IFLA-PAC各地域センターの動向(「PAC NEWS」IPN No.27 2002年8月より)
アジア−日本 国立国会図書館PACの新センター長
関西館プロジェクト担当となった村上正志氏の後任として、村山隆雄氏がPACアジア地域センター長に任命された。村山氏は29年間国立国会図書館に勤務している。昨年3月にヨーロッパを視察中の氏と会えたことは非常に光栄であった。村山氏を歓迎する。
オセアニア−オーストラリア 文書遺産保存登録制度(DHPR)
オーストラリア国立図書館にあるIFLA/PAC東南アジア・太平洋地域センターは、文書遺産保存登録制度(DHPR)の発足を発表した。(http://www.nla.gov.au/dhpr/)
DHPRは、東南アジアと太平洋地域で進められている保存プロジェクトに関する情報を提供するために設立された。プロジェクトには、同地域におけるマイクロ化、研修、基礎的な保存修復プロジェクト、そして蔵書調査などが含まれる。
書籍やその他の紙媒体資料、パームリーフ写本、フィルムや電子資料などの記録資料は、地域文化遺産として重要なものである。不幸にして保存されなければ、これらの遺産は容易に失われるかアクセス不可能になる恐れがある。プロジェクトの情報提供が地域でプロジェクトに取り組むことを考えている人々にとって役立つものとなることを期待している。未登録の地域文書保存プロジェクト関係者またはプロジェクトの存在を知っている方は、ウェブサイト上の投稿欄からセンターに連絡して欲しい。(http://www.nla.gov.au/dhpr/contribute.html)
DHPRがどれだけ有用となるかは、地域内の人々の情報提供にかかっている。
詳細はこちらにて:nipa@nla.gov.au
北アメリカ−USA アメリカ図書館協会(2002年冬期大会委員会決議)が電子情報の保存に関する指標を提唱
アメリカ図書館協会(ALA)は、Policy 52.2.1(保存方針。全米情報提供業務および責務。情報関連製品の性能と耐久性)(Preservation Policy. National Information Services and Responsibilities. Performance and Durability of Information Products)を下記のとおり改定することを決議した。
アメリカ図書館協会の保存方針は、すべての人が必要な時に使用可能なフォーマットで情報へアクセスするのを保証することを目標としている。協会は、図書館資源の保存はアメリカ憲法修正第一条および図書館の権利宣言に表現されている「情報の自由な流通」に関する公衆の権利を保護すると主張する。
協会は、あらゆるメディアやフォーマットで発行される情報の保存を支援する。協会は、情報資源の保存は図書館と図書館業務の中核であると主張する。協会とその各部門は、標準化組織と緊密に協力して、図書館資料の保存に関する規格の明確化と開発、規格の定期的なレビューと更新への参加、必要に応じた新規格の特定化と開発、そして既存の規格の遵守の促進活動を行う。情報関連製品の製造者、出版者、販売者、そして購入者においては、製品の持続性を保証するような媒体(紙、フィルム、磁気テープ、光ディスクなど)の有用性・耐久性・寿命を改善するための協力作業が必要である。
協会は、情報関連メディアの有用性・耐久性・寿命に関する規格を開発、促進、公開するための活発な教育活動と広報活動を行う。協会は、電子情報の発信者が情報を維持したり普及したりすることができなくなった場合にそれらが失われないことを保証するよう、電子情報保存のガイドラインを開発するために、電子情報の発信者と協働していく。
図書館には以下の義務がある。
−提供者・使用者・管理者・地方自治体職員に対して一次資料の短命性を通知し、
−これらの資料の適切なケア・取扱い・保管に関する計画策定を促し、
−耐久性のある媒体と記録管理を推奨する。
連邦政府は、広範かつ包括的な国の保存方針を主導的に開発しなければならない。協会は、連邦政府が紙、マイクロフィルムまたは電子形態で発行する情報の寿命に対する責任を負うようにはたらきかけている。
北アメリカ−USA 全米録音資料保存委員会(The National Recording Preservation Board)
全米録音資料保存委員会は、3月12日に、米国議会図書館において最初の会議を開催した。その会議で、米国議会図書館長のJames H. Billington氏は、米国作曲家・作家・出版者協会(American Society of Composers, Auhors and Publishers)の協会長兼議長のMarilyn Bergman氏を委員長に任命した。米国作曲家・作家・出版者協会は、2000年全米録音資料保存法(National Recording Preservation Act of 2000)に基づき、作曲家、音楽家、音楽学者、図書館員、文書館員、そしてレコード業界を代表する機関の17名の会員および3名の全州代表から構成されている。同協会の主な責務の1つに、米国の録音遺産の存続、保存、そして増加する一般利用の保証がある。この目的を達成するためには、全国的な録音資料の保存研究と行動計画を発展させ、全米録音資料登録簿(National Recording Registry)の作成を計画している米国議会図書館長に対して助言を行う必要がある。この研究や計画によって将来の民間及び公共の保存活動の基準が設定されるであろうと考えられる。これは、同館がカルペパー(バージニア州)において展開している全米視聴覚資料保存センターと連携して行われる。
北アメリカ−USA 大量脱酸
米国議会図書館は、100万冊の書籍と少なくとも500万枚の手稿資料を酸性劣化から守るための契約をプリザベーション・テクノロジーズ社(PTLP)と締結した。
同図書館は、何十年もの間、大量脱酸に関する指標を主導的に提供してきた。PTLPのブックキーパー脱酸技術によって既に400,000冊もの書籍が劣化を免れている。ブックキーパー法は、酸を中和する化学物質に紙を浸すことによって、何百年という紙の延命を図る。現在は、図書館内に設置可能な新しい水平型処理シリンダーが、大量の写本や冊子体でない紙資料を取り扱うのに使用されている。
詳細はこちらにて:www.loc.gov/preserv/carelc.html
または
Kenneth Harris
Preservation Projects Director
Tel: 1 (202) 707 1054
E-mail: khar@loc.gov
ヨーロッパ−イギリス CASS(Collaborative Academic Store for Scotland:スコットランド学術資料共同保管)プロジェクトが正式に開始
SCURL(Scottish Confederation of University and Research Libraries:スコットランド大学研究図書館連合)は、カーネギー基金より、国内の大学図書館が所蔵する貴重ではあるが利用頻度の低い研究資料を共同で保管し提供するための最適モデルを構築する研究に対する資金援助を受けた。この研究はスコットランド大学で行われ、研究期間は2001年11月から6か月間である。
CASSは、保管にかかる費用の削減、保管場所の再配置、アクセスの増加、保存、そして研究図書館間の、また可能ならば公共図書館や文書館も含めた協力を促進することで、図書館が抱える重要問題を解決し、研究コミュニティに貢献することを目的としている。今回のプロジェクトでは、最終報告書及び共同保管施設に関する詳細な事業計画案という形で、プロジェクトの結果が広く行き渡ることが期待されている。CASSによって、スコットランド内における共同保管施設の実行可能性が明確になるだろう。
情報専門家や研究コミュニティに属する人が多くの研究成果をCASSに提供するだろう。今後さらに、文献レビューやヨーロッパ・オーストラリア・米国における同種の共同事業に焦点を当てた研究が行われることになるだろう。このプロジェクトに関する文書、資料、その他の一般的な情報については、以下のCASSウェブサイト上に公開される予定である。
http://scurl.ac.uk/projects/cass/index.html
この件に関しては、直接下記に問合せのこと。
Sharron Brown
CASS Research Assistant
CDLR
Andersonian Library
101 St. James Road
Glasgow G4 ONS
Tel: 0 141 548 4753
E-mail: sharron.brown@strath.ac.uk
ヨーロッパ−イギリス INFOSAVE−酸性劣化の脅威から全国の文書遺産を救う。リソース(Resource)が、大量脱酸の効果を証明するための暫定的な実施プロジェクトに対する基金援助を行う。
博物館・文書館・図書館評議会(The Council for Museums, Archives and Libraries)、通称Resourceは、イギリス国内に大量脱酸施設を設置するために現在進行中のINFOSAVEプログラムの第3段階に対する基金援助を行うことを決定した・英国図書館にある全国資料保存対策室(The National Preservation Office)が同プロジェクトの運営コンサルタントとなり、以下の団体の代表者を含む諮問グループが結成された。
−Resource
−スコットランド国立図書館
−ウェールズ国立図書館
−英国図書館
−英国国立公文書館
この重要な資金援助構想は、英国図書館の協力連携プログラムの資金援助を受けて2001年12月に終了した第2段階より継続して行われる。この第2段階で、大量脱酸の対象範囲は、博物館が所蔵する1840年代以降の紙媒体コレクションにまで拡がっていった。
第2段階の主な成果は下記のとおりである。
−全国資料保存対策室(NPO)が策定した保存アセスメント調査法(PAS)による蔵書の劣化調査を行うための英国東南部パイロット・コンソーシアムが組織された。PASとは、蔵書の酸性劣化の程度を測る手法のことである。
−大量脱酸の仕様の概要を策定した。
第1および第2段階が成功したことをうけて、運営グループは、第3段階として技術的・商業的環境を検証し、連合基金組織を改善すること、そして第4段階としてイギリス諸島の文書館・図書館・博物館の大量脱酸システムを構築するための資金援助を申請することが必要であることで一致した。
現在のプロジェクトは下記のとおりである。
−1850年代以降の書籍と手稿資料で傷みの激しい紙を脱酸するための完全な技術仕様を策定する。
−大量処理に適した実験資料群を特定する。
−試験的な検証を行うために業者と交渉する。
−試験結果を検討し、技術仕様を手直しする。
−大量脱酸システムの競合入札に向けた資金提案の骨子を準備する。
上記プロジェクトの主な目的は、技術的な仕様をさらに改良するために試験用資料群の処理を行い、検証することにある。同プロジェクトは、『書物の敵(The Enemy Within)』(1)に特記されているような大量脱酸業務を行う業者の支援を求めていくことになるだろう。
詳細は下記に問合せのこと。
Alison Walker
Head of Programmes
National Preservation Office
The British Library
96 Euston Road London NW1 2DB
Tel: 44 (0)20 7412 7612
Fax: 44 (0)20 7412 7796
E-mail: npo@bl.uk
(1)2001年3月6日に英国図書館が発表した報告書。下記の英国図書館のウェブサイト上で閲覧可能である。http://www.bl.uk/concord/proj99report1.html
