用語解説・略語一覧

用語解説(50音順)

略語一覧

憲法研究会

「憲法草案要綱」を作成した民間グループ。統計学者の高野岩三郎の呼びかけで1945年11月5日に結成された。メンバーは、高野、馬場恒吾、杉森孝次郎、森戸辰男、岩淵辰雄、室伏高信、鈴木安蔵ら。国民主権や生存権規定、寄生的土地所有の廃止などを盛りこんだ改正案の内容にはGHQのスタッフも注目し、GHQ草案作成に大きな影響を与えた。なお、憲法研究会案に満足できなかった高野は、天皇制廃止・大統領制を採用した独自の「改正憲法私案要綱」を雑誌に発表した。

憲法問題調査委員会(松本委員会)

幣原内閣に設けられた憲法改正の調査研究を目的とした委員会。委員長に松本烝治が就いたことから、「松本委員会」ともいわれる。1945年10月27日から1946年2月2日のあいだに、総会が7回、調査会・小委員会が15回開かれた。当初学問的な調査・研究を主眼とし、憲法改正を目的とはしていなかったが、しだいにGHQや議会・世論などに応えるかたちで憲法改正案の策定の方向に進み、松本の私案である「憲法改正私案」と委員会の二つの案「憲法改正要綱」(甲案)、「憲法改正案」(乙案)が作成された。このうち、甲案がGHQに提出され、拒否されたあとは討議の中心がGHQ草案に移ったため、事実上委員会はその役目を終えた。

極東委員会(FEC)

日本占領管理に関する連合国の最高政策決定機関。FECは、Far Eastern Commissionの略称。1945年12月にモスクワで開かれた米・英・ソ3国外相会議で極東諮問委員会(FEAC)に代わり、日本の占領管理に関する機関として設置が決定。本部はワシントンに置かれた。委員会は、13か国(米国・英国・中国・ソ連・フランス・インド・オランダ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド・フィリピン、1949年11月からビルマ・パキスタンが加わる)の代表で構成された。

委員会が決定した政策は、米国政府を通じて、連合国最高司令官に指令として伝達された。委員会の決定については、米・英・中・ソの4か国に拒否権が与えられていたが、緊急を要する問題については、アメリカ政府に、委員会の決定を待たずに指令を発する権限が与えられていた(中間指令権)。ただし、日本の憲政機構、管理制度の根本的変更および日本政府全体の変更については、必ず委員会の事前の決定を必要とした。

極東委員会は、1952年4月28日のサンフランシスコ講和条約の発効とともに消滅した。

国務・陸・海軍3省調整委員会(SWNCC)

戦後の占領政策について国務省、陸軍省、海軍省3省の意見調整を図るために、1944年12月に設置された米国の機関。SWNCC(スウィンク)は、State-War-Navy Coordinating Committeeの略称。各省の政策はSWNCCの会議において調整され、統合参謀本部の賛成を得た上で、アメリカ政府の政策となった。SWNCCの下部機関として、極東小委員会(SFE)が設置され、対日占領政策の原案作成に当たった。SWNCCの主要な政策決定としては、「降伏後に於ける米国の初期の対日方針」(SWNCC150/4)や「日本の統治体制の改革」(SWNCC228)などがある。

諮詢

天皇が参考として枢密院、皇族会議などの機関に意見を求めること。ここでは、枢密顧問官らで構成された天皇の諮問機関である枢密院が、天皇から、明治憲法第56条にもとづき、憲法改正案について意見を求められたことを意味する。

自由の指令

反体制的な思想や言動を厳しく取り締まっていた日本政府に対し、1945(昭和20)年10月4日、GHQが、自由を抑圧する制度を廃止するよう命じた指令。正式には「政治的、公民的及び宗教的自由に対する制限の除去の件(覚書)」という。「人権指令」とも呼ばれる。この指令は、思想、信仰、集会及び言論の自由を制限していたあらゆる法令の廃止、内務大臣・特高警察職員ら約4,000名の罷免・解雇、政治犯の即時釈放、特高の廃止などを命じていた。東久邇宮内閣はこの指令を実行できないとして、翌5日に総辞職した。つぎの幣原内閣では、この指令に基づき共産党員など政治犯約3,000人を釈放、治安維持法など15の法律・法令を廃止した。

対日理事会(ACJ)

連合国最高司令官に助言・協議するため東京に設置された日本占領管理機関であり、極東委員会の出先機関。ACJはAllied Council for Japanの略称。1945年12月にモスクワで開かれた米・英・ソ3国外相会議で、極東委員会のワシントン設置とあわせて対日理事会を東京に設置することが決定された。理事会は、米・英連邦(オーストラリアが英国・オーストラリア・ニュージーランド・インドを同時に代表)・ソ連・中華民国の4か国で構成され、議長には米国代表である連合国最高司令官(またはその代理)が就任した。

理事会の任務は、降伏条項や占領管理に関する指令の実施について連合国最高司令官と協議し助言することであったが、実際には最高司令官を監視・チェックするねらいがあった。ただ、占領初期に農地改革や公職追放でわずかに影響力を発揮した以外は、マッカーサーが連合国の介入を嫌ったことや冷戦の開始に伴う米ソ間の対立のため、理事会は形骸化し、ほとんど機能することはなかった。対日理事会は、極東委員会と同様、1952年4月28日のサンフランシスコ講和条約の発効とともに、その役割を終えた。

内大臣府

内大臣は、内府とも呼ばれ、つねに天皇の側にあって補佐する宮中の官職。1885(明治18)年に内閣制度が創設されたときに、内閣とは別に宮中に設置された。内大臣の役所を内大臣府といい、御璽・国璽(天皇・国家の印)を保管し、詔勅・勅書その他の宮廷の文書に関する事務などをつかさどった。また、人民より天皇に奉呈する請願を取り継ぎ、天皇の意見に従って、これを処理した。内大臣は、昭和に入ると、元老に代わって、後継総理の決定などでしだいに強い発言力を持つようになった。1945年11月24日に廃止。

文民条項

内閣総理大臣その他の国務大臣は、「文民」でなければならないとする日本国憲法第66条第2項のこと。GHQが、極東委員会の強い要望を受けて指示してきたため、貴族院の審議過程において改正案に挿入された。「文民」という言葉は当時の日本語にはなく、GHQの文書にあったciviliansという語に対する造語である。

ポツダム宣言

米・英・中3国が日本に占領方針を示し、「無条件」降伏を迫った共同宣言。ドイツのポツダムにおける、スターリンソ連共産党書記長、チャーチル英首相、トルーマン米大統領の会談により採択され、蒋介石中国国民政府主席の同意を得たのち1945年7月26日に発表された。ソ連は1945年8月8日の対日参戦と同時に宣言に加わった。

当初、鈴木貫太郎内閣は宣言を「黙殺」していたが、8月14日の御前会議で受諾を決定。宣言は、軍国主義勢力の排除、連合国による日本占領、カイロ宣言(1943年12月1日、米英中三国首脳が、対日戦争の目的・戦後処理の原則などについて発した宣言)の履行、日本の主権を本州・北海道・九州・四国および連合国が決める諸小島に制限すること、軍隊の武装解除、戦争犯罪人の処罰、民主主義・基本的人権の確立など、全13項からなっていた。

民政局(GS)

日本の民主化政策を担ったGHQの中枢部局。GSはGovernment Sectionの略称。1945年10月2日に設置された。おもに公職追放、憲法改正、公務員制度改革、選挙制度改革、地方自治等を担当し、戦後日本の政治機構を形づくる重要な役割を果たした。とくに憲法改正では、民政局内に、立法、行政、人権等、分野ごとに条文を起草する7つの委員会と、全体の監督・調整を行う運営委員会を組織し、GHQ草案の作成にあたった。

局長にははじめクリスト准将が就いたが、2か月あまりで帰国。後任のホイットニー准将は積極的に民主化政策を推し進め、諜報・検閲などを担当した参謀第2部(G-2)とはしばしば対立した。ホイットニーがマッカーサーの解任とともに退役したあとは、GHQ草案の財政部分を担当したF・リゾーが局長に任命された。組織は何度か改変されたが、おもな改革が終了した1948年以降は規模が縮小された。

明治憲法第73条(改正手続)

明治憲法第73条の改正手続によれば、まず天皇の勅命で憲法改正案を帝国議会に発議する必要がある。そのうえで、衆議院・貴族院それぞれ総員の3分の2以上が出席し、出席議員の3分の2以上の多数の賛成を得たときに、改正の議決が成立する。1890(明治23)年11月29日に明治憲法が施行されて以降、実際に改正されたことは一度もなかった。しかし日本国憲法の制定に際しては、明治憲法第73条の手続が用いられた。

連合国最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)

GHQ/SCAPは、General Headquarters, the Supreme Commander for the Allied Powersの略称。戦後日本の占領行政を担った連合国の機関。1945年8月14日、アメリカ太平洋陸軍総司令官のマッカーサーが連合国最高司令官(SCAP)に就任し、10月2日、総司令部が東京に設置された。占領方式は、GHQ/SCAPの指令を日本政府が実施する間接統治のかたちが採られた。マッカーサーが1951年4月11日にトルーマン大統領に解任されたあとには、リッジウェイが最高司令官に就いた。1952年4月28日、サンフランシスコ講和条約の発効とともに組織は活動を停止した。

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