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第三章 印刷とブック・デザイン

ウォーターマークの世界

紙にウォーターマークと呼ばれる透かし模様が入っており、それが紙の生産地や生産年の同定に役立つのではないかとの関心は18世紀には持たれていました。1804年にG. Fischerが発表したウォーターマークの一覧 (Beschreibung einiger typographischen Seltenheiten, 6.Lief.) では1301年に作られた紙のウォーターマークが一番古いものとされています。またJ.G.I.Breitkopf (1719-94) やG.Sardiniらはインキュナブラのウォーターマークを調べました。しかし、網羅的な調査まではいたりませんでした。

先駆的なウォーターマークの研究家はスイスのC.ブリッケ (1839-1918) で、生涯を透かし模様の情報収集にささげました。1600年以前に作られた紙に見られる16,000種のウォーターマークを集めたLes filigranes (Genève, Paris, Leipzig, 1907) は記念碑的な著作となりました。彼が見つけた最も古いウォーターマークは1282年に作られた紙のものです。この本では透かし模様が鷲 (aigle) 、牛 (boeuf) のように形で分類され、その透かしが使われている紙の大きさや作られた場所、あるいはその紙が使われた場所や年代が記録されています。この研究によると同じ透かし模様の紙の90%は15年の範囲内で使われており、50%は5年の範囲内で使われているということです。印刷年の記されていないインキュナブラも透かし模様を調べることで、印刷年が推定できるということになります。

しかし、この本でもすべてのウォターマークが網羅されているわけではありませんので、ブリッケ以後もウォーターマークの情報収集が続けられました。1948年にオランダで設立されたPaper Publications SocietyはMonumenta chartae papyraceae historiam illustrantiaという叢書を刊行しましたし、ドイツではG. Piccardが1961年からウォーターマーク集の刊行を行っています。かつてはウォーターマークの形や大きさ等の正確なデータを取るのは困難な作業でしたが、ベータ線照射等の方法が開発されることでデータが比較的容易に入手できるようになりましたので、International Association of Paper Historiansという団体はウォーターマークを記述する規格を提案しています。

こうして得られたデータを基にウォーターマークのデータベース作成も行われており、オランダ国立図書館ではネーデルランドで印刷されたインキュナブラ275点に見られるウォーターマーク4,000点のデータベースをインターネット上で公開しています。

この他以下のサイトでもウォーターマークのデータベースが公開されています。

ウォーターマークの実例

左の写真は 1480年にパドヴァのJohannes Herbert, de Seligenstadtが印刷したPetrus de Monte: Repertorium utriusque jurisの一葉に見られるウォーターマークですが、この模様はブリッケのLes filigranesではMonts (山) に分類されています。ブリッケの採集したものでは11909 (Udine,1423) 、11910 (Vicence,1433) 、11911 (Gurck,1448) が似ています。 (下の画像) また、この模様は1803年にBrusselで出版されたSupplément au Catalogue des livres de la Bibliothèque de M. C. de la Serna Santanderによりますとヴェネツィアのニコラ・ジャンソンが1472-77年に印刷したインキュナブラの中に見られるということです。

ブリッケが採集したウォーターマークの模様

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