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国立国会図書館電子図書館構想

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平成10年5月国立国会図書館<目次>

はじめに

1.経緯

 国立国会図書館ではこれまで、21世紀に向け、情報通信技術等の新技術を活用した新しい役割と機能に関する構想を描いてきた。それは、「国立国会図書館法に規定する図書館の組織及び図書館奉仕の改善を目的として、関西地域に設置すべき施設及びその機能についての答申」(国立国会図書館関西プロジェクト調査会、昭和62年4月)以来、「国立国会図書館関西館(仮称)設立に関する第一次基本構想」(昭和63年8月)(以下「第一次構想」という。)、「国立国会図書館関西館(仮称)設立に関する第二次基本構想−−情報資源の共有をめざして−−」(平成3年8月)(以下「第二次構想」という。)、「国立国会図書館に設置する児童書等の利用に係る施設に関する調査会答申」(国立国会図書館に設置する児童書等の利用に係る施設に関する調査会、平成7年11月)等の構想や答申において提示されている。

 他方、社会全体の高度情報化、マルチメディア化が進展し、インターネットに代表される情報ネットワークが急速に発展した90年代に、我が国及び世界各国で電子図書館プロジェクトが行われるようになった。この新しい環境に即応し、当館では、平成8年度に「電子図書館構想策定のための作業指針」(平成8年10月21日国図企第84号。以下「作業指針」という)を定めた。これは、図書館をめぐる情報通信環境の変化、館の将来計画、館が自らあるいは他の機関との連携・協力の下に実施してきた電子図書館プロジェクトの経験と成果を背景に、電子図書館構想の策定を行う必要性を示したものである。

 この作業指針に基づき、平成9年4月に館に電子図書館推進委員会を設置し、また外部の学識経験者及び情報技術の専門家で構成する電子図書館推進会議を同5月以降5回に亘り開催してきた。電子図書館推進会議は、当館が実現すべき電子図書館について全般にわたって検討し、平成10年2月23日、電子図書館推進委員長にあてて、「知識・情報・文化の新しい基盤の構築をめざして−自由で創造的な情報社会のために−」と題する報告書(以下「電子図書館推進会議報告書」という。)を提出した。本構想は、電子図書館推進会議報告書を指針とし、また電子図書館推進委員会等での検討結果に基づいて、当館が実現すべき電子図書館のあり方を示したものである。それはまた、今後の電子図書館の具体的な計画策定および事業実施の基盤をなすものでもある。

2.基本認識

 今日、あらゆる形態の情報の生産、流通、蓄積、処理のすべてのプロセスがアナログ形態からデジタル形態に急速に移行しつつある。情報通信技術の進歩によって、様々な情報が電子的に生産され、またそれらの通信ネットワークを介しての利用が家庭や職場からできるようになってきている。

 図書館では、従来からコンピュータを図書館業務の効率化の目的で使用してきたが、新たなデジタル技術を利用することにより、図書館の機能それ自体を大きく拡張強化することができる。これまでも図書館は、様々な媒体に記録された人間の精神的な営みの成果を収集し、組織化し、保存し、求める人に対して提供してきた。電子図書館は新しい情報技術を使った従来の図書館サービスの拡張であり、電子図書館によって、豊富な情報の入手、地域的その他の情報格差の是正が可能となる。電子図書館は巨大な情報空間の案内役であり、それによって「どこでも、いつでも、だれでも」情報にアクセスすることができるようになる。

 国立国会図書館は、国会法(昭和22年法律第79号)第130条及び国立国会図書館法(昭和23年法律第5号)により国会に設置された図書館であり、「図書及びその他の図書館資料を蒐集し、国会議員の職務の遂行に資するとともに、行政及び司法の各部門に対し、更に日本国民に対し、この法律に規定する図書館奉仕を提供すること」をその目的としている。当館は、国会に奉仕する調査機能を備えた議会図書館であると同時に、我が国の国立図書館として、国内で発行された出版物の網羅的収集と保存、全国書誌の整備、国民全体への図書館サービスの提供などの役割を担っている。

 新しい情報通信環境の下において当館は、新たな役割を果たすことが求められている。当館は、電子図書館の実現により、情報の保存とアクセスにおいて、デジタルの時代においてもこれまでの印刷物中心の時代と同様にあるいはそれ以上に、文化を保存し、継承し、提供する社会的な機関としての役割を果たすことが可能になる。

 本構想で示す電子図書館は当館全体として実現するものであるが、とりわけ、平成14年度に開館を予定する国立国会図書館関西館(仮称)(以下「関西館」という)において、また平成12年度に第1期開館を予定する国際子ども図書館の重要な機能として、さらには国会サービス拡充のための手段として、その実現を図る必要がある。電子図書館を実現するには、財政的課題、制度的な課題、技術的課題等、様々な課題が存在する。これらの課題について、多面的な検討と解決に向けた努力を行うとともに、関係者間での合意形成に努め、実現に向けた取組みを行う。

第1章 国立国会図書館が実現する電子図書館

1.国立国会図書館の役割と電子図書館

 国立国会図書館は、図書館活動を行うにあたって基盤となる図書及びその他の図書館資料(以下「図書館資料」という。)のうち国内で発行された資料については、国及び地方公共団体等の発行する出版物は公用及び国際的交換の用に供するために、その他の者の発行する出版物(以下「民間出版物」という。)は文化財の蓄積及びその利用に資するために、発行者に納入義務を課した納本制度によって、網羅的に収集してきた。また、この納本制度によって収集した図書館資料を保存・蓄積するとともに、これらの図書館資料を利用可能とするための書誌情報の作成と提供を行い、さらに図書館資料そのものの提供と資料・情報の案内を行う責任を負っている。また、我が国を代表する図書館として、国内・国外の図書館との連携協力活動を推進することも、当館の重要な役割である。

 今日、高度情報社会にあって、情報の生産、流通、伝達の形態・方法が急速な変化を遂げつつある。とりわけ、電子出版物の増大や資料の電子的形態での流通により、これまで経験したことのない新たな環境が生じつつある。こうした新しい情報環境において、これまで印刷物において果たしてきた国立国会図書館としての役割を、電子出版物においても果たしてゆくべきである。

 本構想の各章において、当館が実現するべき電子図書館のあり方を示す。特に以下の事項が、電子図書館の枠組みとして重要である。

  • 電子図書館による国会サービスの強化
  • 国内で発行された電子出版物の収集と保存
  • 電子出版物の書誌作成と書誌的コントロール
  • 国民への電子出版物の提供と情報源へのナビゲーション(案内)
  • 資料の電子化及び電子図書館の構築における国内・国外の関係機関との連携・協力

2.本構想における電子図書館の定義

本構想においては、国立国会図書館が実現する電子図書館を「図書館が通信ネットワークを介して行う一次情報(資料そのもの)及び二次情報(資料に関する情報)の電子的な提供とそのための基盤」と定義する。電子図書館では、電子出版物を通信ネットワークを介して提供するとともに、印刷物で蓄積している資料を電子化して提供する。これによって、当館が行う図書館サービスの拡充・改善を図ることができ、利用者に対し迅速かつ豊富なサービスを実施することが可能となる。電子図書館は、以下の点で図書館サービスの拡張・発展をもたらすものである。

  • 地域等による情報へのアクセスの格差の是正
  • 様々な種類の情報の統合的な入手と利用
  • 情報通信技術を用いた多様な機能の実現
  • 情報へのアクセスにおける経済性と効率性の実現

3.高度情報社会への貢献

 国立国会図書館が実現する電子図書館は、国民に開かれた情報へのアクセスの基盤であり、国会サービスの拡充、地域による情報へのアクセスの格差の是正、国民の文化遺産である図書館資料の保存と継承など、高度情報社会において以下のような多くの貢献をもたらすものである。

  • 学術研究への貢献
     学術研究者は、電子図書館によって、膨大な学術情報を研究の場で、必要な時に入手できるようになる。それによって文献調査の時間を短縮できるとともに、幅広い研究資料を探索することができ、研究の効率と研究活動の向上に資することができる。
  • 産業社会への貢献
     今日の産業社会は、産業活動のあらゆる局面で迅速で的確な情報を必要としている。電子図書館は、直接に間接に、産業活動のあらゆる局面の活性化と新しい創造をもたらすことができる。
  • 国際社会への貢献
     電子図書館が豊富な情報を海外に提供することで、我が国に対する国際的理解の増進や相互理解の向上に役立てることができる。また、我が国の学術研究の成果を国際的に流通させ、国際社会の進歩に寄与することができる。
  • 来館の困難な人々への貢献
     電子図書館は、これまでさまざまな理由で図書館に来館することのできなかった人々に対し、自宅等からの情報へのアクセスを可能とする。そのことによって、情報へのアクセスの格差を大幅に是正させることができる。
  • インターネット文化への貢献
     急速に増加しつつあるインターネット上の情報に対しては、電子図書館はそれらを分かりやすくナビゲーションできるようにするばかりでなく、電子図書館が膨大な情報を提供することによって、インターネットに「文化の厚み」をもたらすものになる。

4.知識・情報の基盤としての電子図書館

 これまで国立国会図書館は、納本・保存図書館の責務から「ラスト・リゾート」(最後の拠り所)としての役割を果たしてきた。しかし電子図書館の実現によって、利用によって劣化しない電子出版物と電子化された資料を通信ネットワークを介して広範囲に提供する機能を備えることにより、「ファースト・リゾート」(最初の拠り所)としての役割を兼ねることが可能となる。

 また当館は、電子図書館を実現することにより、デジタルの時代においても文化遺産である図書館資料を保存し、継承し、提供する社会的な役割を果たすこととなり、また知識・情報の基盤としての役割を担うことを目指す。さらに、当館は、電子図書館が従来の図書館機能の単純な発展形態ではなく、高度情報社会における新たな知識・情報の基盤であることを認識した上で、その実現に取り組む。

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第2章 電子図書館の「蔵書」の構築−文化の保存と提供−

 国立国会図書館は、国内で発行された出版物を網羅的に収集し、保存する役割を担う図書館である。従来の印刷物に加え、電子出版物を収集し、その保存と提供を図る必要がある。近年、電子出版物が急速に増加しているが、印刷物も電子出版物も、人間の知的な活動の所産として等しく文化的に価値ある情報である。

 当館は、納本制度につき必要な改革の推進に資するため、平成8年度に納本制度調査会を設け、21世紀を展望した我が国の納本制度のあり方、特に電子出版物の納入に関する制度と運用について検討を行っている。平成10年3月にとりまとめた同調査会電子出版物部会最終報告においては、CD-ROM、DVD等のパッケージ系電子出版物は納本制度に組み込み、オンライン雑誌のようなネットワーク系電子出版物は当分の間、納本制度に組み込まず選択的収集とするが、積極的な収集を図る必要があるとされた。

 収集した電子出版物については、それを図書館の蔵書とするための組織化及び書誌情報の作成が重要である。当館は、我が国の国立図書館として、これまでもJAPAN/MARC等の書誌情報データベースを作成しているが、収集したパッケージ系電子出版物、ネットワーク系電子出版物についても、同様の責務を有する。欧米諸国では、電子出版物について体系的、標準的な目録作成などの書誌コントロールが進展しており、当館においても国内・国外の関係機関と連携し、電子出版物の組織化と書誌コントロールを実施することが重要である。

1.電子図書館の「蔵書」の種類

 国立国会図書館が提供する電子図書館の「蔵書」(電子的情報資源)の種類として、印刷物を電子化した資料、電子出版物、外部機関の提供する電子情報へのナビゲーションが考えられる。これらは、二次情報と一次情報に分けられる。

(1)二次情報
 当館が作成する書誌情報をはじめ、国内・国外の諸機関が所蔵する情報への案内情報を主として提供する。

(イ)国立国会図書館が作成する書誌情報や各種文献に関する情報
 図書館資料に関する情報
 外部機関と協力して作成する総合目録等
 国内で電子化された資料の総合目録(台帳)等

(2)一次情報
 電子図書館の長所に、一次情報の提供がインターネット等の通信ネットワークを通じて可能となることが挙げられる。可能な限り多くの一次情報の提供が望ましいが、著作権等の制度的課題、財政的課題、外部機関との連携・協力等を考慮して実施する。なお、一次情報の提供にあたっては、二次情報と体系的にリンクさせることとする。

(イ)国立国会図書館の所蔵する電子情報
 国立国会図書館が収集する電子出版物等
 印刷物を電子化して蓄積する電子アーカイブ
 インターネット上で提供される情報資源
 更新等によって消滅するおそれのある重要かつ学術的価値のあるインターネット上の情報を電子的に蓄積したもの
 上記のほか、学協会を含む出版者との協力事業として、出版のプロセスで作成される電子的な印刷組版情報の収集・蓄積及び独自にサーバを用意しない出版者の電子出版物の当館のサーバへの蓄積とその提供(電子図書館レンタル・スペース)等を、当館所蔵の電子情報として想定する。
(ロ)外部機関の提供するデータベースへのアクセス
(ハ)インターネット上で提供される情報資源へのナビゲーション

2.電子図書館の「蔵書」の提供方針

 国立国会図書館は電子図書館の「蔵書」の提供にあたって、財政的課題、外部機関との連携・協力、出版者との協議、著作権や課金システム等の制度的課題の整備状況等を勘案しながら、できるだけ広く印刷物を電子化し電子出版物とともに提供することを基本とする。
 提供にあたっては、以下の観点を重視する。

  • 中立性・公平性への配慮
  • 利用ニーズへの的確な対応
  • 資料への長期的なアクセスの保障
  • 学術的・文化的価値の尊重
  • 蔵書としての包括性と一貫性の確保

3.特に優先すべき資料群

 当面、特に優先的に電子化して提供すべき資料群として、下記のものが挙げられる。

  • 国会情報
     立法その他の国会活動に係わる情報(以下「国会情報」という)は、立法活動の支援をより適切に行うため不可欠である。また、電子化した国会情報は、電子図書館により広く国民にも提供されることが必要である。これは、国会情報への国民のアクセスを抜本的に改善し、ひいては国民の国政への関心と参加意識を喚起することにも貢献する。衆参両院とも協議の上、電子図書館を通じた国会情報の国民への発信に向けて積極的に取り組む。
  • 行政機関が発行する出版物
     行政機関が発行する出版物は、行政機関が国民の付託を受けて国家あるいは公共のために行った活動の所産であるため、広く国民に提供されるべきものである。当館は、我が国の行政機関が発行する出版物の収集と提供に特別な役割を有する。当館が行政機関の発行する出版物の電子化と電子出版物の収集を行いそれらを統合的に提供することは、行政機関が発行する出版物への国民のアクセスの改善、国会サービスの拡充に資するとともに、我が国の行政機関に関する情報を国外に発信する側面からも重要である。
  • 利用頻度の高い国内刊行雑誌
     著作権者、出版者等と協議し、利用頻度の高い国内雑誌を電子化し、電子的に提供する。これは、第一次構想及び、第二次構想に基づくもので、論文・記事単位の書誌情報と効果的にリンクした電子的ドキュメント・サプライ・システムを組み込むというものである。計画の実施にあたっては、後述する技術的課題及び制度的課題に取り組む必要がある。
  • 科学技術情報
     当館の科学技術情報の円滑な流通への役割を、新たな情報流通環境に的確に対応して果たして行くため、特に、大学、学協会、研究機関等の科学技術情報生産機関からの研究成果に関する情報収集を積極的に進めるなどにより、科学技術情報の積極的な収集とその電子化を行う。科学技術振興事業団その他の外部機関との協力により、これらの機関が電子化した研究成果の収集・利用・保存等について積極的な取組みを行う。
  • 国の文化遺産としての図書館資料
     重要文化財等を含む貴重書、江戸期、明治期及び大正期等に発行された図書館資料の電子化を進める。これらの図書館資料について、国が文化遺産として保存し、継承するため、また、その利用と両立させるため、電子化した上で利用可能にする。
  • 児童書  国際子ども図書館の第1期開館を平成12年に予定していることから、児童書の電子化に今後も継続的に取り組む。

4.情報の編集と編成

 電子図書館においては、利用者にとって興味のある分野について適切に資料と情報を編集し、魅力のあるコレクションを形成することも望まれる。

 例えば、米国議会図書館では、米国の様々な文化、歴史資料を電子化する「アメリカン・メモリー」プロジェクトを実施しているが、当館でも、日本の歴史・文化資料を電子的に編集・集成し提供するプロジェクトを計画する。これは学校等での教育の補助的教材として役立つものであるとともに、世界に日本を紹介するために適切な方法である。

 また、主題に基づいた電子コレクションの作成、利用者にとって関心の高いテーマや社会的に関心の高いテーマの選択と編集、電子展示会の開催等を考える。

5.電子図書館による非来館型サービス

 電子図書館は、いつでも、どこからでも、迅速にアクセス可能なことから、非来館型サービス(リモート・アクセス・サービス)として非常に優れた方式である。電子図書館を実現するためには、第7章で述べる制度的及び第8章で述べる技術的課題が残されているが、できるだけ早期にそれらの課題を解決し、ドキュメント・サプライ・サービス(文献提供サービス)を、高度情報社会において目覚しい発展をみせる情報通信環境に適合させ、可能な限り電子図書館の形態により行うための取組みを行う。

 また、国立国会図書館の科学技術関係資料の整備計画について調査審議するために設置されている科学技術関係資料整備審議会が、平成10年2月23日に国立国会図書館長にあてて答申を提出した。この答申においても、「電子化された一次情報、二次情報、レファレンス情報等をリンクさせ、的確な情報を提供する電子図書館の実現は、効果的なリモート・アクセス・サービスを確立するためには不可欠な要素である」と指摘されている。

6.電子化による資料保存

 文化遺産としての図書館資料の保存とそれへの永続的なアクセスの保障の観点から、電子化による資料保存に取り組む。

(1)印刷物の電子化と保存
 印刷物を電子化することは、その内容を保存することであるが、紙媒体やマイクロフイルムによる複製物と異なり、印刷物を電子化したものは形のない電子情報である。したがって、耐久性は電子情報が記録される物理的媒体に依存する。現在、様々な記録媒体が存在するが、耐久性のみの観点からいえば、マイクロフイルム以上の耐久性を電子的記録媒体に期待することは困難である。しかし、利用の観点に立てば、電子的記録媒体は効果的で広範囲のアクセスを提供するものであるため、原資料の保存と利用の二律背反という古くからの課題を改善することができる。

(2)パッケージ系電子出版物
 近年急速に増加する電子出版物は、様々な媒体に、様々なフォーマットで記録されている。そのうちのパッケージ系電子出版物には、CD-ROMや今後普及が予想されているDVD等がある。これらの保存にとって、記録媒体の耐久性と、再生(読取り)機器、ソフトウェア及びフォーマットの保存が問題となる。媒体へ電子的に記録する技術は急速に変化しており、また、パッケージ系電子出版物の利用は特定の機器とフォーマットに依存するため、機器、ソフトウェア及びフォーマットの保存や、記録媒体の変換による電子情報の保存を、今後、検討し実施する。
 電子化した状態で情報の長期保存を実現するためには、耐久性の高い記録媒体を使用し、かつ記録媒体が劣化した場合に、記録された情報を別の記録媒体に複製することが必要である。なお、記録媒体やフォーマットは、技術の発展によって変化することが予想されるため、十分な調査研究を継続して行う。

(3)ネットワーク系電子出版物
 ネットワーク系電子出版物の場合については、その作成者の側ではその内容の修正、変更、削除等が頻繁に行われるため、印刷物の旧版のように保存されなく、修正、変更、削除等が行われるとそれ以前の情報は消滅する場合が多い。これらのネットワーク系電子出版物のうち、特に学術的価値の高いものについて、文化遺産としての図書館資料の保存とそれへの永続的なアクセスの提供の観点から、修正、変更、削除等がされる前のものを含めて電子図書館で収集し、保存する。

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第3章 電子図書館による国会及び行政・司法の各部門へのサービスの強化

 国会に設置された図書館である国立国会図書館では、収集し、組織化した膨大な資料を活用して、国会に対し図書館サービス及び立法調査サービスを行っている。当館は、電子図書館を実現することによって、国会及び行政・司法の各部門へのサービスを強化することができる。

1.国会に対する情報提供の拡充

 電子図書館によって、当館が作成する各種データベース、電子化した図書館資料、国政審議の参考の用に供する刊行物、通信ネットワークを介して得られる外部機関が作成する情報等の多様な情報を提供することにより、国会への情報のアクセスを改善する。国会に対する図書館サービスを充実させるとともに、当館で行う立法調査サービスにも活用することにより、国会サービスの高度化を図る。

2.国会情報の電子化の促進

 国会情報には、国会会議録、法律、行政機関が作成し国会に提出する資料並びに議院法制局、衆議院調査局、参議院常任委員会調査室及び当館の調査及び立法考査局が作成する国政審議の用に供する資料などがある。これらの情報を衆参両院と協力して電子化し、多様な国会情報を統合して利用できる仕組みを作り通信ネットワークを介して提供することで、議員はどこからでも、必要な国会情報を常時入手することができるようになる。これら国会情報のうち国会会議録については、既に衆参両院事務局と当館が協力して国会会議録フルテキスト・データベース・システムを構築しているところである。

3.行政・司法の各部門への図書館サービスの充実

 当館は、行政・司法の各部門に対し、図書館サービスを行っている。当館が電子図書館を実現し、豊富な電子出版物を行政・司法の各部門に提供することにより、行政・司法部門に対する図書館サービスの一層の充実に資する。

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第4章 関西館と電子図書館

 国立国会図書館は、平成14年度に関西館の開館を予定している。関西館は、従来の図書館サービスに加え、高度情報社会に対応した情報の蓄積と発信の拠点として位置づけられていることから、本構想を実現するに当たっては、関西館の電子図書館が果たす機能は、重要な役割を担っている。もとより関西館の電子図書館は、東京に置かれている現施設と一体的な運用を図ることによって、本構想で示す電子図書館を実現するものである。

1.関西館の電子図書館が果たす機能

 関西館の設立を目指し、国立国会図書館は、第一次構想及び第二次構想を示してきたが、それらは、21世紀に開館する関西館が、さまざまな新しい情報通信技術を用いて、当館の機能の大幅な強化を図るべきことを強調している。

 特に第二次構想は、資料を利用するために利用者が図書館に足を運ぶという従来型の「施設」としての図書館にとどまらず、あらゆる分野の資料とそれに関する情報を、利用者がどこにいても、いつでも、通信ネットワークを介して迅速に入手できる「発信型」の図書館として機能する「非来館型」情報図書館の理念を示している。

 第二次構想を受けた「国立国会図書館関西館(仮称)建築設計協議募集要項」(平成7年11月)では「関西館は、国立国会図書館が蓄積する情報資源を東京本館と分散保存して、最も効率良く利用できるようにするとともに、21世紀の高度情報社会にとって不可欠である電子媒体情報への利用者のアクセスを促進する役割を果たす」と述べ、以下の基本理念を示している。

  • 情報資源の蓄積拠点
     情報資源としての図書館資料を東京本館と一体となって収集保存し、国民の文化的財産として未来の世代に伝える。
  • 文献情報の発信拠点
     最先端の技術を活用して、国の内外の利用者に文献そのもの及び文献に関する情報を提供する。他の図書館及び文献提供機関が有する文献情報にアクセスできるよう、内外のデータベース及びネットワークとの結合を図る。
  • 国際社会に開かれた図書館サービスの拠点
     我が国の情報を世界に発信すると同時に、国外からの情報を受信してそれらを利用しやすい状態にして国内に中継する、いわば国際社会に開かれた「情報の窓」となる。特に、アジア文献情報の国際的流通に寄与する。
  • 図書館協力の拠点
     図書館情報ネットワーク化を促進し、国の内外の各種図書館の活動を支援する図書館協力の拠点として、情報資源の共有化と図書館サービスの効率化を図る。

2.関西館の電子図書館が備えるべき条件

 電子図書館は、国立国会図書館全体として実施する必要があるため、東京に置かれた現施設と関西館の一体的な運用を可能とする電子図書館基盤システム上に構築する。しかし、第二次構想に則し、電子出版物の作成及び提供、電子図書館に関する研究開発等は、関西館を中心として行う。

 電子図書館として機能するため、関西館は、以下の条件を備えた施設とする。

  • 電子図書館を支える通信ネットワーク及びシステム基盤が整備されていること。
  • 電子図書館の「蔵書」が構築されていること。
  • 資料を電子化するための施設が設置されていること。
  • 電子図書館を運営・実施する組織が設置されていること。

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第5章 国際子ども図書館の電子図書館

1.国際子ども図書館の電子図書館:目標と方向性

 国際子ども図書館は、児童書及びその関連資料(以下「児童書等」という)を基礎として、児童書等の一次情報及び二次情報の蓄積及び提供、並びに国内・国外の関係機関との連携・協力等の図書館サービスを実現する。国際子ども図書館の電子図書館は、これらの図書館サービスを実現し拡充するための重要な手段である。

 国際子ども図書館の電子図書館の目標は、以下の3点に集約される。

  1. 児童書等の一次情報及び二次情報の電子化とその提供
  2. 子どもの文化の特性を考慮したマルチメディア情報サービスの実施
  3. 児童書等を通信ネットワークを介して相互に利用するための国内・国外の関係機関との連携・協力の推進

2.国際子ども図書館の電子図書館が果たすべき機能

 国際子ども図書館の電子図書館は、デジタル・アーカイブ機能とデジタル・ミュージアム機能の2つの機能を有する。

(1)デジタル・アーカイブ機能
 児童書等の二次情報及び電子化された児童書等の一次情報を広範囲に収集し、蓄積し、それらを通信ネットワークを介して提供する機能をいう。

  • 児童書等の二次情報
     図書・雑誌に限らず、マルチメディア資料を含むあらゆる形態の児童書等について、「国際子ども図書館児童書総合目録」(仮称)として提供する。
  • 電子化された児童書等の一次情報
     マルチメディア資料の収集を図るとともに、国内の希少な児童書等を相互に利用可能にすることを目的として、刊行年の古い資料を中心に一次情報の電子化を進める。
  • 専門情報
     児童書に関わる各種の専門情報(児童書の選定情報、受賞作品情報、書評、あらすじ・解題、英訳書誌情報等)を収集し提供する。

(2)デジタル・ミュージアム機能
 動画、静止画を中心としたマルチメディア資料を選択的に収集し、それらに編集及び加工を行い、それらの一次情報を電子空間の中で展示するミュージアムとして機能させることをいう。新しい時代における子どものための知的基盤として、マルチメディア文化の魅力的な特性を発揮できる分野やテーマを設定し、テーマ毎に動画、静止画を中心としたマルチメディア情報を選択的に収集、編集加工を行うとともに、ネットワーク上で鑑賞可能な常設展示として「ディジタル・ミュージアム」のサービスを併せて行う。

3.国際子ども図書館の実施する電子図書館サービス

 デジタル・アーカイブ機能とデジタル・ミュージアム機能の2つの機能に基づいて、以下のサービス対象別に、国内・国外に向けてサービスを実施する。

  1. 研究者・専門家及び一般利用者
  2. 子ども
  3. 図書館・専門類縁機関

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第6章 電子図書館の協力活動

 国立国会図書館は、我が国を代表する図書館としてこれまでにも種々の協力活動を行ってきたが、電子図書館においてはこれまで以上に多様な機関や人々との協力活動が重要になる。電子図書館を実現するため、下記の協力活動に積極的に取り組む。

1.電子図書館プロジェクト実施機関との連携・協力

 電子図書館を実施するにあたって、技術情報の交換、情報流通の標準化の促進、資料の電子化の調整等を行うために、電子図書館プロジェクトを実施している機関との協力活動を積極的に実施する。

 国際的にはこれまで進めてきたG8電子図書館プロジェクトの他、各国の国立図書館が実施する電子図書館プロジェクトとの連携・協力を実施する。国内においては、行政情報化推進計画を所掌している総務庁、学協会誌を対象とした電子図書館プロジェクトを実施している学術情報センター、大学等の学術研究機関、公共図書館及び民間団体の電子図書館プロジェクト等と連携・協力する。さらに、当館の電子図書館の実現にあたっては、連携・協力のための全国的な組織を設置し、他の電子図書館プロジェクトとも協力する体制を整備する。

 また、今後、国内において当館以外にも様々な電子図書館プロジェクトが実現するものと考えられる。当館はネットワーク上に分散して存在するこれらの電子図書館プロジェクトについて、電子化した資料の総合目録(台帳)を用意し、その維持管理を行う。また、電子図書館サービスの利用者のアクセスを支援するため、メタデータ(情報に関する情報)の作成等について調査・研究を行い、ネットワーク上で分散して蓄積される電子化資料に対して適切な書誌的コントロールを行う。

2.様々な図書館、情報関連機関等との連携・協力

 当館の電子図書館が本格的な実施の段階に至ると、さらに多くの機関との連携・協力が必要になる。国内・国外の図書館、各種専門情報機関、学術研究機関、社会教育機関、著者、出版者等、情報の生産及び提供に関わる様々な情報関連機関や個人が、電子図書館にとって重要な役割を果たすことが想定される。とりわけ電子図書館は、出版者等の情報の提供者と密接な関係があり、協力関係を築くことが重要である。

 当館が実現する電子図書館は、これら各種の機関や人々と連携・協力し、国民の知的ニーズに応えることができるよう調整を図ることとする。

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第7章 電子図書館の制度的課題

1.電子図書館と著作権

 電子図書館が提供する一次情報及び二次情報の多くは、著作権の存在する著作物である。これら著作物の利用については、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与」することを目的として定められた著作権法(昭和45年法律48号)に規定が置かれている。著作権法では、著作物の公正で円滑な利用を図る観点から、著作権者等の権利を制限する規定を置いている。

 電子図書館は、国立国会図書館が収集した電子出版物あるいは電子化した資料をサーバーに蓄積し、通信ネットワークを介して提供するものであるため、その実現にあたっては、著作権法に規定する複製権(第21条)及び公衆送信権等(第23条)が関係する。一方、図書館等は、著作権法第31条により、その利用者の求めに応じて当該利用者の調査研究の用に供する場合、図書館の資料の保存のため必要がある場合等に限り、著作権者の許諾を得ずに著作物を複製することができる。しかし、電子図書館の実現のために必要な複製のを、著作権法第31条で対応することは困難である。

2.著作者の権利、図書館の役割と公共性

 図書館は社会的コミュニケーションにおける知識と情報の蓄積と再利用を保障する社会的装置である。したがって、印刷物同様に電子出版物を整備し、それへのアクセスを保障することが必要であり、著作権者の権利と図書館における著作物の公正な利用について、広い社会的合意が形成されるべきである。

 電子図書館における著作者の権利保護と利用における適切なバランスを検討するにあたって、複製物とオリジナルとの同一性や複製、送信または編集・加工の容易性等の電子情報の特性を考慮する必要がある。国際的には、電子図書館をめぐって国際図書館連盟と国際出版連合がそれぞれ見解を表明しているが、電子著作物に関する著作者の権利、図書館の役割と公共性について両者の見解はまだ隔たっている。

3.電子図書館を実現する上でのルール作りの必要性

 電子図書館は、これまで著作権法が想定してきた著作物の利用とは別の新しい環境下での利用形態であり、従来にない視点から著作物を利用するためのルール作りに取り組むことが必要である。電子図書館は、膨大な一次情報及び二次情報を多数の利用者に迅速に提供するものであるが、電子図書館を実現するための複製及び通信ネットワークを介した提供にあたっての許諾事務の膨大さにかんがみ、図書館の公共的な側面等を考慮したルール作りを当館と著作権者との間で行う必要がある。また出版者や各図書館、利用者等の関係者を交えた協議も必要である。

4.ルール作りのための論点

 電子図書館を実現するためには、以上のような著作権制度上解決すべき課題のほか、利用者から対価を徴収するシステムの構築に係わる財政法上解決すべき課題がある。それらを踏まえ、当館が電子図書館により提供する具体的な資料群、利用者への提供方法、送信を行う範囲及びその実現のための手段について、以下に掲げるものを可能な選択肢として考えることができる。

  • 個々の資料の属性
     著作権の消滅した著作物は、電子化し提供する。民間出版物については、著作権者の利益を侵害しないよう留意する。このうち、絶版その他の理由で市場で入手困難なもの(以下「絶版等の民間出版物」という)は、国民に広く提供されるべき国の刊行物と合わせ、電子図書館でアクセス可能となるよう著作権者と協議する。それ以外の民間出版物については、著作権者との契約に基づき提供するかナビゲーションを行うにとどめる。
  • 利用者への提供方法の差異
     電子図書館による提供方法には、閲覧、プリントアウト、ダウンロード及びナビゲーションがあるが、これらの提供方法のうち著作権者の利益に影響を与える可能性が高いものについては、契約に基づき実施する。
  • 送信を行う範囲の差異
     サーバが設置されている施設内に限定するか、中央の図書館が置かれている施設、関西館及び国際子ども図書館に限定するか、行政・司法の各部門の支部図書館まで含めるか、公共図書館等まで含めるか、あるいは範囲を限定しないかという送信を行う範囲の差異により対応が異なる。著作権者との協議により電子化した絶版等の民間出版物及び国の刊行物については、どの範囲まで送信を行うことができるかが協議の対象となる。それ以外の民間出版物については、著作権者との契約に基づき提供するかナビゲーションを行うにとどめる。
  • 対価の徴収
     電子出版物及び電子化した資料の館内での閲覧及び複写については、印刷物の場合と同様に扱う。契約に基づき出版物を提供する場合は、ダウンロード及び通信ネットワークを介した利用については、適正な対価を徴収する。対価の徴収にあたっては、著作権者との協議が必要である。なお、資料の電子化及び著作権処理に要する経費の扱いについては、別に検討する。
  • 権利処理の方法
     著作権管理団体を通じた許諾契約及び必要に応じて個別の著作権者との許諾契約が考えられる。

 その他、納本制度による国内で発行された出版物の収集には出版者の理解が不可欠であり、電子図書館を実現するための取組みにあたっては、出版者への配慮が必要である。

 電子図書館はこれまでの法体系で想定してこなかった新しい仕組みであり、また高度情報社会、ネットワーク社会における情報基盤として極めて重要である。したがって当館は、電子図書館の実現に向け、適切なルール作りに向けて取り組む。

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第8章 電子図書館の技術課題

 現時点でも、電子図書館の基本的な機能を実現する技術は存在している。しかし、今後電子図書館を本格的に構築するにあたって、改善すべき課題や開発すべき技術項目も多く残されている。電子図書館をより使いやすくするための課題や構築にあたって配慮すべき課題には以下のものが挙げられる。

1.利用者にとっての使いやすさ

 電子図書館においては、利用者にとっての使いやすさが重要である。豊富な電子的情報資源にアクセスするには、まず情報源の網羅性と信頼性が求められる。さらに、利用者の要求を的確に把握した上で求める情報へ適切に導くナビゲーション、使いやすい利用者インタフェースが必要である。端末の操作及び閲覧表示の分かりやすさや見やすさ、利用する情報資源の性質に依存する閲覧手段の準備も課題となる。さらに、電子図書館を自分の書斎として利用する個人のための環境構築機能があると便利である。

2.検索機能

 現行の情報検索システムは、検索ノイズが多いかまたは検索洩れが発生しやすいため、電子図書館においては、適切に求める情報に到達するための効果的な情報検索システムを用意することが望ましい。さらに、求める情報を利用者が適切に選択できるようにするため、文書の構造や利用動向を把握した上での情報の組織化も大切である。今後の高度な検索方式としては、利用者の入力傾向に適応した検索、マルチメディア情報の検索、検索の意味を自動解析する検索、利用者の概念階層に基づく検索、分散協調エージェントを使った多重同時検索等について検討する必要がある。

3.電子化した資料及び電子出版物の権利保護

 電子化した資料及び電子出版物の権利保護を実現することも、電子図書館にとって重要な技術課題である。資料の通信ネットワーク上の流通を可能とするためのセキュリティの確保や不正利用の防止など、著作権保護のための技術について十分に検討する必要がある。現在、著作権等の保護については、電子透かし技術や電子署名技術が開発されてきている。また、利用者端末での不正利用の防止を可能とする技術など、現在、電子商取引の分野で開発されているいくつかの技術を活用することも有効である。

4.電子化した資料及び電子出版物の保存、標準化、アーキテクチャ等

 電子図書館は、電子化された資料及び電子出版物の永久的な保存について十分な配慮を行う。また、他の図書館等との安定的な相互運用を可能とする各種規約の標準化やシステムの相互運用性の確保も重要な課題である。さらに将来に向けて安定的運用を可能とするために、拡張性のあるアーキテクチャ上でシステムを構築すること、電子化した資料の長期保存、外部の機関との電子的情報資源の共有や相互運用に役立つメタデータの作成も、技術課題として重要である。

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第9章 電子図書館基盤システムの構築

 電子図書館の実現にあたっては、国立国会図書館の業務を遂行するための情報システムを、電子図書館を構築するのにふさわしい構造にしなければならない。そのため、これまでの業務システムの成果を活用しつつも抜本的に改善し、館内の各種のデータベースや業務用データ等を有効に利用できる構造にするとともに、今後構築する関西館の情報システムと合わせて一体として稼動するものとする。

 当館では平成8年度以来、電子図書館の基盤となり、同時に業務の効率的な遂行を支援する情報システムの概念を検討してきた。これは「電子図書館基盤システム基本計画」(平成10年国図企  号)として集約されている。

 電子図書館基盤システムは、2.で示すようにデータベース管理システムを中心として、幾つかのその他の情報システムを相互に接続した仕組みである。以下に、その基本的な考え方を示す。

1.電子図書館基盤システムの特徴

 電子図書館基盤システムの特徴は、以下のとおりである。

  • 高速、高品質かつ安全な通信基盤
  • 安全性、拡張性、柔軟性に優れたデータベース管理システム
  • 階層的アーキテクチャの採用と機能のモジュール化の推進。(ハードウェア、ソフトウェアの更新に柔軟に対応するため)
  • 論理データベース構造の機能面からの再構築。(検索機能の柔軟な拡張、修正を実現するため)
  • システムのオープン化、標準化の推進

2.電子図書館基盤システムの全体構成

 電子図書館基盤システムの全体構成は、以下のとおりである。

  • データベース管理システム
     一次情報及び二次情報を整理・蓄積し、他の系からの要求に応じてデータの検索・抽出などを行う。
  • 情報収集系
     一次情報及び二次情報を収集する業務を支援する。必要な一次情報及び二次情報を抽出・整理し、データの入力・登録・更新をデータベースに対して行う。
  • 情報提供系
     利用者からの要求を分析して受理し、データベース管理システム及び他の系と相互に連絡することで、利用者の要求に応じた情報を提供する窓口となる。
  • 外部接続系
     外部機関の情報システムとデータを授受する際に必要となるプロトコル変換やフォーマット変換、ユーザ認証など、外部機関の情報システムとの接続点となる。
  • 共通系
     各系に共通な機能や複数の系にまたがる機能を処理するシステムの集合である。利用統計情報管理、課金管理等を行う。
  • システム管理系
     システム機器、データベース管理システム、ネットワーク、ソフトウェア、利用者プロファイル、セキュリティ情報等の監視および管理を行う。

3.電子図書館基盤システム構築の進め方

 電子図書館基盤システムの開発に際しては、スケジュール及び予算の制約を考慮し、全面的に一度に切り替えるのではなく、プロトタイプを構築しつつ段階的に進める手法を採用する。

 また、電子図書館基盤システムの開発にあたっては、既存の業務の流れに合わせて開発するのではなく、まず業務の全体構造を分析し、効率的な業務の流れを想定してシステムの設計及び開発を行う。また、電子図書館基盤システムを構成する各種システムのインタフェース、データベース構造は、可能な限り各システム間で共有化する。このため、現行の業務及び現行の業務システムの見直しを行い、またシステム・インテグレータ等の専門家に全体のシステム設計を依頼する。

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おわりに 電子図書館実現に向けての取組み

 20世紀後半から急速に発展した情報処理技術、ネットワーク技術は、情報、知識、文化の技術基盤を形成できるところまで進んできた。21世紀は、これらの技術基盤の上に、新たな知識・情報の基盤が形成される時代である。このような状況のなかで、国立国会図書館の電子図書館は、21世紀に向けた新たな知識・情報の基盤として構築する。

 電子図書館は、世界の図書館人が古くから理想としてきた、「どこでも、いつでも、だれでも」、人々が必要な知識や情報を入手できるという「夢」を実現する仕組みである。それは当館にとっても、その機能の大幅な拡充と発展をもたらすものである。

 電子図書館は、当館の従来の業務の上に成り立つものであるが、必ずしもその延長線上に位置するものではない。電子図書館を構築するためには、新たな組織や業務体制の整備、電子図書館に関する業務知識を有する職員の養成、電子図書館基盤システムの構築等が不可欠である。

 電子図書館の実現は、未来に向けた挑戦である。国立国会図書館は、高度情報社会において当館が果たすべき役割と電子図書館の社会的意義を認識し、関西館開館予定の平成14年度を目途に、館をあげ、また関係機関と連携・協力し、電子図書館の実現に向けて取り組むものである。

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