御法川直三郎出品の揚返機械

『第四回(明治廿八年)内国勧業博覧会審査報告』 第7部 (1896)

解説

第4回内国勧業博覧会では、製糸機械は出品数こそ多いがさしたる進歩はなく、機械といっても木製で歯車の歯の形状も持たないものがあると酷評されているが、その中でも御法川の本機は、実用に適し、機械としての体裁を備えているとの評価を受けた。
ひし形の溝を持った円を回転させることにより、それと連動した送糸棒が左右に往復し、綾振り*を行いながら糸を巻き取る。当時、日本産の生糸の質が悪いために、アメリカでストッキングを作る女工のストライキが頻発していた。そのため御法川に改善策が依頼され、1891年に開発したのがこの機械。これまでの、複数の製糸機に一斉に綾振りを行うものではなく、それぞれの製糸機ごとに綾振りを行うため、品質が向上した。銘々振絡交機とも呼ばれる。
また、御法川が同時に出品した四条繰機は、枠の回転速度が遅いほうが生糸の品質が良好であることに気付き、速度を遅くする代わりに繰る糸の本数を増やして生産高を減らさないという発想で開発した機械で、その後、条数を増やし、大々的に使われることになった。

* 綾振り 糸が固着しないよう、巻き取る際に角度をつける。

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