第2部 文化の日仏交流

第2章 芸術

西洋の芸術は江戸時代以前からすでに渡来していたが、フランスという国を意識して美術や音楽を受容するようになったのは明治以降のことであった。工部美術学校を拠点に西洋風の美術が本格的に導入された後、浅井忠(1856-1907)らの明治美術会を中心として洋画壇が形成され、フランスから帰国した黒田清輝(1866-1924)が外光派の画風を日本にもたらした。以後、主流派に移り変わりはあるが、渡仏した人々から届く便りや海を越えて日本に持ち込まれる美術・音楽作品は、時代の最先端で輝くフランス芸術の息吹を伝え、日本人に憧れの気持ちを抱かせた。本章では、フランスの地を踏んだ芸術家を紹介し、フランスの美術が日本にどのように浸透していったかをたどる。また、美術とは異なる経路で日本に影響を与えた音楽の分野についても取り上げる。