日本國憲法

(機密)
三〇部の内第四号

日本国憲法

第一章 天皇

第一条 天皇ハ日本国民至高ノ総意ニ基キ日本国ノ象徴及日本国民統合ノ標章タル地位ヲ保有ス。
第二条 皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ世襲シテ之ヲ継承ス。
第三条 天皇ノ国事ニ関スル一切ノ行為ハ内閣ノ輔弼ニ依ルコトヲ要ス。内閣ハ之ニ付其ノ責ニ任ズ。
第四条 天皇ハ此ノ憲法ノ定ムル国務ニ限リ之ヲ行フ。政治ニ関スル権限ハ之ヲ有スルコトナシ。
天皇ハ法律ノ定ムル所ニ依リ其ノ機能ノ一部ヲ委任シテ行使セシムルコトヲ得。
第五条 皇室典範ノ定ムル所ニ依リ摂政ヲ置クトキハ摂政ハ天皇ノ名ニ於テ其ノ権限ヲ行フ。此ノ場合ニ於テハ前条第一項ノ規定ヲ準用ス。
第六条 天皇ハ国会ノ決議ヲ経テ内閣総理大臣ヲ任命ス。
第七条 天皇ハ内閣ノ輔弼ニ依リ国民ノ為ニ左ノ国務ヲ行フ。
一 憲法改正、法律、閣令及条約ノ公布
二 国会ノ召集
三 衆議院ノ解散
四 衆議院議員ノ総選挙ヲ行フベキ旨ノ命令
五 国務大臣、大使及法律ノ定ムル所ニ依ル其ノ他ノ官吏ノ任免
六 大赦、特赦、減刑、刑ノ執行ノ停止及復権
七 栄典ノ授与
八 外国ノ大使及公使ノ引接
九 式典ノ挙行
第八条 皇室ニ対シ又ハ皇室ヨリスル財産ノ授受及収支ハ国会ノ承諾ナクシテ之ヲ為スコトヲ得ズ。

第二章 戦争ノ廃止

第九条 戦争ヲ国権ノ発動ト認メ武力ノ威嚇又ハ行使ヲ他国トノ間ノ争議ノ解決ノ具トスルコトハ永久ニ之ヲ廃止ス。
陸海空軍其ノ他ノ戦力ノ保持及国ノ交戦権ハ之ヲ認メズ。

第三章 国民ノ権利及義務

第十条 国民ハ凡テノ基本的人権ノ享有ヲ妨ゲラルルコトナシ。
此ノ憲法ノ保障スル国民ノ基本的人権ハ其ノ貴重ナル由来ニ鑑ミ、永遠ニ亙ル不可侵ノ権利トシテ現在及将来ノ国民ニ賦与セラルベシ。
第十一条 此ノ憲法ノ保障スル自由及権利ノ享有ハ国民ノ不断ノ監視ニ依リテ保持セラルベク、国民ハ其ノ自由及権利ノ濫用ヲ自制シ常ニ公共ノ福祉ノ為ニ之ヲ利用スルノ義務ヲ負フ。
第十二条 凡テノ国民ハ個人トシテ尊重セラルベク、其ノ生命、自由及幸福ノ追求ニ対スル権利ハ公共ノ福祉ニ牴触セザル限立法其ノ他諸般ノ国政ノ上ニ於テ最大ノ考慮ヲ払ハルベシ。
第十三条 凡テノ国民ハ法律ノ下ニ平等ニシテ、人種、信条、性別、社会上ノ身分又ハ門閥ニ依リ政治上、経済上又ハ社会上ノ関係ニ於テ差別セラルルコトナシ。
爵位、勲章其ノ他ノ栄典ハ特権ヲ伴フコトナシ。
第十四条 外国人ハ均シク法律ノ保護ヲ受クルノ権利ヲ有ス。
第十五条 官吏其ノ他ノ公務員ハ国家社会ノ公僕ニシテ、其ノ選任及解任ノ機能ノ根源ハ全国民ニ存ス。
第十六条 凡テノ選挙ニ於テ投票ノ秘密ハ不可侵ニシテ、選挙人ハ其ノ為シタル被選挙人ノ選択ニ関シ責ヲ問ハルルコトナシ。
第十七条 凡テノ国民ハ損害ノ救済、公務員ノ罷免及法令ノ制度改廃ニ関シ請願ヲ為スノ権利ヲ有シ、之ヲ為シタルノ故ヲ以テ害悪ヲ加ヘラルルコトナシ。
第十八条 凡テノ国民ハ信教ノ自由ヲ有シ、礼拝、祈祷其ノ他宗教上ノ行為ヲ強制セラルルコトナシ。
宗教団体ハ政治ニ干与シ又ハ国ヨリ特権ヲ附与セラルルコトヲ得ズ。国及其ノ機関ハ宗教教育ノ実施其ノ他宗教上ノ活動ヲ為スコトヲ得ズ。
第十九条 凡テノ国民ハ其ノ思想及良心ノ自由ヲ侵サルルコトナシ。
第二十条 凡テノ国民ハ安寧秩序ヲ妨ゲザル限ニ於テ言論、著作、出版、集会及結社ノ自由ヲ有ス。
検閲ハ法律ノ特ニ定ムル場合ノ外之ヲ行フコトヲ得ズ。
第二十一条 凡テノ国民ハ信書其ノ他ノ通信ノ秘密ヲ侵サルルコトナシ。公共ノ安寧秩序ヲ保持スル為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル。
第二十二条 凡テノ国民ハ研学ノ自由ヲ侵サルルコトナシ。
第二十三条 凡テノ国民ハ法律ノ定ムル所ニ依リ其ノ能力ニ応ジ均シク教育ヲ受クルノ権利ヲ有ス。
凡テノ国民ハ法律ノ定ムル所ニ依リ其ノ保護スル児童ヲシテ普通教育ヲ受ケシムルノ義務ヲ負フ。其ノ教育ハ無償トス。
第二十四条 凡テノ国民ハ法律ノ定ムル所ニ依リ勤労ノ権利ヲ有ス。賃金、就業時間其ノ他勤労条件ニ関スル事項ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム。
第二十五条 勤労者ハ法律ノ定ムル所ニ依リ団結ノ権利及団体交渉其ノ他ノ集団行動ヲ為スノ権利ヲ有ス。
第二十六条 凡テノ国民ハ公共ノ福祉ニ牴触セザル限ニ於テ居住、移転及生業選択ノ自由ヲ有ス。
国民ハ外国ニ移住シ又ハ国籍ヲ離脱スルノ自由ヲ侵サルルコトナシ。
第二十七条 凡テノ国民ハ法律ノ定ムル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハルルコトナシ。
第二十八条 凡テノ国民ハ法律ニ依ルニ非ズシテ其ノ生命若ハ身体ノ自由ヲ奪ハレ又ハ処罰セラルルコトナシ。
残虐ナル刑罰ハ之ヲ課スルコトヲ得ズ。
第二十九条 凡テノ国民ハ種類ノ如何ヲ問ハズ其ノ意ニ反シテ役務ニ服セシメラルルコトナク、且刑罰ノ場合ヲ除クノ外苦役ヲ強制セラルルコトナシ。
児童ノ虐使ハ之ヲ禁止ス。
第三十条 何人ト雖モ現行犯罪ノ場合ヲ除クノ外正当ナル令状ニ依ルニ非ズシテ逮捕セラルルコトナク、且正当ノ理由ナクシテ拘禁セラルルコトナシ。
拷問ハ之ヲ禁止ス。
第三十一条 何人ト雖モ裁判所ノ判決確定後ニ於テ同一ノ刑事事件ニ付再ビ審理セラルルコトナシ。但シ法律ノ定ムル再審ノ場合ハ此ノ限ニ在ラズ。
第三十二条 何人ト雖モ自白又ハ自己ノ不利益ナル証言ヲ為スコトヲ強制セラルルコトナシ。
自白ガ直接又ハ間接ニ強制、拷問又ハ脅迫ノ下ニ為サレタルトキハ証拠トシテ之ヲ認ムルコトヲ得ズ。
自白ノ外他ニ犯罪ノ証拠ナキ者ニ対シテハ有罪ノ判決ヲ為スコトヲ得ズ。
第三十三条 何人ト雖モ適法ノ行為ニ付後日遡及シテ処罰セラルルコトナシ。
第三十四条 凡テノ国民ハ法律ニ依ルニ非ズシテ住所ニ侵入セラレ及捜索セラルルコトナシ。
緊急ノ場合ヲ除クノ外住所ノ侵入、捜索及押収ハ正当ナル令状ニ基クニ非ザレバ之ヲ為ストコトヲ得ズ。
第三十五条 凡テノ国民ハ其ノ財産権ヲ侵サルルコトナシ。
財産権ノ内容及範囲ハ公共ノ福祉ニ反セザル限度ニ於テ法律ヲ以テ之ヲ定ム。
公共ノ福祉ノ為必要ナル処分ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム。但シ公正ナル補償ヲ与フルコトヲ要ス。
第三十六条 財産権ハ義務ヲ件フ。其ノ行使ハ公共ノ福祉ノ為ニ為サザルベキモノトス。
第三十七条 婚姻ハ男女相互ノ合意ニ基キテノミ成立シ、且夫婦ガ同等ノ権利ヲ有スルコトヲ基本トシ相互ノ協力ニ依リ維持セラルベキモノトス。
第三十八条 凡テ国民生活ニ関スル法令ハ自由ノ保障、正義ノ昂揚並ニ公共ノ福祉及民主主義ノ向上発展ヲ旨トシテ之ヲ定ムルコトヲ要ス。

第四章 国会

第三十九条 国会ハ国権ノ最高機関ニシテ立法権ヲ行フ。
第四十条 国会ハ衆議院及参議院ノ両院ヲ以テ成立ス。
第四十一条 衆議院ハ選挙セラレタル議員ヲ以テ組織ス。
衆議院議員ノ員数ハ三百人乃至五百人ノ間ニ於テ法律ヲ以テ之ヲ定ム。
第四十二条 衆議院議員ノ選挙人及候補者タル資格ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム。但シ性別、人種、信条又ハ社会上ノ身分ニ依リテ差別ヲ附スルコトヲ得ズ。
第四十三条 衆議院議員ノ任期ハ四年トス。但シ衆議院ノ解散ニ依リ其ノ満期前ニ終了スルコトヲ妨ゲズ。
第四十四条 衆議院議員ノ選挙、選挙区及投票ノ方法ニ関スル事項ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム。
第四十五条 参議院ハ地域別又ハ職能別ニ依リ選挙セラレタル議員及内閣ガ両議院ノ議員ヨリ成ル委員会ノ決議ニ依リ任命スル議員ヲ以テ組織ス。
参議院議員ノ員数ハ二百人乃至三百人ノ間ニ於テ法律ヲ以テ之ヲ定ム。
第四十六条 参議院議員ノ任期ハ第一期ノ議員ノ半数ニ当ル者ノ任期ヲ除クノ外六年トシ、各種ノ議員ニ付三年毎ニ其ノ半数ヲ改選ス。
第四十七条 参議院議員ノ選挙又ハ任命、各種議員ノ員数及其ノ候補者タル資格ニ関スル事項ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム。
第四十八条 何人ト雖モ同時ニ両議院ノ議員タルコトヲ得ズ。
第四十九条 両議院ノ議員ハ法律ノ定ムル所ニ依リ国庫ヨリ相当額ノ歳費ヲ受ク。
第五十条 両議院ノ議員ハ法律ノ定ムル場合ヲ除クノ外国会ノ会期中逮捕セラルルコトナシ。会期前ニ逮捕セラレタル議員ハ其ノ院ノ要求アルトキハ会期中之ヲ釈放スベシ。
第五十一条 両議院ノ議員ハ議院ニ於テ為シタル演説、討議又ハ表決ニ付院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ。
第五十二条 国会ハ少クトモ毎年一囘之ヲ召集ス。
第五十三条 内閣ハ臨時議会ヲ召集スルコトヲ得。各議院議員ノ総員四分ノ一以上ニ当ル者ノ要求アリタルトキハ之ヲ召集スルコトヲ要ス。
第五十四条 衆議院解散ヲ命ゼラレタルトキハ解散ノ日ヲ距ル三十日乃至四十日ノ期間内ニ衆議院議員ノ総選挙ヲ行ヒ、其ノ選挙ノ日ヨリ三十日内ニ国会ヲ召集スベシ。
衆議院解散ヲ命ゼラレタルトキハ参議院ハ同時ニ閉会セラルベシ。
第五十五条 衆議院ハ同一事由ニ基キ重ネテ之ヲ解散スルコトヲ得ズ。
第五十六条 両議院ハ各々其ノ議員ノ選挙、任命又ハ資格ニ関スル争訟ヲ裁判ス。
議員タルコトヲ証セラレタル者ノ地位ヲ剥奪スル裁判ヲ為スニハ出席議員ノ三分ノ二以上ノ多数ヲ以テ議決ヲ為スコトヲ要ス。
第五十七条 両議院ハ各々其ノ総員三分ノ一以上出席スルニ非ザレバ議事ヲ開キ議決ヲ為スコトヲ得ズ。
両議員ノ議事ハ此ノ憲法ニ特例ヲ定メタル場合ヲ除クノ外出席議員ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス。可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル。
第五十八条 両議院ノ議事ハ公開ス。秘密会ヲ開クコトヲ得ズ。
両議院ハ其ノ議事ノ記録ヲ保存シ、且之ヲ公刊シテ公衆ニ頒布スベシ。
出席議員ノ五分ノ一以上ノ要求アルトキハ議案ニ対スル各議員ノ賛否ヲ議事録ニ記載スベシ。
第五十九条 両議院ハ各々議長其ノ他ノ役員ヲ選任ス。
両議院ハ各々其ノ会議及議事ニ関スル規則ヲ定メ、議員ニシテ紀律ヲ乱ルモノアルトキハ之ヲ処罰スルコトヲ得。但シ議員ヲ除名スルニハ出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ以テ議決ヲ為スコトヲ要ス。
第六十条 凡テ法律ハ法律案ニ依ルニ非ザレバ之ヲ議決スルコトヲ得ズ。
法律案ハ両議院ニ於テ可決セラレタルトキ法律トシテ成立ス。
衆議院ニ於テ引続キ三囘可決シテ参議院ニ移シタル法律案ハ衆議院ニ於テ之ニ関スル最初ノ議事ヲ開キタル日ヨリ二年ヲ経過シタルトキハ参議院ノ議決アルト否トヲ問ハズ法律トシテ成立ス。
第六十一条 予算ハ前ニ衆議院ニ提出スベシ。
参議院ニ於テ衆議院ト異リタル議決ヲ為シタル場合ニ於テ、法律ノ定ムル所ニ依リ両議院ノ協議会ヲ開クモ仍意見一致セザルトキハ衆議院ノ決議ヲ以テ国会ノ決議トス。
第六十二条 前条第二項ノ規定ハ条約、国際約定及協定ノ締結ニ要スル国会ノ協賛ニ付之ヲ準用ス。
第六十三条 両議院ハ各々国務ニ関スル調査ヲ為シ、之ニ関スル証人ノ出頭、証言ノ供述及記録ノ提出ヲ要求スルコトヲ得。此ノ場合ニ於テハ法律ノ定ムル所ニ依リ其ノ要求ニ応ゼザル者ヲ処罰スルコトヲ得。
第六十四条 内閣総理大臣及国務各大臣ハ両議院ノ一ニ議席ヲ有スルト否トヲ問ハズ何時タリトモ法律案ニ付討論ヲ為ス為出席スルコトヲ得。質問又ハ質疑ニ対スル答弁ヲ要求セラレタルトキハ出席スルコトヲ要ス。
第六十五条 国会ハ罷免ノ訴追ヲ受ケタル裁判官ヲ裁判スル為両議院ノ議員ヲ以テ組織スル弾劾裁判所ヲ構成スベシ。
第六十六条 国会ハ此ノ憲法ノ規定ヲ施行スルニ必要ナル凡テノ法律ヲ制定スベシ。

第五章 内閣

第六十七条 行政権ハ内閣之ヲ行フ。
第六十八条 内閣ハ其ノ首長タル内閣総理大臣及其ノ他ノ国務大臣ヲ以テ組織ス。
内閣ハ行政権ノ行使ニ付国会ニ対シ連帯シテ其ノ責ニ任ス。
第六十九条 内閣総理大臣ハ国会ノ決議ヲ以テ選定ス。此ノ選定ノ議事ハ他ノ凡テノ議事ニ先チ之ヲ行フベシ。
衆議院ト参議院トガ異リタル選定ヲ為シタル場合ニ於テ、法律ノ定ムル所ニ依リ両議院ノ協議会ヲ開クモ仍意見一致セザルトキハ衆議院ノ決議ヲ以テ国会ノ決議トス。
第七十条 内閣総理大臣ハ国会ノ協賛ヲ以テ国務大臣ヲ選定ス。此ノ協賛ニ付テハ前条第二項ノ規定ヲ準用ス。
内閣総理大臣ハ任意ニ国務大臣ノ罷免ヲ決定スルコトヲ得。
第七十一条 内閣ハ衆議院ニ於テ不信任ノ決議案ヲ可決シ又ハ信任ノ決議案ヲ否決シタルトキハ十日以内ニ衆議院ヲ解散セザル限リ総辞職ヲ為スコトヲ要ス。
第七十二条 内閣総理大臣欠クルニ至リタルトキ又ハ衆議院議員ノ任期満了ニ因ル総選挙ノ後ニ於テ初メテ国会ノ召集アリタルトキハ内閣ハ総辞職ヲ為スコトヲ要ス。
第七十三条 前二条ノ場合ニ於テハ内閣ハ新ニ内閣総理大臣ノ任命セラルル迄ノ間仍其ノ職務ヲ行フベシ。
第七十四条 内閣総理大臣ハ内閣ヲ代表シテ法律案ヲ提出シ、一般国務及外交関係ノ状況ヲ国会ニ報告シ、且行政各部ヲ監視董督ス。
第七十五条 内閣ハ他ノ一般政務ノ外特ニ左ノ事務ヲ執行ス。
一 法律ヲ誠実ニ執行シ国務ヲ掌理スルコト
二 外交関係ヲ処理スルコト
三 条約、国際約定及協定ヲ締結スルコト但シ時宜ニ従ヒ事前又ハ事後ニ於テ国会ノ協賛ヲ得ルコトヲ要ス。
四 国会ノ定ムル規準ニ従ヒ内政事務ヲ掌理スルコト
五 予算ヲ作成シテ国会ニ提出スルコト
六 此ノ憲法及法律ノ規定ヲ実施スル為命令及規則ヲ制定公布スルコト但シ其ノ命令及規則ニハ刑罰規定ヲ設クルコトヲ得ズ
七 大赦、特赦、減刑、刑ノ執行停止及復権ヲ決定スルコト
第七十六条 衆議院ノ解散其ノ他ノ事由ニ因リ国会ヲ召集スルコト能ハザル場合ニ於テ公共ノ安全ヲ保持スル為特ニ緊急ノ必要アルトキハ、内閣ハ事後ニ於テ国会ノ協賛ヲ得ルコトヲ条件トシテ法律又ハ予算ニ代ルベキ閣令ヲ制定スルコトヲ得。
第七十七条 凡テノ法律及命令ハ主務大臣署名シ、内閣総理大臣之ニ副署スルコトヲ要ス。
第七十八条 国務各大臣ハ其ノ在任中ハ内閣総理大臣ノ許諾ナクシテ訴追セラルルコトナシ、但シ之ニ因リテ訴追ノ権利ヲ害スルコトヲ得ズ。

第六章 司法

第七十九条 司法権ハ裁判所独立シテ之ヲ行フ。
裁判所ハ最高裁判所及法律ヲ以テ定ムル其ノ他ノ下級裁判所トス。
特別裁判所ハ之ヲ設置スルコトヲ得ズ。
第八十条 最高裁判所ハ終審裁判所トス。
第八十一条 此ノ憲法第三章ノ規定ニ関聯アル法令又ハ行政行為ガ此ノ憲法ニ違反スルヤ否ヤノ争訟ニ付テハ最高裁判所ノ裁判ヲ以テ終審トス。
前項ニ掲グルモノヲ除キ、法令又ハ行政行為ガ此ノ憲法ニ違反スルヤ否ヤノ争訟ニ付最高裁判所ノ為シタル判決ニ対シテハ国会ハ再審ヲ為スコトヲ得。此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非ザレバ最高裁判所ノ判決ヲ破棄スルコトヲ得ズ。
前項ノ再審ノ手続ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム。
第八十二条 外国ノ大使、公使及領事ニ係ル事件ノ管轄ハ最高裁判所ニ専属ス。
第八十三条 凡テ裁判官ハ良心ニ従ヒ厳正公平ニ其ノ職務ヲ執行スベシ。
裁判官ハ此ノ憲法及法律ニ依ルノ外其ノ職務ノ執行ニ付他ノ干渉ヲ受クルコトナシ。
第八十四条 最高裁判所ノ裁判官ノ任命ハ之ニ次グ最初ノ衆議院議員総選挙ノ際国民ノ審査ニ付シ、爾後十年ヲ経過シタル後最初ニ行ハルル衆議院議員選挙ノ際国民ノ審査ニ付スベシ。其ノ後ニ於テ亦同ジ。
前項ノ場合ニ於テ、国民ノ多数ガ当該裁判官ノ罷免ヲ表示シタルトキハ其ノ者ハ罷免セラルベシ。
前項ノ審査ニ関スル事項ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム。
第八十五条 下級裁判所ノ裁判官ノ任命ハ最高裁判所ノ指名ニ係ル少クトモ倍数ノ候補者ノ中ヨリ之ヲ為スベシ。
下級裁判所ノ判事ハ其ノ任期ヲ十年トシ、再任ヲ妨ゲズ。
第八十六条 裁判官ハ満七十歳ニ達シタトキハ当然退官ス。
第八十七条 前三条ニ掲グル場合ノ外、裁判官ハ刑法ノ宣告、弾劾裁判所ノ判決又ハ懲戒事犯若ハ心身耗弱ヲ理由トスル裁判所ノ罷免判決ニ依ルニ非ザレバ罷免セラルルコトナシ。
弾劾ニ関スル事項ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム。
第八十八条 裁判官ハ法律ノ定ムル所ニ依リ相当額ノ俸給ヲ受ク。
裁判官ハ懲戒ノ処分其ノ他法律ノ特ニ定ムル事由ニ依ルノ外其ノ意ニ反シテ其ノ俸給ヲ滅ゼラルルコトナシ。
第八十九条 裁判ノ対審及判決ハ之ヲ公開ス。但シ安寧秩序又ハ風俗ヲ害スルノ虞アルトキハ法律ノ定ムル所ニ依リ裁判所ノ決議ヲ以テ対審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得。
前項但書ノ規定ハ政治ニ係ル犯罪及出版物ニ係ル犯罪其ノ他憲法第三章ノ保障スル国民ノ権利ニ係ル事件ニ付テハ之ヲ適用セズ。
第九十条 最高裁判所ハ此ノ憲法及法律ニ定ムルモノノ外訴訟手続ノ細目、裁判所内部ノ規律其ノ他司法事務処理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得。
下級裁判所ハ最高裁判所ノ委任ニ基キ当該裁判所ノ司法事務処理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得。

第七章 会計

第九十一条 租税ヲ課シ又ハ現行ノ租税ヲ変更スルハ法律ヲ以テスルコトヲ要ス。
現行ノ租税ハ更ニ法律ヲ以テ之ヲ改メザル限ハ旧ニ依リ之ヲ徴収ス。
第九十二条 国債ヲ起シ及予算ニ定メタルモノヲ除クノ外、国庫ノ負担ト為ルベキ契約ヲ為スハ国会ノ協賛ヲ経ベシ。
第九十三条 通貨ノ価値ノ決定及通貨ノ発行ニ関スル事項ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム。
第九十四条 国ノ歳出歳入ハ毎年予算ヲ以テ国会ノ協賛ヲ経ベシ。
第九十五条 避クベカラザル予算ノ不足ヲ補フ為ニ又ハ予算ノ外ニ生ジタル必要ノ費用ニ充ツル為ニ予備費ヲ設クベシ。
予備費ヲ支出シタルトキハ後日国会ノ承諾ヲ求ムルコトヲ要ス。
第九十六条 皇室経費ニ関スル予算ハ国ノ予算ノ一部トス。世襲財産ヲ除ク皇室財産ニ付生ズル収支亦同ジ。
第九十七条 国又ハ地方公共団体ハ宗教ニ関スル団体ニ対シ金銭其ノ他ノ財産ヲ出損スルコトヲ得ズ。国ノ管理ニ属セザル慈善、教育其ノ他之ニ類スル事業ニ対シ亦同ジ。
第九十八条 国ノ歳出歳入ノ決算ハ会計検査院之ヲ検査確定シ、内閣ハ其ノ検査報告ト共ニ之ヲ国会ニ提出スベシ。
会計検査院ノ組織及職権ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム。
第九十九条 内閣ハ国会及国民ニ対シ少クトモ毎年一囘国ノ財政ノ概要ヲ報告スベシ。
第百条 本章ニ揚グルモノノ外、国ノ会計及国有財産ニ関スル事項ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム。

第八章 地方自治

第百一条 地方公共団体ノ組織及運営ニ関スル規定ハ地方自治ノ本旨ニ基キ法律ヲ以テ之ヲ定ム。 第百二条 地方公共団体ニハ法律ノ定ムル所ニ依リ其ノ議事機関トシテ議会ヲ設クベシ。
地方税徴収権ヲ有スル地方公共団体ノ長及其ノ議会ノ議員ハ法律ノ定ムル所ニ依リ当該地方公共団体ノ住民ニ於テ之ヲ選挙スベシ。
第百三条 地方公共団体ノ住民ハ自治ノ権能ヲ有シ、法律ノ範囲内ニ於テ条例及規則ヲ制定スルコトヲ得。
第百四条 一ノ地方公共団体ニノミ適用アル特別法ハ法律ノ定ムル所ニ依リ当該地方公共団体ノ住民多数ノ承認ヲ得ルニ非ザレバ国会之ヲ制定スルコトヲ得ズ。

第九章 補則

第百五条 此ノ憲法ノ改正ハ国会之ヲ発議シ国民ニ提案シテ其ノ承認ヲ求ムベシ。
国会ノ発議ハ両議院各々其ノ議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非ザレバ其ノ議決ヲ為スコトヲ得ズ。
国民ノ承認ハ法律ノ定ムル所ニ依リ国民投票ノ多数ヲ以テ之ヲ決ス。
憲法改正案ハ国民ノ承認アリタルトキ憲法改正トシテ成立ス。
憲法改正ハ天皇第七条ノ規定ニ従ヒ之ヲ公布ス。
第百六条 皇室典範ノ改正ハ天皇第三条ノ規定ニ従ヒ議案ヲ国会ニ提出シ法律案ト同一ノ規定ニ依リ其ノ議決ヲ経ベシ。
前項ノ議決ヲ経タル皇室典範ノ改正ハ天皇第七条ノ規定ニ従ヒ之ヲ公布ス。
第百七条 此ノ憲法並ニ之ニ基キ制定セラレタル法律及条約ハ国ノ最高ノ法規ニシテ、之ニ反スル法令、詔勅又ハ行政行為ハ其ノ効ナシ。
第百八条 此ノ憲法施行ノ時ニ於テ現ニ国務大臣、国会議員、裁判官其ノ他ノ公務員タル者ハ後任者ノ選挙又ハ任命セラルル迄此ノ憲法ノ規定ニ拘ラズ仍従前ノ規定ニ従ヒ在任ス。
第百九条 天皇、摂政、国務大臣、国会議員、裁判官其ノ他凡テノ公務員ハ此ノ憲法ヲ尊重擁護スル義務ヲ負フ。
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