IFLA-PAC各地域センターの動向(「PAC NEWS」IPN No.26 2001年12月より)
2001年8月 ボストンにおけるIFLA-PACセンター長会議
IFLA-PACセンター長会議は、毎年IFLAの年次大会時に開催されている。2001年会議には6つの地域センターのうち2ヶ所からセンター長が出席した。
フランス国立図書館のマリー=テレーズ・バーラモフ国際センター長と米国議会図書館のマーク・ローザ地域センター長の2人が出席し、他の地域センターからは代理の者が出席した。
会議にはこのほか、米国コーネル大学のジョン・F・ディーン氏とIFLA資料保存分科会のJohn McIlwaine委員長も招待を受け参加した。
田中久徳「IFLA/PACセンター長会議・資料保存分科会関連会議報告−コア・プログラム活動の見直しの中で」『国立国会図書館月報』489号(2001年12月)
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図書館と文書館における環境管理
2000年2月、アジア地域センターである国立国会図書館により、第14回資料保存フォーラムが開催された。国立文化財研究所の木川りか氏が講師を務めた。図書館をはじめ、文書館や関連機関から83人が同フォーラムに出席した。
「第14回国立国会図書館保存フォーラム報告 −図書館・文書館の環境管理−IPM(総合害虫防除計画)を中心に」『国立国会図書館月報』 481号(2001年4月)
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インドにおける活動
日本の国立国会図書館の安江明夫氏が、インド・ブバネシュワル市にあるオリッサ州美術保存センターで行われた研修会で講師を務めた。
安江氏はパームリーフおよび紙でできた資料の保存と保存管理についての講義を行った。
安江明夫「インド管見−保存研修に参加して」『ネットワーク資料保存』 61号(2000年9月)
マイクロフィルム保存のための研修教材
このPAC活動はアジア・太平洋地域におけるマイクロフィルム保存のための研修用に、簡便な学習教材の開発を目指している。
まず最初に、対象地域における、保存ニーズを把握するために調査が行われた。調査書は、PAC地域センターであるオーストラリア国立図書館と日本の国立国会図書館から配布され、この地域におけるマイクロフィルム保存のための研修活動および要望を把握するために情報が集められた。
作成中の学習教材は、オーストラリアの国家的な研修組織の枠組みのなかで近頃開発され、正式に認可されたマイクロフィルム保存のためのカリキュラムに沿った形で書かれている。
また、オーストラリアおよびアジア・太平洋地域の人々から寄せられた多数の意見や批評も、教材作成の参考としている。
東南アジアおよびオセアニア地域における資料保存研修の必要性
近年終了したこの活動は、地域における研修の必要性(研修の内容に対する要望とその実施方法に対する必要性)を調査するために行われた。同時に必要性の高い分野の特定も調査された。この調査は研修教材開発のために実施されたマイクロフィルム保存のための調査と合わせて行われた。
調査結果は、地域センターであるオーストラリア国立図書館が、今後地域に適した研修活動の支援をおこなっていく上で役立つことが期待されている。
東南アジアおよびオセアニア地域における資料保存活動の登録簿
このオンライン登録簿は、地域において現在進行している保存活動を支援することを目的に作成された。これにより、文書遺産の保存に関して、進行中あるいは最近取り組まれた活動の最新情報が把握できる。登録簿は、2002年の早い段階に、オーストラリア国立図書館のサーバーから利用できるようになる予定。
PADIデータ保存プロジェクト
この活動は、PADIウェブサイト上に集められた情報が長期的に利用できるよう、重要性の高い情報のリンク元からなるネットワーク"図書館"を作ることを目的としている。
リンク元の情報を所有する者に対し、長期にわたりこれらの情報を提供できるかどうかが調査された。
長期的な利用を可能とする上で必要な事項のうち共通に理解されている事項には、次のことが含まれる。
定期的にバックアップが作成されているか、関連するメタデータが記録されているか、継続的な同定を可能とする識別子(persistent identifier)が使われているか、使用されている技術が時代遅れになった時の対策が取られているか。
将来は、PADIデータベースに追加された新しいデータのリンク元は、保存のための選択基準に合致するか定期的に評価されるようになることが予想される。また選ばれたリンク元のデータの長期的利用に対する理解の確立も求められるようになるだろう。
*PADIウェブサイト:オーストラリア国立図書館の運営する、電子情報の保存に関するあらゆる情報の集積サイト
PADIUpdate
PADIUpdateというウェブベースのインターフェースの導入により、PADIウェブサイトが世界中の利用者にとってより利用しやすくなった。
新しいウェブサイトは登録された者にのみ提供され、登録者は直接PADIウェブサイト上に情報を追加することが許可される。これによりPADIの利用者は、世界中にいる登録された情報提供者が直接情報源の識別と選定をした広範囲な情報を利用できるようになる。
グラン・コロンビアのCD-ROM
ベネズエラ国立図書館は、19世紀以降に印刷されたラテンアメリカ諸国の新聞のデジタル化に取り組んでいる。このデジタル化は、ABINIA(イベロアメリヶ国立図書館協会)の"19世紀以降のラテンアメリカ諸国の新聞を救え"という取り組みの中で進められている。活動は、メロン財団の支援を受けており、計画されていたCD-ROMは一旦完成した。このCD-ROMにより、1820年から30年のグラン・コロンビア共和国の時代に流通した新聞を見ることができる。
この時代の新聞は、ラテンアメリカ諸国における最初の統合の経験を反映している。
ラテンアメリカの図書館における保存調査
パリとカラカサの2地域センターは、ラテンアメリカおよびカリブ地域における保存調査と研修の必要性について調査を実施した。調査をもとに今後の活動計画が立てられる。
調査は、IFLAとABINIA(イベロアメリカ図書館協会)の共同により行われた。これまでに30ヶ所からの回答を得ており、詳細は2002年刊行のIPN No.27に報告される予定。
館内研修
PAC地域センターのひとつ、カラカサのベネズエラ国立図書館は、館内職員を対象に、清掃、取り扱い、書庫管理についての研修を実施した。
2000年6月に第1回の研修が行われ、2001年末には他に3回の研修が予定されている。
ロシア外国文献図書館における保存修復センターの設置
モスクワのPAC地域センター、ロシア外国文献図書館は、ライプチヒにある図書保存センタ−と保存修復センター開設のための調整を行っている。2人の職員がライプチヒを実際に訪問した後、最適な建設場所と作業内容を決めるための計画が検討される予定。
「IFLA図書館資料の予防的保存対策の原則」のフランス語版が刊行
ロシア語、ポーランド語、ギリシャ語、スペイン語版に続き、IFLA原則がフランス語版に翻訳された。フランス語版は、PAC国際センターのマリー=テレーズ・バーラモフ氏とヴィルジニー・クレンプ氏により作成され、現在同センターから配布されている。
ポルトガル語、アラビア語、トルコ語への翻訳計画は中断しているが、イタリア語、日本語、マレー語版は現在作成中にある。
フランス国立図書館のPAC国際センター担当職員、ヴィルジニー・クレンプ氏の異動
クレンプ氏は2001年11月フランス国立図書館から異動になった。1992年以来、クレンプ氏はIPNとPACの刊行物を担当しており、この間1999年には出産のために1年間の育児休暇をとっている。
また、PACの諸活動の調整においても、センター長の補佐を務め、特に最近行われたアフリカの研修プログラムは彼女が担当を務めた。
図書館情報資源振興財団(CLIR)がIFLA-PACを支援
アメリカ合衆国のCLIRは現在南アフリカとラテンアメリカ、南ヨーロッパにおける保存プロジェクト、調査・翻訳・ワークショップといった活動を支援している。
IFLA-PACが発展途上国のなかから極めて保存の必要性が急務であると認定した国を支援するために、CLIRは寄付金2万ドルの提供を決めた。これについてIFLA-PAC は、2000年イスラエルにおいて開催されたIFLA年次大会で提出された2001年〜2003年における優先事項に大いに貢献する寛大な寄付金だとして、CLIRに対し非常に感謝している。
アルゼンチンに保存事務所
2001年初頭、英国/アイルランド国立図書館資料保存部をモデルにした保存事務所がアルゼンチンに発足した。
これは図書館、公文書館、美術館や国内の民間機関における需要を満たすものとなるだろう。
7つの地域事務所が認定され、5月からは各コースや出版物、ニュースや企画といった情報をアルゼンチン国内の専門家に向けて提供するe-ニューズレターも手掛けられている。
市立の公文書館・図書館に焦点を当てたプロジェクトは現在考案中である。
災害対策マニュアル(Emergency Response and Salvage Wheel)第3版が完成
災害対策マニュアルの第3版が完成した。このマニュアルは、1997年に出版以来、古文書館、図書館、美術館、史跡関係者にとって必要不可欠な情報源となっている。
また、中国語、ドイツ語、フランス語、スペイン語に翻訳され40ヶ国以上で人気の高い教材となっている。
スイスにおける大量脱酸
スイスで大量脱酸が2000年から実施されている。これはスイス国立図書館とスイス連邦公文書館の合同によるものであり、所蔵資料の60%が酸性資料であったことから端を発した。脱酸方法はバッテル研究所によるペーパーセーブ法による。1993年から1994年の間で12段階で構成されたテストが実施され、その後更なる改良が行われている。
*システムは非水系溶剤を使用する。HMDO(ヘキサメチルジシロキサン)中にマグネシウムエチラートとチタニウムエチラートを溶解した溶剤を使用。
設備運営は共同事業であり、建設費、認可費や設備費は全てスイス政府で負担。但し、運営は民間会社が受け持った。
認可合意書によると、その施設は国立図書館や連邦公文書館所蔵資料を処理するのと同時に、フランス、オーストリア、イタリアといった近隣諸国からの資料も扱うことになる。
スイス国立図書館の保存課長スーザン・へリオン氏は、1999年にオランダ・ハーグで開催されたECPAの会議の場においてすばらしい報告をした。
ヘリオン氏は報告の中で、政治家にプロジェクトに興味を持ってもらえるように説得し、国会で潰されないような戦略方法について述べた。
プロジェクトを調査・研究し、スイスの文化遺産を保護する必要性を政治家に説得するには、2年の歳月と文化財の専門家たちの多大なエネルギーが必要であった。
これはまた、図書館と文書館両者の協力が非常に円滑にいったことの成功例である。
*"Preservation Management -Between Policy and Practice". Edited by Yola de Lusenet. Amsterdam: European Commission on Preservation and Access, 2000. ISBN 90-6984-308-0, pP47-53
会議録はECPAのホームページ上でも閲覧できる。
韓国で「世界の記憶」プログラムの会議開催
クレンプ氏は2001年11月フランス国立図書館から異動になった。1992年以来、クレンプ氏はIPNとPACの刊行物を担当しており、この間1999年には出産のために1年間の育児休暇をとっている。
また、PACの諸活動の調整においても、センター長の補佐を務め、特に最近行われたアフリカの研修プログラムは彼女が担当を務めた。
キューバでの図書館・公文書館の将来
キューバ人40名と世界の文書館員、図書館員がキューバの図書館・公文書館が今すべきこと、そして将来すべきことについてを2001年6月キューバで話し合った。
ここで何度も議題に挙げられたのは直面している複雑化した問題にどう優先順位をつけるかということであった。
連携プレーがこのフィールドには不可欠としながらも、何が一番重要かについては器材や技術、トレーニングや基本的事項についても意見が異なった。
独立した短期的なプロジェクトよりは、綿密に計画された共同事業や長期的な率先力に基づいた包括的、建設的な保存とアクセスに対する戦略確立の必要性が強調された。
マイクロフィルム化に対してのデジタル化が討議され、特に原資料の保存に対する情報の保存が討論された。
参加者はそれぞれの方法を取った場合の利益不利益について討議し、なお且つ、場合によってはデジタル化により原資料が破損されることについての懸念を明らかにした。多くの人がデジタル化の高コストに触れ、キューバの機関にとって現時点では実行不可能かもしれないとしながら、デジタル化とマイクロフィルム化両方の選択肢を考えてよいのではという声があげられた。
また、デジタル化事業とマイクロフィルム化事業のどちらが資金を得やすいかについては、異なる意見があげられた。
会議は的を絞ったオープンな討論に大事な機会を与え、また、個人単位としても機関単位としても進展しつつあるネットワークの土台を作ったと言える。この会合を通じて、ワーキンググループはキューバの図書館、文書館が今現在なすべきこと、将来やるべきことについてより正確につかめたようである。
