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第1回納本制度審議会オンライン資料の補償に関する小委員会議事要録

日時:
平成25年9月19日(木)午後3時00分~午後6時00分
場所:
国立国会図書館本館 総務課第一会議室
出席者:
福井健策小委員長
植村八潮委員、永江朗委員、山本隆司委員、湯浅俊彦委員、 片寄聰専門委員、佐々木隆一専門委員、三瓶徹専門委員
会次第:
1. 小委員長挨拶
2. 有償・DRMありオンライン資料の収集に係る論点について
 (1)検討経緯等報告
 (2)審議
3. 今後の予定について
配布資料:
(資料1)納本制度審議会オンライン資料の補償に関する小委員会
     所属委員及び専門委員名簿(五十音順)
(資料2)有償・DRMありオンライン資料の収集に向けて
(参考資料1)納本制度審議会答申の論点整理
(参考資料2)主要国のオンライン資料の納本制度
(参考資料3)OverDrive社の電子図書館サービス
(参考資料4)オンライン資料収集に係る法規の対照表
(参考資料5)平成23年9月20日付け諮問書(写し)
       平成22年6月7日付納本制度審議会答申「オンライン資料の収集に関する制度の在り方について」における
       オンライン資料の制度的収集を行うに当たって補償すべき費用の内容について
       (平成23年9月20日国図収1109072号)
議事概要:

 福井小委員長の挨拶の後、資料2及び参考資料1~4に基づいて事務局から説明を行った。 資料についての質疑応答が行われた後、福井小委員長が提示した4つの論点(①DRMを付与しないこと、②経済的補償、③実証実験事業実施後の制度化という2段階の進め方、④実証実験の具体的内容)について審議が行われた。最後に、今後の予定について確認がなされた。

(1)質疑

  • 資料に記載されている出版社からの懸念というのはどのような場で示されたのか。
    (事務局)平成22年6月に納本制度審議会の答申が出され、それを受けて、平成22年から平成23年にかけて日本書籍出版協会や日本雑誌協会等の関係団体に個別に説明し、そのような場で様々な御懸念、御指摘を受けた。また、平成24年度からは、日本書籍出版協会、日本雑誌協会、日本電子書籍出版社協会、日本新聞協会の4協会に参加していただき、オンライン資料収集制度協議会を開催している。
  • 当小委員会の資料や議論の内容は、どの範囲まで公開してよいものなのか。
    (事務局)当小委員会の資料については、委員の皆様のご了承をいただけるのであれば、ホームページにも掲載して、広く御意見、御批判を頂けるようにしたい。

(2)DRMを付与しないこと

【主な意見】
  • DRMを付与しないことについては、技術的な課題はない。
  • 電子書籍とは何か、という定義づけの問題。DRMが付与された配信フォーマットを電子書籍と定義づけることとなったのは、出版界の国立国会図書館に対する警戒感であろう。
  • 出版社も著作者も、国立国会図書館に期待するのは長期保存である。したがって、時間をかけて説明し、説得すれば、関係者の理解を得られるのではないか。

【小委員長による検討結果のまとめ】
DRMの問題は、技術的なものではなく、理念の問題との意見が多い。そうであれば、出版社への説明・説得の問題である。

(3)経済的補償

【主な意見】
  • 販売方式としてエージェンシー・モデルが普及してきているため、電子書籍には定まった価格がない。
  • いわゆる「電子商材」をはじめとして、スパム電子書籍への懸念は現実のものであり、市場価格を前提に補償を定めるのは困難である。
  • 国立国会図書館にオンライン資料を納入することが、オリジナルの出版物としての証明につながるのであれば、経済的補償よりも有力な納入のインセンティブとなる。
  • 高額の学術系の出版物で少数の販売を前提とするものは、図書館での利用に対し補償を求めるかもしれない。本の種類により、経済的補償に対する感覚は異なるかもしれない。
  • 紙の出版物と電子書籍では印税の支払い方法が異なる。図書館で電子書籍が利用されることに対し、何かしらの金銭的補償が必要と考える著作者もいるだろう。
  • データ送信に人手は必要なので、本そのものの経費とは別に、流通の費用も考慮すべき。
  • 個別の納入者に補償するのではなく、国立国会図書館の包括的な補償として一種の「基金」を設立し、出版界全体のために使うという案はどうか。

【小委員長による検討結果のまとめ】
非金銭的補償の検討が重要である。金銭的補償は、困難な点が多い中で、共通目的基金設立を検討してみてはどうか、という貴重な指摘があった。

(4)実証実験事業実施後の制度化という2段階の進め方

【主な意見】
  • あらゆる論点についてそう簡単に結論が出せないので、実証実験の中で、1つ1つ検討していくことが重要。単にシステム上の問題解決や出版社の理解を得るということだけではなく、もっと幅広く検証するために、期間を十分に確保して行うべきだと思う。
  • DRMの問題も、実証実験をしていく中で、音楽ソフトのようにDRMなしが主流となって、時間の経過により解決していくかもしれない。
  • 実証実験が、非常に小規模なもので何年も経過すると、その間、日本は電子出版物の制度的な収集を実施しなかったということになり、残念である。よって、実証実験は、多様なことを検証すると同時に、できるだけ多くの参加を得て、実証実験であると同時に、トライアンドエラーの制度収集の一部導入でもあるような形で進めてほしい。
  • 実証実験では、今後の急速な変化に対応できるよう、ボーンデジタルコンテンツの収集の仕組みについても検討すべき。また、実証実験では、収集制度の対象外になりそうなものについてもとりあえず収集し、その難しさを検証してもよいのではないか。
  • 実証実験について、文化審議会での電子出版権の議論を踏まえると、著作者から賛同を得るのは容易ではないように思う。
  • 実証実験の実施には、権利処理等で出版社の協力が必要だと思うが、初めから趣旨に賛同する出版社は数少ないだろう。出版社に対し、きちんと趣旨と意義を説明して、参加してもらえるようにする必要があるだろう。

【小委員長による検討結果のまとめ】
実証実験から本格的な制度収集へ、という進め方に関しては賛成多数である。実証実験は、十分な期間をかけて、幅広く検証するものとすべきであり、同時に、ある程度の規模でやっていただきたい。そのためには、十分な説明と説得が大切になるだろう。

(5)実証実験の具体的内容

【主な意見】
 (貸出事業者を通じた電子書籍の利用提供)
  • 将来的に館外利用を考えているのではないか、という警戒感を抱かせる恐れがある。
  • 制度化後、電子書籍をダークアーカイブし、提供は商業サービスを利用して契約により行う、ということであれば、出版社や著作権者の理解を得られやすいと思われる。したがって、実証実験においてこのような取り組みを行う方が良いのではないか。
    (有料サービス)
  • 国立国会図書館は、図書館法の適用を受けないので、有料サービスの可能性についても検証してはどうか。無料サービスにこだわることで、出版社の抵抗感が強まるのでは。
  • 図書館の概念を根底から変えることになりかねないので、それは怖い。
  • 国立図書館として公共図書館への波及が大きいので、強い懸念を抱く。
  • デジタルネットワーク社会の到来により、様々な制度が古くなってきていると感じる。図書館法もその1つ。「ネット上の情報は無料」との認識が若者を中心に広がっており、図書館利用者にもそのような考え方が入ってきている。「コンテンツは無料ではない、対価が必要」という意識を育てるために、有料サービスを行うということは考えられる。
  • 著作者にも様々な立場、考え方がある。無料でもよいから、コンテンツを拡散させたい、という人もいる。実証実験では、様々な立場の人の声を拾ってみてほしい。
    (データの確認・複製)
  • データ保管のリスク管理として、公的な機関がバックアップとしてデータを保管してくれるというのは、相当に安心である。非常に大きなインセンティブになると思う。
    (利用統計データの提供)
  • 個人情報の流出といったあらぬ誤解や懸念、不安を生じさせるのではないか。
  • 個人情報や属性情報が切り離された統計データであることが担保されれば、出版界や研究者にとって有益な情報であるので、良いと思う。

【小委員長による検討結果のまとめ】
貸出事業者を通じた電子書籍の利用提供については、よりよい共存関係を示すことが可能になるかもしれないので、選択肢としてあってもよい。提供範囲については、館内利用に限ることに賛成多数であったが、有償提供があってもよいのではないか、という指摘があり、これについて非常に活発な議論が行われた。データの確認・複製については、クラウド代わりに国立国会図書館を利用する選択肢も、安定感があってよい。データの受入証明や書誌情報の提供も、納入の大きなインセンティブになるのではないか、という指摘があった。利用統計データの提供に関しては、個人が特定できるような情報が入っていないのは当然として、誤解が広がらないよう十分な説明が必要だが、このような統計データは重要なので、前向きに検討した方がよい。

(6)今後の予定について
 【小委員長】
今回の小委員会については、出来る限り情報を公開する方向で進めることとする。本日の検討内容の取りまとめについては、事務局を通じて連絡する。

以上

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