IFLA/PACアジア地域センターの活動
IFLA/PACアジア地域センター(国立国会図書館)の活動

国立国会図書館は、1989年にIFLA/PACアジア地域センターに指定されました。以来、当館はIFLA/PAC 戦略計画に即して、活動を進めています。
(1)IFLA/PAC刊行物の配布・翻訳・寄稿等による情報発信

International Preservation News (IPN)などIFLA/PAC刊行物を国内の公共図書館・関係機関、アジア地域の国立図書館等に配布しています。
また、IFLA/PAC刊行物の翻訳や寄稿等の情報発信を行っています。
(2)研修の実施
国内の図書館員等を対象に、資料保存の考え方に関する講義と初歩的な補修技術の実習を行う集合研修「資料保存研修」を毎年行っています。
また、インターネットを通じた自学自習型の遠隔研修「資料保存の基本的な考え方」も提供しています。遠隔研修では、資料保存の理論及び様々な保存対策(紙資料の補修方法を含む)を紹介しています。
当館が実施する様々な研修においても、カリキュラムの一つとして資料保存の科目を取り入れ、資料保存の普及を図っています。
(3)海外からの研修生の受入
依頼に応じて、海外から資料保存を学ぶ研修生の受入れを行っています。最近では、平成20年度に韓国国立中央図書館から2名、平成22年度にフランスの学生1名を受け入れています。
資料保存以外の目的で受託研修生を受入れる際も、カリキュラムの一つとして資料保存に関する科目を取り入れ、資料保存の普及を図っています。
(4)アジア地域等への研修講師の派遣
依頼に応じて、アジア地域に研修講師の派遣を行っています。これまで、インドネシアのソロ王宮図書館、ネパール王立図書館、米国のメリーランド大学図書館、英国のボードリアン図書館等に収集書誌部資料保存課職員を派遣してきました。
(5)各種イベントにおける教育・広報活動
保存フォーラムは、1990年以来、ほぼ毎年開催しています。時宜を得たテーマを採り上げ、保存対策の事例紹介等を行っています。毎回、図書館、文書館、博物館、企業、研究者など幅広い分野から参加があり、保存に関する情報交換の場となっています。
図書館界のイベントだけではなく、一般的なイベントにも参加しています。第16回東京ブックフェア(平成21年7月9日〜12日)に参加し、資料保存及びIFLA/PACの活動を紹介しました。
また、当館は夏休みに全国の小中学生を対象に各府省等で行われる「子ども霞が関見学デー」に参加しています。「子ども霞ヶ関見学デー」では、収集書誌部資料保存課は「本の病院」と題して、本の修復作業の現場の見学やブックカバー作り体験の場を提供しています。
(6)保存協力ネットワークの推進
【1】国内外の資料保存関係機関への参加
当館は、日本図書館協会資料保存委員会に委員を出しています。
また、IFLA/PAC関係会議(IFLA/PACセンター長会議、IFLA/PAC主催国際会議等)に職員を派遣しています。IFLA資料保存分科会の常任委員会にも委員を出しています。
【2】資料保存懇話会
図書館及び図書館団体の枠組みを超えた業際的な経験交流の場として、毎年、文書館、博物館、美術館等の保存専門家、研究者を招へいし、資料保存懇話会を開催しています。
【3】その他の会議
当館は、アジア・オセアニア地域国立図書館長会議(Conference of Directors of National Libraries in Asia and Oceania, CDNLAO)においても、資料保存に対する理解の促進を図っています。平成20年10月、当館において開催された第16回会議では、特別報告として、中国から「四川大地震の経験報告」、またシンガポールから「図書館と災害復旧−電子的保存と復旧における地域協力の枠組み」など資料保存に関わる報告が行われました。
- 『国立国会図書館月報』574号2009.1 pp.11〜17(PDF file: 4.45MB)
(7)資料保存に関する調査研究
IFLA/PACの活動において、当館は紙の保存に関する調査研究が得意分野(field of excellence)であり、また、課題とされています。これまで以下の調査研究を行ってきました。
【1】中性紙使用率調査
当館は、中性紙の普及を目的として、1986年から、新刊の国内刊行図書と雑誌のpHを調査する中性紙使用率調査を行ってきました。2006年刊行の図書と雑誌を対象にした第19回調査の結果は、図書は96.1%、雑誌は95.1%、合計95%以上でした。そのため、この調査は当初の目的を達したと判断して、第19回をもって終了としました。
- 『国立国会図書館月報』568号2008.7 pp.20〜26(PDF file: 7.58MB)
【2】和図書の劣化調査
平成17〜18年度に、当館の所蔵する和図書(1950年〜1990年代国内刊行図書)から抽出した合計2,000冊について状態調査を行いました。この調査は、閲覧や複写など日常の利用に耐えうるかどうか、という観点で、本文用紙の酸性度、物理的強度、変色度合い、綴じの状態や見開きなどの製本構造等、41項目について調べたものです。
【3】大量脱酸性化処理に関する調査
平成21年度に、ブック・キーパー法と乾式アンモニア・酸化エチレン法(DAE法)の2通りの方法を試行的に実施しました。現在、この試行資料を対象として、有効性、安全性についての調査を行っ<>ています。
(8) IPM (Integrated Pest Management : 総合的有害生物管理) の促進
IFLA/PACの活動において、IPMの促進は当館の課題とされています。
IPMの考え方に基づき、虫やカビ等による資料の被害を予防、軽減する対策を行っています。すなわち、書庫を定期的に点検する、虫やカビなどの有害生物の通報を記録する、虫についてトラップを用いて捕獲調査する(トラップ調査)等を行っています。そして、トラップ調査の結果については、保存フォーラムで報告するなど、IPMの普及を推進してきました。
また、平成20年度に開催した資料保存懇話会では、「保管環境の管理について」をテーマとして意見交換を行いました。
(9) 資料防災の推進
災害は、図書館が長年保存してきた資料が一瞬にして消失する要因となる資料保存における最大の脅威です。図書館は災害から人命や施設を守るだけではなく、資料に対する被害を最小限にする責務があります。IFLA/PACの活動では、資料の防災を主要課題の一つとしてみなしています。
平成22年1月に「国立国会図書館資料防災指針」を策定しました。この指針は、人命尊重を第一とすること、予防管理を重視すること、資料の優先順位付けを行うこと、被災記録の維持と活用を行うこと、専門性と迅速性を重視すること、当館三施設の協力を図ること、国内外の関係機関・専門家との協力を図ることを原則とします。この指針に基づき、マニュアル等を作成し、国立国会図書館資料防災計画を作ります。
- 「国立国会図書館資料防災指針」(PDF file: 131KB)
(10) 媒体(メディア)変換
当館は、資料の利用と保存の両立を図るために、所蔵資料の保存のために媒体変換を行っています。平成20年度までは主としてマイクロ化による方法をとっていましたが、平成21年度以降、媒体変換の方法についてはデジタル化を原則としました。また、デジタル化の目的には、資料保存だけではなく、電子図書館サービスの推進も含まれます。
平成21年度からは2か年計画で、図書、雑誌、児童書、古典籍資料等の90万冊規模の所蔵資料のデジタル化を実施しています。デジタル化は、原則として、フィルムがすでに存在する資料はフィルムから、フィルムが存在しない資料は原資料から直接デジタル化します。デジタル化により作成されたコンテンツは、NDLデジタルアーカイブシステムに保存され、永続的識別子が付与されます。提供については、戦前期までに刊行された図書等は、著作権処理作業を行ってインターネットで公開し、それ以外の資料は、当面、当館内で利用に供されます。
(11)デジタル資料の保存
近年、IFLA/PACの活動において、デジタル資料の保存も重要な課題とされています。当館においても、デジタルアーカイブ事業の推進に当たり、デジタル資料の長期保存、長期利用保証に関する調査研究を実施しています。また、日本、中国、韓国の3か国の国立図書館間で、デジタル情報の保存等、デジタルアーカイブ事業の協力を行うことに合意し、具体的な内容について協議を進めているほか、ウェブサイトの保存(ウェブアーカイブ)については、国際インターネット保存コンソーシアム(International Internet Preservation Consortium: IIPC)に参加し、海外の国立図書館等との連携を進めています。
このほか、当館は「電子書籍の流通、利用、保存に関する調査研究」(平成20年度)、「文化・学術機関におけるデジタルアーカイブ等の運営に関する調査研究」(平成21年度)を実施しました。「電子書籍の流通、利用、保存に関する調査研究」及びその報告会では、デジタル資料の保存に関する取組みの重要性が提起されました。

