーク系と無料ネットワーク系とでは、損失補償において考え方が異なるか:補償においては、著作物等の財産価値が反映されるので、現在無償でアクセスさせているからといって財産価値をゼロと見ることはできない。無償アクセスという事実は補償請求権を放棄する意思を推定させる要素に過ぎない。たとえば、無償放映されている放送番組を館が複製・利用する場合に、当然補償が不要とはいえない。(2)完全補償としての利潤相当額:パッケージ系における「あらかじめ納入分1部を含めて製作されており、1部は市場頒布の予定がない」という考え方を参照して、ネットワーク系の発行者等はあらかじめ館の複製・利用を見込んで公表しているので、利潤は予定されていないという考え方も成り立つ。(3)ネットワーク系については、館の複製利用により、まったく補償が不要とされる場合があるが、納本制度においては必ず出版物の所有権への補償がなされることとの整合性:「特別の犠牲」の判断において、納本におけるように所有権のはく奪に至れば、「特別の犠牲」があるといえるが、無体財産の複製が作成され利用されるネットワーク系収集の場合には、館の複製・利用態様によっては「特別の犠牲」が生じない場合がある。〕
専門委員:  第三者の著作権保護についてですが、館もプロバイダ責任制限法にいう特定電気通信役務提供者に当たると考えられるので、同法の適用があるはずです。そうすると、館が利用に供するネットワーク系により著作権を侵害された第三者への対応については、プロバイダ責任制限法の適用があるときは同法の定めるところに従うことになりますので、同法の適用がない場合には、このような対応をするという記述にしておいてはいかがでしょうか。
委員:  プロバイダ責任制限法にいう「特定電気通信役務提供者」とは、他人の通信を媒介する者という定義だったと思いますが、館は該当するのですか。
専門委員:  収集したネットワーク系を館外に送信するのであれば、他人の通信を媒介したことになると考えています。館内閲覧に留めるのなら話は別ですが。
委員:  プロバイダ責任制限法の適用の有無は精査しておく必要があるかもしれません。
専門委員:  そのような要検討事項があるということを述べておけばよいと思います。
委員:  第三者著作物については収集と利用の場面を分けて考える必要があると思います。
専門委員:  館が利用に供する行為にプロバイダ責任制限法の適用があるのなら、同法の規定に従って対応すれば、第三者著作物が含まれていたとしても館が責任を負うことはないと思います。
事務局:  ただいまの専門委員の御指摘は利用に供する場面についてのものですか。
専門委員:  そのとおりです。
委員:  損失補償について述べた資料53頁(報告書(案)17頁)において、従来の出版物について館で行われている利用は経済的不利益が軽微であり、著作権法上も権利が制限されていることから、ネットワーク系についても、このような利用に留めるのであれば、「特別の犠牲」に当たらないとの記述があります。しかし、一方では、ネットワーク系は「図書館資料」に該当するかどうか解釈が分かれるので、著作権法第31条第1号の適用があるかどうか明確でないという趣旨の記述があります。ここは整合性がとれていないのではないですか。
事務局:  その点は、書き振りを検討いたします。ここで、皆さんに、特に御確認いただきたいのは、4損失補償の(1)として御説明いたしましたが、有償のネットワーク系と無償のネットワーク系とでは、損失補償において考え方が異なるのかという点です。
委員:  利用の仕方により異なるのではないでしょうか。
委員:  資料53頁(報告書(案)17頁)にあるように、利用の態様により、「特別の犠牲」に当たるのかどうかを判断することになるのではないですか。
事務局:  現在は無償で公表していても、将来的には、そのコンテンツを用いたビジネスを想定しているということもあり得ます。現時点でのアクセスが無償だからといって、経済的損失がないといってよいのかは議論があるところだと考えられます。こうした点を踏まえた上で、無償で公表されているウェブ情報について、補償は要らないと考えることが可能なのでしょうか。
専門委員:  宣伝の目的で開設されているウェブサイトなどは、無償でアクセスできたとしても、どこかで営利目的とつながっているといえます。
委員:  無償で公表していても、広告を掲載して広告料収入を得ている場合には、館に収集されると、全く経済的損失がないといえないかもしれません。
専門委員:  館に収集された後は、リンクが切れるので、その広告がどの程度見られたのかなどのリサーチもできなくなります。
委員:  将来ビジネスに用いるつもりがあるといっても、無償でアクセスを認めているのだから、憲法上補償が必要となる損失はないといってよいと思います。これは特別の犠牲に当たらない例の典型といえます。国民すべてにかかる負担である以上、特別の犠牲とはいえず、補償の必要はないと考えます。補償というのは、収用前と収用後で何らかの損失が発生している場合に行われるものです。この場合には、損失が発生していない以上、憲法上の補償は不要と考えます。将来ビジネスに用いるという予定があるのなら、固定拒否の申出を行えばよいともいえます。なお、私は、現行納本制度における代償金についても、政策的な補償であり、憲法上の特別の犠牲に基づく補償という必要はないと考えています。
専門委員:  ビジネスに用いる予定のあるネットワーク系については、あえて固定拒否をしないで補償を求める者が現れるのではないかと考えられます。しかし、その場合には、そのネットワーク系を本当に営利目的で利用するつもりだったのかどうかを判断することは困難です。中には、詐欺まがいの主張もあるかもしれません。そのように固定拒否をしないで補償を求めてくるような事態を防止する方法を考えておく必要はあります。ビジネス等に用いる予定のあるネットワーク系については固定拒否を行ってもらうこととし、損失補償請求には応じないということを報告書にあらかじめ書いておくことも考えられます。
委員:  同感です。
事務局:  そうしますと、無償で公表している場合には、館の収集・利用による損失がないといってよいのでしょうか。
専門委員:  無償で公表しているネットワーク系でも、損失がないといえないものがあるでしょうが、その場合には、固定拒否をすればよいといえます。固定拒否をせずに補償を求めてくる者に対して補償をしないための理由付けは考えておく必要があるかもしれません。固定を拒否できる仕組みがあるのですから、固定されて困るネットワーク系については、固定拒否の申出を行うのが原則でしょう。
委員:  少し気になるのは、そのように広範に固定拒否を認めてしまってよいのかということです。必要なネットワーク系が収集できなくなるおそれはないのでしょうか。
委員:  いわれることはもっともですが、固定拒否の申出があった場合には、その内容の当否を精査することは困難ではないでしょうか。
 
小委員長:  次に、5の義務履行確保、6の実施における段階論及び7の技術的課題の扱いの説明をお願いします。
事務局: 〔資料4に基づき説明。
5 義務履行確保:収集妨害行為への対処:刑法の業務妨害罪に該当する場合がある。これを進めた刑罰等については、慎重な検討を要する。
6 実施における段階論:報告に示された制度の骨格の範囲で、段階的実施が可能かどうか、館において検討する必要がある。
7 技術的課題の扱い:小委員会の審議において、保存、ウィルスの問題が制度にも関わることが指摘されたので、報告書「まとめ」において指摘した。〕
専門委員:  これは意見とも提案ともいえるのですが、実施における段階論に関連して申し上げます。館が実施可能なところから制度による収集を始めるという点については、基本的には妥当だと考えます。しかし、その場合において、どこから着手するのかということが重要です。ネットワーク系収集の話は、電子ジャーナルのような文書類似資料(Document Like Object:DLO)が館にとって必要であるというところから始まったものと認識していますが、このように館にとってどうしても収集が必要なネットワーク系というものがあります。さきほども別の委員から御指摘がありましたが、館にとって必要な資料がことごとく固定拒否されて収集できないようになってしまったら、館の任務を果たせなくなり、非常に問題です。「できること」と「すべきこと」は、いったん区別して考える必要があると思います。ウェブアーカイブのような、できることから取りかかることも重要ですが、電子ジャーナルや電子ブックなど、従来の出版物と同等のネットワーク系は、館の任務にとって必要性が高いので、収集できるようにすべきだと考えます。現在、印刷媒体で出版されている雑誌や書籍のほとんどがネットワーク系に移行するようなことがあるかもしれません。可能性としては低いと思いますが。ともかく、今後、技術の進展に伴って、ネットワーク系についてはどのような状況になるか予想しづらいところがあります。ですから、電子ジャーナルなどの収集をどうするかを含め、収集の対象や方法については、将来、改めて検討するというようなことを報告書に付記する必要があるのではないでしょうか。
委員:  その点は同感です。
事務局:  そういう考え方もあり得ますが、現在のところ想定しておりません。段階的実施というのは、制約のある資源の下では、まず収集の緊急性の高いものから着手することも検討するという趣旨であって、いずれは固定拒否をさせることなく収集できるものがあるという趣旨ではありません。
委員:  固定拒否の申出を行う人はあまり多くないように思いますが、どうしても必要な電子ジャーナルが制度では収集できなかったというのなら、その場合には、出版社と交渉して、お願いするしかないでしょう。すべての問題に応えられるようにしなければならないということになると、制度設計が大変なことになります。どのような制度にするのであれ、制度を設ければ後は何もしなくてもうまくいくというようなことはありません。どちらにせよ、相手方には何度も説明し、お願いすることになると思います。どうしても収集したいものについては、相手方にお願いするしかないのではないですか。
専門委員:  技術的課題の扱いについてですが、ウィルス対策だけでは少し不十分かもしれませんので、適切なセキュリティ保護の技術が必要というように、もう少し広い範囲の問題を想定した書き方にしておいてはどうですか。
専門委員:  再現・保存のための技術の確立については触れなくてよいでしょうか。
専門委員:  図書についてもマイクロフィルムで保存しているものがあります。全く同じ形で保存する必要はないと思います。
 
専門委員:  最後に、資料47頁(報告書(案)11頁)の収集頻度について、申し上げます。月刊の電子ジャーナルのようなものは公表の頻度に合わせて、毎月送信してもらう必要があります。その点についても、書き分けた方がよいと思います。
事務局:  検討します。
小委員長:  それでは、熱心に御議論いただきましたが、報告書(案)については、本日の御意見を踏まえ、これから事務局で表現や体裁等を見直していただいた上で、皆さんにお送りして御了承が得られたところで、小委員会報告として決定することといたします。
 
4 今後の予定等
事務局: 〔資料7~9に基づいて説明。予定では、現在の諮問については12月中に答申をいただくこととなっている。諮問中、ネットワーク系を納本制度に組み入れるべきかという点については、既に前小委員会において、組み入れないことが妥当という結論が得られている。本小委員会報告が取り扱うのは、ネットワーク系を納本制度に組み入れない場合の制度的収集の範囲・方法の修正・詳細化である。したがって、答申(案)は、前小委員会の結論と本小委員会報告とを合わせたものとなる。当初の予定では、第12回審議会における小委員会報告の後、第13回審議会を開催して答申(案)を調査審議していただくこととなっていたが、日程的に本年中に二回の審議会を開催するのは困難である。そのため、12月開催の第12回納本制度審議会では、小委員会報告に続いて、答申(案)の調査審議をお願いし、同日中に答申を得る方向で、会長に御判断いただきたいと考えている。第12回審議会で答申をいただいた場合には、第13回審議会は、平成16年度中のもう少し後の時期に別の内容で開催することになる。〕
 
小委員長:  今度の第12回納本制度審議会は、小委員会報告と答申が予定されているようですので、皆さんの御出席をお願いいたします。今回をもちまして本小委員会は予定されていた調査審議を終了したことになります。第1回の開催から1年4か月の間、皆さんには、熱心に議論していただきました。次の審議会までもう少しの間、御協力のほどよろしくお願いします。どうもありがとうございました。
〔16:30終了〕

このページの先頭へ